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竹野

お嬢さん

紗結

紗結

うん…

竹野

社長の容態が急変しました

紗結

……え?

紗結

でも、朝は…

紗結

朝は元気って訳じゃないけど…

紗結

普通に、話せて…

紗結

…え…?

竹野

すぐにそちらに向かいます

竹野

お嬢さん

竹野

覚悟を決めてください

紗結

ガラガラ…!!

紗結

パパ…!!

コネシマ

……

ドアを思いっきり開けて

目に入ったのは

まるで昼寝でもしているようなパパの姿だった

竹野

お嬢さん…

紗結

…パパは

紗結

まだ大丈夫、なんですよね

竹野

……

竹野

先程の電話でもお伝えしたように

竹野

…今夜が

竹野

峠だそうです

紗結

そん、な…

紗結

パパ…

コネシマ

紗結

……

紗結

…ぱ、ぱぁ…

コネシマ

コネシマ

ぁ…あ…

パパは、酷く重そうにまぶたを開いた

紗結

パパ…!

紗結

聞こえる…?

紗結

わたしだよ、紗結

紗結

…分かる?

私の声は

きっと届かない

コネシマ

おれ…は

コネシマ

…もう

コネシマ

しぬ、の…か

紗結

ううん、死なないよ

紗結

パパは死なない

紗結

生きるんでしょ…?

紗結

私のそばにいるって…そう言ったよね

パパはゆっくりと瞬きをして

私の目を見た

コネシマ

……

コネシマ

あたまの、なかで…

コネシマ

ずっと…

コネシマ

きみのかおが、のこって…いるんや

コネシマ

…なんで、やろなぁ

力なく笑うその姿は

私の決心を揺るがせた

紗結

……

紗結

パパ…

紗結

わたし…やっぱり

紗結

パパのそばにいたいよ…

紗結

パパとずっと…

紗結

話してたい…よぉ

コネシマ

コネシマ

お、れも…

コネシマ

いたいとおもった…

コネシマ

ずっ、と…いっしょに…

紗結

うん…

コネシマ

なんで、やろ…

コネシマ

まったく、しらん、はずなのに…

コネシマ

なんで…

コネシマ

なん、で…っ

コネシマ

こんなにも…

コネシマ

いとおしく、思うんやろ、なぁ…?

パパは、泣いていた

記憶を失っているはずなのに

こぼれ落ちた涙は、ベッドに沁みていった

紗結

…っ

紗結

うん…っ

紗結

…っ

紗結

…やだ、

紗結

やだぁ…

紗結

パパ…

紗結

パパぁ…!

紗結

おいて、かないで…

パパの手を握って、必死に呼んだ

握り返してくれない、弱く細いその手は

私に死を感じさせた

コネシマ

……

コネシマ

ごめん、な…

コネシマ

おれ、ちょっと…

コネシマ

つかれて、さ

コネシマ

すこし…だけ…

コネシマ

ねる…わ…

パパの目は閉じかけていた

きっとこのまま寝てしまったら

パパはもう二度と目を覚まさない

紗結

紗結

だめ

紗結

だめ…!

紗結

パパ、だめ

紗結

起きて

紗結

起きて!

紗結

……

紗結

パパ…わたし、

紗結

わたし…ね?

紗結

……っ

紗結

すごく、すっごくね

紗結

幸せだったんだぁ…

紗結

パパと話せて…

紗結

すごく…幸せだった、よぉ…

紗結

パパが…私のパパで

紗結

…っ

紗結

ほんとに

紗結

ほんと、に…っ

紗結

しあわせ、だったよ…?

両手でパパの手を握った

どんどん温かさが、ぬくもりが…なくなってく

コネシマ

……

するとパパは…手を少しづつ動かして

ぎゅっ…と強く握り返してくれた

コネシマ

……さ

コネシマ

…ゆ……

コネシマ

紗結…

紗結

…え…?

パパは間違いなく

私のことを…

コネシマ

…ちゃん、と

コネシマ

しあわせか…?

紗結

…っなれ、ない

紗結

パパがいないならっ…

紗結

幸せになんて、

紗結

なれないよ…!

コネシマ

…そう、か…

紗結

生きてよパパぁ…!

紗結

生きて、よ…

コネシマ

……

コネシマ

コネシマ

紗結…

紗結

聞きたくない!

コネシマ

紗結

紗結

…!

