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智美

梨花先生こんちにはー!

梨花

こんちには〜

梨花

今日は具合悪いの?

智美

先生と話したかっただけで〜す!

梨花

も〜!

智美

てへ✩

梨花

今は暇だし別にいいけど

梨花

他の子が来たら帰ってね〜?

梨花

保健室に入ってあなたがいたら気まずくなっちゃうでしょ?

智美

はーい!

私は智美、小学5年生!

実は私、こう見えても 持病があります…

それは糖尿病。

といっても、不健康な生活をして こうなったわけじゃない。

そういうのとは違うタイプの 糖尿病なのだ。

私がそれにかかってしまったのは 3年生の時だった。

病気のことをみんなに どう説明していいか分からず

うろたえていた私に 手を差し伸べてくれたのが

保健室の桐野梨花先生だった。

梨花先生はこの学校の 先生の中では歳が若い方で

いつも明るくて優しくて、 親しみやすい先生だ。

私が先生に 病気のことを相談すると

梨花先生は 私の担任の先生に事情を話し

理解するようにと 言い聞かせてくれたのだ。

おかげで、担任の先生も クラスのみんなも

私の病気を分かってくれたので、 今では毎日が楽しい!

だから私は梨花先生が大好き!

智美

あ、チャイムなっちゃった

智美

じゃあね〜先生!

梨花

おーい!

梨花

ブドウ糖のポーチ忘れてるよ!

智美

あ、そうだった!

智美

ありがとうございます!

智美

ギリギリ間に合った…

太田

全員揃ってるな!?

智美

あれ?担任の先生は…

壮馬

今日から産休って言ってたでしょ

太田

これからしばらく休む吉野先生の代わりに

太田

この5年2組を担当することになった!

太田

復帰するまでは俺が担任だからな!

クラスの男子

うげ…よりによって「鬼田」かよ…

クラスの男子

やだな〜…

太田

そこ、私語はやめろ!

太田先生… 通称「鬼田先生」は

一番この学校に長くいることもあって

学校の中ではちょっとした 有名人なのだが

「ビシバシ鍛える」を モットーにしている厳しい先生で

生徒にも他の先生にも 恐れられている

太田

え〜これは合同な図形だから

太田

これとこれは等しく…

智美

(うう…頭がぼーっとしてきた)

智美

(低血糖の症状かなぁ…)

糖尿病の治療をしていると 「低血糖」といって

血糖値が低くなって 具合が悪くなってしまうことがある。

でもそれは糖分を ちゃんと取ることでおさまる。

なので私は学校で そうなった時のために

ブドウ糖をポーチに入れて 持ってきているのだ。

智美

(ポーチ…あった!)

智美

(ブドウ糖食べよ〜っと)

担任の先生は 授業中に具合が悪くなった時

授業中でもブドウ糖を 食べていいと言ってくれた。

クラスのみんなも それを分かってくれている。

いつしか私の中では それが普通になっていたので

断りを入れてから食べるという 考えには追いつかなかった。

だから…

太田

おい!!

太田

何勝手に菓子なんて食ってるんだ!!

智美

へ!?

一瞬なぜ怒られたのか 理解出来なかった。

太田

「へ!?」じゃないだろ!

太田

授業中に飯を食うなって教わらなかったのか!?

太田

しかも学校に菓子なんぞ持ち込んで!

壮馬

先生!

壮馬

智美ちゃんは糖尿病なんです!

壮馬

それで具合が悪くなった時に

壮馬

ブドウ糖を食べていいことになってるんです

智美

(壮馬くん、ナイスアシスト!)

太田

ああ、お前か!

太田

保健室の桐野が言ってた病気のヤツっていうのは!

太田

一体どんな生活したらその歳で糖尿病になるんだ!?

智美

は…?

太田

糖尿病っていったら中年がかかる病気だろ

太田

普段よっぽど不健康な生活をしてるんだな!

智美

なっ…違います!

智美

私はちゃんと運動もしてるし

智美

健康に悪いものも食べてません!

智美

そうじゃなくて私は…

太田

嘘をつくな!見苦しいぞ!

太田

じゃあ何なんだそれは!

智美

これはブドウ糖です!

智美

確かにお菓子というか糖分ですけど

智美

これを食べないと倒れてしまうこともあって…

太田

言い訳はやめろ!

太田

そんなことある訳ないだろ!

そう言うと先生は私の手から ポーチを奪い取った。

智美

きゃっ!?

太田

こんなもんばっか食ってるから糖尿病になるんだ!

太田

甘いものがやめられないからって

太田

学校にまで持ち込むんじゃない!

