TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

正志(まさし)

あの、これって大丈夫なものですか

医師

ええ、大丈夫です

医師

今回の治験は、安全性が確認された薬ですし・・

医師

何よりごく短期間のものです

医師

ほんの5日間、少しの入院が必要なだけですよ

医師

何かあればすぐに対応致しますので、安心してください

正志(まさし)

…そうですよね

正志(まさし)

じゃあ、これで

同意書の署名完了

血液検査、身体検査が終わり、正志は病室に案内された

シンプルなベッドが沢山とテーブルが置かれた部屋で、窓の外には曇り空が広がっている

部屋は清潔感があり、特に不快な点は無い

看護師

正志さん?正志さん?

看護師

聞こえてます?

正志

んぁ、はいっ

看護師

ここでしばらくお過ごしいただきますからね?

看護師

何か困ったことがあれは、すぐにナースコールを押してくださいね

正志

…はい

正志

ん?

正志

あ、ちょっと待ってください

部屋から出ようとする看護師を呼び止めた

看護師

はい?どうしました

正志

この治験…あと何日でしたっけ?

看護師

看護師

治験は今日から5日間ですよ?まだ初日です

正志

初日?

看護師

はい

看護師

同意書にサインをして、ちょっと検査したくらいですよ、まだ

正志

ぁあ…

正志

ああ!そっか

正志

そうでしたね…

正志

すみません、変なこと聞いてしまって

看護師

いえいえ

看護師はにこやかにして部屋を出て行った

正志はベッドの上で天井を見上げた

正志

んんんん…

正志

んん…(横を見る

正志

((俺以外にも参加者がいてくれたら良かったのに…))

正志

((俺だけか…この治験))

退屈

しばらくすると、薬が届けられ、彼はそれを水で飲み込んだ

味も匂いも特に感じない薬だ

正志

大丈夫、何も問題ない

正志

大丈夫、大丈夫

自分に言い聞かせるように呟き、目を閉じた

看護師

検査結果、様子ともに異常はありません

医師

うん

医師

うんうんうん

医師

まだ大丈夫な様子だね

日めくりカレンダーに☓印をつけて、一枚めくった

医師

うん

医師

明日も頼むよ

翌朝、正志はふと目を覚ました

部屋はまだ薄暗く、窓の外には曇り空が広がっている

彼は少しぼんやりとした頭を抱えながら、周囲を見渡した

正志

…ここ、どこ?

一瞬、何をしているのかを忘れてしまい、焦った

だが、すぐに記憶が蘇り、治験に参加していることを思いだす

正志

((5日間我慢すれば、214万円が貰える…))

安堵し、枕に頭を沈めた瞬間、看護師がひょっこりと入ってきた

看護師

おはようございます

正志

おはようございます

看護師

調子はいかがです?

正志

ちょっとボーっとするくらいで、特に問題は無いです

看護師

それはよかったです

看護師

こちら、今日の朝食です

看護師

食事が終わったらまた検査がありますので・・

看護師

準備が出来たらナースコールを押してくださいね

看護師はトレイに乗った食事をテーブルに置き、微笑んで部屋を出て行った

正志

ふう…

パン、卵、カップに入ったヨーグルト、そして水

朝食の内容には不満は無いが、どこか味気無く感じる

食事を終えると、正志はナースコールを押した

すぐに看護師が来て、彼を検査室へと案内する

静かすぎる廊下が気になり、彼はふと口を開いた

正志

あの、ここには他の参加者っていないんですか?

看護師

はい、今回の治験はあなたお一人だけなんです

正志

ああ、そうですか

正志

いやぁ、ちょっと変な感じがしちゃって

看護師

心配しないでくださいね

看護師

私達は常に見守っていますから

その言葉に、正志は少し安心しようとしたが・・

看護師の微笑みがどこか作り物めいて見え、僅かに寒気を覚えた

検査を終えて部屋に戻った後も、時間は静かに過ぎていった

薬の効果を観察するための治験と聞いていたが、特に何も感じない

静寂が続く部屋で、正志は再び目を閉じようとしたその時・・

時計の針が奇妙に動き出したのに気づいた

正志

え?

時計の秒針が壊れたかのように不規則に動き始める

カチカチッ

カッカッ

正志

うっわ…

秒針が一秒ずつ進むのではなく、後退したり、早送りのように飛び跳ねたりしている

気味が悪くなり、正志は急いで目を反らした

ガララッ

ドンドンッ

その時、ドアが勢いよく開き、あの担当医が入ってきた

顔色が青白く、目の奥が冷たい。前とは雰囲気が違うように見える

医師は静かに近づき、正志の顔を見つめながら低く呟いた

医師

どうしました?何か異常でも感じました?