コネシマ

……俺を

コネシマ

パパって…

コネシマ

呼んでくれて…

コネシマ

……

コネシマ

父親に…

コネシマ

して…

コネシマ

くれて…

紗結

ぁ…あぁ…っ

パパは目を閉じた

そしてそのまま

ゆっくりと口を開いて

ありがとう

そう言ったような気がした

そのまま少し

ニコッと笑って

パパは

眠ってしまった

紗結

……ぅ…うぅ

紗結

あぁあ…っ

握られたその手は

もう二度と動くことはない

この手に残ってる温かさも

どんどん冷めていく

紗結

うっ…ぅ、や、だぁ…

紗結

やだよぉおっ…!パパぁあ…!

涙がとめどなく溢れてくる

この涙はきっと、枯れることはない

パパはその後、霊安室に運ばれた

その間に

葬儀の手続きやその他もろもろを竹野さんやおばあちゃんがしてくれていた

悲しんでいる暇もないようだった

紗結

……

私はまだ夢を見ているようだった

長い長い夢

そうだ、これはきっと夢で

現実じゃない

そんなフワフワした考えで座っていた

ショッピ

…紗結

紗結

バタバタと足音が聞こえて、病院内は慌ただしい

そんな状態で

掻き消えるような声で 誰かが私の名前を呼んだ

紗結

ショッピくん…

ショッピ

……

どうやらショッピくんも知らせを聞きつけたようだ

急いできたらしく、その手にはパパのノートがあった

ショッピ

これ、渡しにきたんや

紗結

これ、は…

紗結

どうして…?

ショッピ

よーく後ろまで開いてみ

言われるがまま、ノートをパラパラとめくった

最後のページに…挟まっていたものがある

紗結

…!

「紗結へ」

紗結

これって…!

ショッピ

先輩が、しつこくノートって言ってたんは

ショッピ

この手紙があったからなんやろうな

ショッピ

これだけは

ショッピ

記憶失っても、ずっと…頭の中に残ってたんやと思う

紗結

……

ショッピ

ひとりで、ゆっくり読んだほうがええ

そう言ってショッピくんはパパの眠る霊安室へと入っていった

紗結

…こんなの、入ってたかなぁ…?

白い封筒から何枚かの紙を持って

パパの汚く、見慣れた文字を目で追った

紗結へ

これは極力、見られて欲しくなかったんやけど

まあ、これを見てるってことは

そういうことだろーな。

この手紙は、なんていうか

後悔の手紙って感じかな。

うん、まあなんだろうな

とりあえず

今まで病気のこと、黙ってて悪かった。

いつか話そう、話そうって決めてて

この前遊園地で2人で遊んだやろ?

その時の観覧車の時にな、言おうと思った。

でも言えんかった。

いざ言葉にしようとすると、上手く整理できんくて

紗結を悲しませてしまうかもって思ったら

言うタイミング逃してしまったわ。

だから本当にごめんな。

そんで、まだまだ言いたいこといっぱいあるから

いっぱい書くわ!

次は…お前を引き取った理由だ。

俺は紗結の父さん… 「洸太さん」に命を“2回”救われた。

そのうち1つは、俺の病気の進行を遅らせる薬を作ってくれたこと。

本来ならもうとっくに死んどるはずや。

そして2つ目は…

これは1から伝えようか。

俺は、洸太さんの薬の被検体になった。

いくつかの種類のサンプルを1日1回服用して効果を見る、実験みたいなもんだ。

俺は、実験と呼ばれても嫌な気持ちはしなかったよ。

だってさ、紗結の父さんやで?

俺の病気を治してくれるって、 いつか必ず治してくれるからって、

そう信じてたから。

そしてとある日に、薬が完成品に近い状態になってきたんだ。

ただこの薬には副作用もあった。

紗結の父(洸太)

この薬を使う時は…充分に気をつけるんだ

コネシマ

え?どういうことっすか

紗結の父(洸太)

これは完成品では無い

紗結の父(洸太)

だからその分、副作用も強いんだ

紗結の父(洸太)

この薬はね

紗結の父(洸太)

服用して2、3時間はじっとしておかないと

紗結の父(洸太)

強力なめまいと、倦怠感に襲われる

紗結の父(洸太)

なにせ脳の神経を動かす薬だからね

コネシマ

じゃあ服用後は安静にしておくって事っすか?

紗結の父(洸太)

あぁ、そうだよ

紗結の父(洸太)

これは必ず守ってほしい

紗結の父(洸太)

分かったね?

コネシマ

は、はい!