太田

これは俺が没収する!

智美

か、返してください!

智美

それがないと私…

太田

まだ言うか!

太田

俺はお前の腐った根性を叩き直す!

太田

何を言ったってこれは返さないからな!

智美

そんなぁ…

智美

(結局ブドウ糖食べれなかったし)

智美

(ますます具合が悪くなってきた)

智美

せ、先生…

智美

保健室行ってもいいですか?

太田

ついさっきまで言い訳してたかと思ったら

太田

今度は仮病か!?

智美

違います…

太田

はぁ〜…

太田

そこまでして菓子なんて食いたいもんかね

太田

俺にはさっぱり分からないな!

智美

本当に具合が悪いんです…

太田

チッ!

太田

そこまで言うなら行ってくればいいだろ

太田

ただし許すのは今回だけだからな!

太田

それ以降は容赦しないぞ!

智美

りかせんせぇい…

梨花

どうしたの?

梨花

って顔色悪いじゃない!

梨花

ブドウ糖食べなかったの?

智美

実は…

梨花

その前にこれ食べなさい

先生からブドウ糖を差し出される。

智美

あ、ありがとうございます!

智美

どうして先生がこれを?

梨花

あなたのお母さんに頼まれてね〜

梨花

もしものことがあったらって

そして私は 太田先生のことを話した。

梨花

あ〜…

梨花

やっぱりそうなっちゃったか

智美

太田先生が言ってましたけど

智美

私のこと太田先生にも話したんですか?

梨花

話したんだけど…

梨花

全然分かってくれなくてね…

梨花

「そうやって甘やかすからそんな病気にかかるんだ!」とか

梨花

「俺がビシバシ鍛えてやる!」とか

梨花

違うって何度も言っても

梨花

なんか、耳を貸そうとしないっていうか

梨花

太田先生はこの学校に長くいるし厳しいから

梨花

他の先生方も何も言ってくれないし

智美

そうなんだ…

梨花

でもこのまま誤解されっぱなしでいいわけない

梨花

諦めずにこれからも太田先生に説明するつもりだよ

智美

わ、私もちゃんと太田先生に説明します!

智美

ちょっと怖いけど…

智美

また没収されたら困るし…

梨花

智美ちゃんはいい子だね

梨花

もし聞いてもらえなかったら

梨花

私からもちゃんと言うからね!

…結局あれから 何度も先生に説明したけど

先生が私の説明を 聞いてくれることはなかった。

何を言っても言い訳扱いされ、 梨花先生も困っている。

そればかりか、授業中 私はいつも問題児扱いされる。

「このバカみたいに学校に お菓子を持ち込むなよ!」

…といった具合だ。

おかげで私は堂々と ブドウ糖を食べられなくなった。

授業中に具合が悪くなっても我慢して

休み時間になって 先生が教室から出た時に

こっそりブドウ糖を 食べるようになっていた。

そしてある日の朝、 私が教室に入った時…

智美

ご、ごめんなさい!!

智美

遅刻しましたー!

太田

コラァ!遅刻だと!?

太田

どうせ持ってくる菓子を選んでて遅れたんだろ!

智美

…ですからお菓子じゃないですよ!

智美

あれがないと体調を崩してしまうんです!

太田

お前も毎度毎度懲りないな!

太田

今も菓子を隠し持ってるんだろ!

太田

よーし、お前がそのつもりなら

太田

今日はお前だけ荷物の抜き打ちチェックだ!

先生は私のランドセルを奪い取った。

バサバサッ

先生がランドセルを逆さにして 激しく揺すった。

ランドセルの中身が全部私の足元に落ちる。

太田

ほらな!

太田

やっぱり隠し持ってたじゃないか!

太田

俺の目を欺けると思うなよ!

智美

ひ、ひどい…

太田

うるさい!このポーチは没収だ!

太田

さっさと席につけ!

智美

うっ、うっ…

悔しさのあまり 私は泣いてしまった。

でも、ここからが 大変だったのだ…

2時間後

智美

うう…

智美

(また低血糖の症状が…)

智美

(今日ご飯抜いてきたからかな…)

智美

(なんか、いつもより症状がひどい気がする)

智美

(頭も痛くなってきた…)

壮馬

智美ちゃん大丈夫…?

智美

だ、大丈夫…

壮馬

どう見ても具合悪そうだよ!

壮馬

先生!

壮馬

僕、智美さんを保健室に連れていきます!

太田

あー、やめとけ

太田

アイツのは全部仮病だからな

太田

菓子が食べたいからって演技するんだよコイツは

壮馬

はぁ!?