正志

いや…時計が変に動いてるように見えて…

医師

……

医師

そうですか

医師

それなら、もう少し薬の効果を確認したいので・・

医師

新しい薬を処方しましょう

医師

正志

っ…

医師は笑みを浮かべ、新しい薬を差し出してきた

その顔が一瞬、異様なものに見え、背筋に冷たいものを感じた

正志は医師に渡された新しい薬を見つめた

白いカプセルで特に変わったところは無いが、掌に乗せると少しだけ重い気がした

正志

これ…いつも飲んでるものと違うみたいですけど

正志

飲んでいいんですか?

医師

ええ

医師

先程の話からして、正志さんは幻覚を見ている可能性が高いです

医師

これは"それ"を抑えるためのものです

医師

飲んでしまえば安心ですよ

正志

え?

正志は僅かに疑問を感じたが、治験のプロセスとして必要なことだと信じ、薬を口に含んで水で流し込んだ

ゴクッ

冷たい液体が喉を通る瞬間、体の内側が急に冷たくなるような感覚が襲い、彼は思わず身震いした

医師

では、また部屋で休んでくださいね

医師はそう言うと、静かに部屋を出て行った

扉が閉まると同時に、正志は深く息をついた

正志

フゥウウウウ

ああ"ああ"あ"…

何かがおかしい。そんな気持ちが一瞬よぎるが、疲労が急に押し寄せ、彼はベッドに横になった

そのまま眠りに落ちた正志は奇妙な夢を見た

ガララッ

広大な病院の廊下を一人で歩いている

無数のドアが左右に並び、それぞれに"治験中"と書かれたプレートが掛けられている

ドンドンッダンダン!!

正志

うっせーな…

正志は一つのドアに手をかけ、中を覗こうとしたが、鍵がかかっていて開かない

正志

クソ、開かない!!

正志

誰かいないのか!!なあ!!

思わず口にした声が、廊下の奥で反響した

ガガ!!グギ!!

正志は白衣の集団に取り押さえられた

血液検査、身体検査が終わり、正志は病室に案内された

シンプルなベッドが沢山とテーブルが置かれた部屋で、窓の外には晴れ空が広がっている

部屋は清潔感があり、特に不快な点は無い

看護師

ここが正志さんがしばらくお過ごししていただく場所になります

何か困ったことがあれば、すぐにナースコールを押してくださいね

正志

何か困ったことがあれば、すぐにナースコールを押してくださいね

看護師

っ…

正志

あれっ…俺、何か言いました?

看護師

い、いえいえ

看護師

それじゃあ、何か困ったことがあればすぐにナースコールを押してくださいね

正志

んん…はい

正志

あの

看護師

はい?

正志

僕達って初対面ですか?

正志

前にも会ったり…とか

看護師

いえ?

看護師

正志さんとは初対面ですよ?

看護師

治験もっ…今日から始まりますので

正志

今日から?

正志

ああ"!!!

キィーーーーーン

看護師

どうしましたか?!

正志

痛ぃいい"い"!!!!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い

正志

んんんんんんん!!!!!

正志

んああ!

看護師

健康状態に支障が来しています

医師

うん、うんうん

医師

これで終わりにしておこう

医師

彼一人だけが残っただけでも充分データは取れた

医師

記憶を改竄する薬は初めての試みだからなぁ…

ポチッ

監視カメラの画面を切り替えた

画面には20人の姿が映し出された

 

(ダンダン!!

 

(カッドンドンッ!!

皆、一心不乱に壁を叩いている

医師

残りは皆、社会復帰が困難な程に壊れてしまったか…

看護師

机には☓印がついた9/28から10/30までのカレンダーが置いてあった

気がつくと俺は駅にいた

正志

んん…?

俺、何してたんだっけ

ズボンの右ポケットの膨らみに気づき、中を取り出すとこれまでの記憶が鮮明に蘇ってきた

正志

ああ、そっか俺…

正志

33日間の工場勤務のバイト行ってたんだっけ

正志

ヒヒッ(笑

よ〜しぃ…なーに食おっかな〜!

正志

214万あるし、奮発しちゃおっかな〜

この作品はいかがでしたか?

48

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