その副作用は服用後はめまいを催すことだった

そしてその薬を飲み始めてから 少し経ったある日…

俺は学校が終わって、帰っていた。

だけど途中で薬を飲むのを忘れていて

帰り際に飲んだんだ。

最初は副作用にビビって、ちゃんと部屋で休んでたが

慣れると怖いもんだ

その副作用すらもちっぽけに思って

洸太さんとの約束を破ってしまった

そして徐々に薬が効き始め、副作用が出始めた。

そしたら

信号無視の大型トラックが歩道にめがけて突進してきた

俺が…横に少しでもズレることが出来たからこんな事にはならなかった。

俺は判断力が鈍って、体も動かなくて、恐怖で声を出すことも出来なかった。

その時や

危ないっ!!

結衣さん…お前の母親が俺を守るように庇った。

目の前が真っ白になったんだ。

そして視界が見えるようになった時には

周りは真っ赤になっていた。

洸太さんが、結衣さんと俺を将棋倒しのように覆いかぶさっていた。

一番下にいた俺は、結衣さんと洸太さんに大声で名前を呼んで起こそうとした。

洸太さんは

結衣さんが俺を庇うように守ったあと

俺たちに背を向けて、トラックとの衝突の衝撃を 命をかけてまで守ってくれたんだと知った。

ごめん

俺は、お前を同情で引き取ったんじゃない。

2人を殺した俺の罪悪感を晴らすためにお前を引き取ったんだ。

俺は今までずっと

俺のためにお前を育てた

恩人の娘を育て、守ること

恩人の会社を引き継いで、会社を守ること

それが俺に出来る、最大の罪滅ぼしだと思った。

それは…今でも思ってる。

お前が俺を「パパ」と呼ぶたびに

俺は罪悪感でいっぱいだった。

きっとこの真実を知ったら

お前はもう、俺をパパとは呼んでくれない。

いや…それでもいい。

お前を守ることができるなら

俺はお前に…紗結に、何を言われても構わない

最低だ、犯罪者だって言われても構わない

ただお前が

笑って

経験して

そして元気に

生きていてくれるだけで

俺はもう…なにも未練はない。

紗結

俺をパパって呼んでくれてありがとう

たった5年間だけだったけど

俺は紗結の父親になれて本当に嬉しかった

楽しかった

もっともっと…お前の成長を見ていたかった

この世で1番、紗結の幸せを願ってる。

これは罪悪感からくるもんじゃない。

心から、紗結を愛してる。

ありがとう

この世に生まれてきてくれてありがとう

ありがとう。

竹野

お嬢さん、日付も変わりました

竹野

そろそろお休みに…

竹野

お嬢さん…?

パパ

…パパ

紗結

……

紗結

これは…さぁ

紗結

…ずるいよ…パパ

竹野

お嬢さん…?

竹野

大丈夫ですか?

紗結

…ぐす

紗結

はぁ…

もう、涙は流さない

ここからは自分で道を歩いていくんだ

紗結

竹野さん

竹野

はい

紗結

わたしね

紗結

将来の夢、決まったよ

竹野

……

竹野

はい?

5年後…

竹野

社長、こんな所におられたんですか…

竹野さん!

これ聞いてみて

未来ちゃんが「お姉ちゃんへ」って音声メッセージ送ってくれたの!

可愛すぎてほんと天使っ!

ふふ

私のお腹の子はどんな子かなぁ…?

男の子かなぁ?女の子かなぁ…?

って…なんで竹野さんがここにいんの?

今日なんかあったっけ

竹野

新しい薬の発表の日じゃないですか!

竹野

私ももう年なんですから

竹野

人を振り回さないでください!

あー!

忘れてた!

そうじゃんそうじゃん

はい、竹野さんこれ

竹野

これは?

49歳のお誕生日おめでとう♡

竹野

あぁ…

竹野

もうそんな年でしたか

竹野

いやはや、もう私もそんな老いぼれに…って

竹野

おじょ…じゃなくて

竹野

社長!

竹野

誤魔化してもダメですよ

竹野

また新薬の発表会をサボる気ですか!

げっバレたか

まぁまぁ待ってよ

まだ時間あるじゃん?

気楽にいこーよ気楽に

竹野

まったく…

竹野

前社長に似て、責任感というものがありませんね!

なによ説教?

私ももう20歳なんだから

そーいうのはいりませーん

竹野

社長…!

竹野

もう…

竹野

先に車に乗ってますからね!

はいはーい

……

さぁてと…

それじゃ、行ってくるね

お父さん、お母さん

パパ…!

❨wrwrd❩5歳違いのパパ【完結済み】

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