智美

いいの、壮馬くん…

智美

(汗が止まらない…)

智美

(視界もぼやけてきた…)

壮馬

っていうか!

壮馬

先生がブドウ糖を返さないから

壮馬

こんなことになってるんじゃないですか!?

壮馬

早く智美さんに食べさせてあげてください!

クラスの男子

そうだそうだ!

クラスの男子

智美が言ってることは本当だよ!

太田

何だお前ら!

太田

寄ってたかってコイツの肩を持つつもりか!

太田

糖尿病のやつが菓子なんざ食うわけないだろ!

太田

おい須賀!今どんな気持ちだ!?

太田

仮病なのにこうやって庇われて!

太田

ネタばらしするなら今のうちだぞ!

バタッ

クラスの女子

きゃぁぁ!!

クラスの女子

智美ちゃんが倒れた!

クラスの男子

うわぁぁやべぇ!

太田

ふん!放っとけ!

太田

しばらくすれば起き上がってくるだろ!

太田

ったく…タチの悪い演技をしやがって!

壮馬

よいしょっ…!

太田

太田

お、おい!

太田

まさか須賀を保健室に連れてくつもりか!?

太田

ただ演技してるだけだぞコイツは!

壮馬

これを見て演技って思うなんて

壮馬

先生の頭おかしいですよ!

壮馬

先生が何を言っても僕は連れていきます!

智美

梨花

良かった、目が覚めたみたいね

智美

そうだ、私…

梨花

今はあまり起き上がらない方がいいよ

梨花

壮馬くんがあなたをここに連れて来てね

梨花

ことの成り行きを話してくれたの

梨花

でも、一応あなたの口からも聞きたいかな

梨花

詳しく聞かせてもらえる?

智美

えっと…

私はどうして倒れたのかを 具体的に先生に話した。

その間先生の顔が…どんどん 般若のように険しくなっていった。

梨花

…そっかぁ〜…

梨花

太田の野郎がねぇ…

智美

り、梨花先生?

梨花

ちょっと2組に殴り込みに行ってくるわ(^^)

しかしその時 保健室のドアが空いた。

太田

あ、ほら!

太田

やっぱり大したことなかったじゃないか!

智美

うげ…

太田

いきなり倒れたからみんな心配してたぞ!

太田

こんなにピンピンしてるのに

太田

ベッドまで使わせてもらって!

太田

もう十分だろ!教室に戻れ!

先生は少し焦った様子で 私を連れ戻そうとしたけど…

梨花

太田てめぇぇぇぇ!!!

バンッ!!

太田

うわっ!どうしたんだ!

太田

いきなり机なんか叩いて…

梨花

ぬぁーにが「大したことなかった」ですか!!

梨花

あのまま放置してたら

梨花

最悪死んでたかもしれないんですよ!?

太田

そ、そんな大げさな!

太田

たかが糖尿病だろ!

梨花

はぁん?「たかが」?

梨花

その「たかが」で命を失った人がどのくらいいると思ってんですか?

太田

でもなぁ!

太田

普通こんな歳で糖尿病にかかるやつなんかいないだろ!

太田

コイツがいつもあの菓子を食ってるから

太田

コイツがたるんでるから

太田

そんな病気にかかったんじゃないのかと言ってるんだ!

太田

健康に悪いものを食うと病気にかかるってよく言うだろ!

太田

だから俺はコイツの根性を叩き直そうと…

梨花

はぁ〜…

梨花

耳の穴かっぽじってよ〜く聞いてくださいね?

梨花

マジで聞けよジジイ。

太田

…う、うむ

梨花

私はあなたより糖尿病について詳しく知ってるんで

梨花

ちゃんと1から説明します

梨花

まず糖尿病というものについて

梨花

話す必要がありそうですね

梨花

糖尿病は2つのタイプに分かれてるんですよ

梨花

1つはあなたの言う通り

梨花

不健康な生活習慣が原因で起こるもの

梨花

2つめは生活習慣とは関係なしに

梨花

免疫の異常によって起こるもの

梨花

智美ちゃんは後者の方です

梨花

だから「彼女がたるんでる」とかじゃないんですよ

太田

で、でも

太田

菓子なんか食ったら更に悪化するに決まって

梨花

悪化なんてしませんけど?

梨花

彼女だって食べたくて食べてるわけじゃないんです

梨花

糖尿病の治療をしてると

梨花

血糖値が減って具合が悪くなるんです

梨花

さっきのように倒れてしまうこともあります

梨花

それを防ぐために糖分を摂取しなければいけないんです

梨花

あなたが没収したものは

梨花

彼女にとっては薬のようなものだったんですよ

太田

う、嘘だ!

太田

菓子が薬だなんて…

梨花

(・д・)チッ

梨花

だったら校長先生に聞いてみればいかがですかぁぁ?

梨花

今年ここにいらっしゃった先生ですけど

梨花

智美ちゃんの病気のことはちゃんと理解してくださいましたよ?

太田

校長だからなんだ!

太田

俺は10年前からずっとこの学校にいるんだ!

太田

俺の方がよっぽど先輩なんだぞ!

太田

なのにアンタはさっきから…

太田

何だその口のききかたは!

太田

たった1人のガキのことでムキになりやがって!

校長

呼ばれて飛び出て校長でーす

太田

太田

校長

保健室が何だか騒がしかったので

校長

ずっと部屋の外で聞いてました✩

校長

それにしても

校長

「たった1人のガキのことで」って…

校長

そりゃあなたの権威よりも

校長

生徒の健康の方が大事でしょうよw

梨花

つーかあなたはこの学校に長くいるだけで

梨花

別に偉くも何ともありませんしね

太田

ぐぬぬ…

校長

桐野先生の言ってることは本当ですよ

校長

ていうかあなたは特に

校長

糖尿病のことをよく知っとくべきじゃないですか?

校長

太ってるし

校長

いつもタバコ臭いし酒臭いし

校長

そんなんじゃいつか体壊しますよ

太田

なぁぁっ!?

校長

あとこれは何ですか?

校長先生はポッケから ゴミを取り出した。

智美

!!

智美

それってブドウ糖の個包装のゴミ!?

校長

あなたがこれをポイ捨てするところを見てたんですよね

智美

先生が食べてたってこと…!?

校長

ポイ捨ても大分アレですけど

校長

生徒の大切なものを無理矢理没収しておいて

校長

自分はそれを勝手に食べるとか…

太田

ち、違うんだ!

太田

家内が最近糖質制限しろってうるさくて!

太田

なのに、コイツだけ呑気に食ってるのが気にくわなくて

太田

むしゃくしゃして取り上げただけだ!

太田

食ったのは本当に魔が差しただけで…

太田

まさか倒れることはないだろうと思ってたんだよ!

梨花

太田

これは無知が生んだ悲劇だ!

太田

誰も悪くない!そうだろう!?

太田

だからここは穏便に…

梨花

言っときますけど

梨花

「知らなかった」って言い訳は通りませんからね

梨花

私も智美ちゃんも何度もあなたに訴えました

梨花

あなたが相手にしなかっただけでしょう

太田

梨花

ちゃんと智美ちゃんに謝ってください

梨花

あなたが彼女の命を脅かしたんですから

太田

お、俺は悪くない!

梨花

ハイハイよく分かりました

梨花

そんなんでよく10年も教師やってこれましたね

校長

じゃあ君は校長室でちょっと話そうか✩

校長

従わなかったらマジでクビだよ✩

太田

くそぉ…

その後、太田先生は 謹慎処分をくらった。

謹慎はあまり長い期間ではなかったが

その日から先生が この学校に来ることはなかった。

普段から不健康な 生活をしていた先生だけど

本人が気づかない間に 糖尿病が進行していたらしく

教師を続けることが 困難になったらしい。

智美

梨花先生〜!

梨花

おはよう!あれからどう?

梨花

壮馬くんにはちゃんとお礼言った?

智美

はい!

智美

梨花先生とみんなのおかげで元気100倍です!

梨花

そっか〜

梨花

智美ちゃんが倒れたって聞いた時は

梨花

私も焦っちゃったけど…

梨花

本当に良かった〜…

智美

先生、あの時は…ううん

智美

いつも私たちのこと見守ってくれてありがとう!

梨花

…!

梨花

( ̄^ ̄゜)グスッ

智美

え!?

智美

もしかして悪いこと言っちゃった!?

智美

ごめんなさい!

梨花

違う違う

梨花

そんなこと全然言われなかったから

梨花

ちょっと涙腺が…ね…✩

私の命を救ってくれた みんなと先生には感謝しかない。

やっぱり私は梨花先生が大好き!

この作品はいかがでしたか?

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コメント

6

ユーザー

太田☆☆☆☆

ユーザー

更新ありがとうございます!!!! 梨花先生の顔が……ww 太田にはせいぜい糖尿病で苦しんでもらいたいですね( ◜▿◝ ) 解決して良かった………太田一生復帰してくんな……😌 壮馬くんイケメンやぁ(( 素晴らしすぎる😇ストーリー考えるのうますぎですか……🙏 これからも楽しみにしてます!!!!

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