TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

――10日後。

――皇都の高級喫茶室。

選ばれし貴族が 社交に花を咲かせるための 格式高き場。

その片隅では、2人の令嬢が 和やかなる“火花”を 散らしていた。

クロエ

――まぁ!

クロエ

アルス様のお心は、
今もなお
ウェンデッタ様に…

ウェンデッタ

ええ

ウェンデッタ

本人いわく、
そうらしいわよ

定期的に行われる “聖女”と“悪女"の情報共有。

ごくごく最低限の情報だけを ウェンデッタが伝えると、

クロエは大げさに驚いてみせてから、 あざと可愛く笑みを浮かべた。

クロエ

やっぱり
アルス様って
素晴らしいわ

クロエ

決して揺るがぬ
深~い“愛”を
お持ちとは

クロエ

まさに
皇族の鑑ですわ★

ウェンデッタ

(よく言うわよッ
腹黒聖女が!)

ウェンデッタ

(そりゃあなたは
ご満悦でしょ?)

ウェンデッタ

(“時限爆弾”を
押し付けられずに
済んだんだもの――)

ウェンデッタ

(――この私を
犠牲にしてねッ…!)

心の中で悪態をつく ウェンデッタ。

もちろん表面上は 穏やかな顔を装って。

ウェンデッタ

…あァら、
クロエ様

ウェンデッタ

そんなに
羨ましいのなら

ウェンデッタ

私、いつでも
代わって
差し上げてよ?

クロエ

ウェンデッタ様ったら
お優しいのね

クロエ

でも、
ご遠慮します

クロエ

だって私…
ようやく今世で――

クロエ

――“運命の人”に
巡りあえたん
ですもの♥

ウェンデッタ

ウェンデッタ

あなたッッ…!

自分本位な聖女の告白に、 軽く怒りを覚える ウェンデッタ。

ウェンデッタ

(――いけない)

――だが瞬時に 頭を切り替えた。

ウェンデッタ

(…動揺を
見せては負けね)

ウェンデッタ

(些細な感情なんて
無駄よ無駄)

ウェンデッタ

(クロエの性根は
腐ってる――)

ウェンデッタ

(そんなの前世から
分かり切ってるでしょ?)

ウェンデッタ

(だからこそ、私は私で
この性悪を利用しなきゃ
ならないの)

ウェンデッタ

(私や
シラヌイ家の皆が
生き残るためには)

ウェンデッタ

(クロエの
見え透いた“挑発”に
乗ってる暇なんか
無いんだから…!)

しっかり自分に言い聞かせ、 笑顔を貼り付けた ウェンデッタは話を続ける。

ウェンデッタ

……めでたいわねぇ

クロエ

うふふ♪

ウェンデッタ

で、
その“運命の人”
とやらは

ウェンデッタ

どこの
どちら様
なのかしら?

ウェンデッタ

(正直、クロエが
誰とくっつこうが
興味は無いけど…)

ウェンデッタ

(利用するなら、
情報は集めて
おかなきゃね…!)

クロエ

えっとぉ…

クロエ

ないしょです!

ウェンデッタ

…あら、
どうして?

クロエ

だって
付き合いはじめた
ばかりだから…

クロエ

2人だけの秘密に
したいんです♥

ウェンデッタ

安心して

ウェンデッタ

誰にも
言わないから

クロエ

だめですっ

ウェンデッタ

どうしても?

クロエ

はい!

クロエ

あ、でも

クロエ

時が来れば
わかりますよ~

ウェンデッタ

…どういう意味
かしら?

クロエ

だって
彼は――

クロエ

“ウェンデッタ様も
知ってる人”ですもん♪

ウェンデッタ

…え?

――同日、夕方。

――イザック恋愛相談所の 所長室。

ウェンデッタ

…ねぇダン

深刻な顔のウェンデッタ。

ダニエル

なんですか?
お嬢

のんきに答えるダニエル。

ウェンデッタ

あなた…

ウェンデッタ

…クロエと
付き合ってる?

ダニエル

ぶふォッ⁉

ダニエル

ちょッ…誰がッ⁉

ダニエル

俺ェ⁉

ウェンデッタ

…冗談よ

ウェンデッタ

ありえないに
決まってるでしょ

ウェンデッタ

“クロエとダンが”、
なんて

ダニエル

じゃあッ
何で聞いたん
ですッ!?!?

ウェンデッタ

考えすぎて
疲れちゃったのよ…

ウェンデッタ

クロエったら
笑って
はぐらかすだけで

ウェンデッタ

肝心なことは
言わないんだもの…

ウェンデッタ

人を振り回して
何が楽しいのかしら?

イザック

おや?

イザック

それを
ウェンデッタ嬢が
おっしゃるので?

ノクトル

同感…

ダニエル

ですです

イザックの発言にうなずく ノクトルとダニエル。

ウェンデッタ

あら失礼ね!

ウェンデッタ

生憎ですが私、
クロエと違って

ウェンデッタ

他人様を
振り回して楽しむ
趣味はなくってよ?

ダニエル

え?
皇太子殿下は?

ウェンデッタ

わ、私は
アルスを突き放そう
としただけ!

ウェンデッタ

振り回すつもり
なんか――

イザック

しかし殿下は
あなたに夢中です

イザック

その気が有ろうが
無かろうが

イザック

あなたは
“幾人もの男”を
手玉にとって
翻弄している…

イザック

それは事実
でしょう?

ウェンデッタ

うっ

ノクトル

だよねぇ…

ノクトル

僕も
振り回されてる
1人だし…

ノクトル

…最近は
気がつくと

ノクトル

あんたのことばかり
考えてるんだ

ウェンデッタ

そ…そんなこと
言われても困るわよ

ノクトル

わかってる

ノクトル

僕としては
振り回されるのも
悪くないというか…

ノクトル

それも含めて
“ウェンデッタの魅力”
だよな、って

ノクトルが浮かべたのは、 不意打ちの甘い笑み。

ウェンデッタ

なっ…

赤面する ウェンデッタ。

イザック

やれやれ…

割って入ったのは、 呆れた様子のイザックだった。

イザック

戯れるのは
それ位で良いでしょう

ノクトル

え?
僕、遊んでるつもり
ないけど?

イザック

いい加減に
本題へ戻りたい、
という意味ですよ

ウェンデッタ

イザックの
言うとおりね!

ウェンデッタ

ダン、今日
こうやって皆を
集めた目的は?

ダニエル

えっと…

ダニエル

『定例会議』と題して

ダニエル

聖女クロエ様からの
情報を共有することと

ダニエル

今後の方針を
話し合うことです!

ウェンデッタ

よろしい

イザック

でしたら、
クロエ嬢のお相手に
ついての議論は

イザック

いったん保留
してもよいかと

ウェンデッタ

理由は?

ウェンデッタ

クロエの動向は
私たちの作戦と
密接に関わるわ

ウェンデッタ

五大貴族の一員で
あることをふまえれば

ウェンデッタ

彼女の交際や結婚は、
政治的にも
大きな意味を持つのよ?

イザック

それは
認めましょう

イザック

ですから
あくまで『本日は
いったん保留』
という提案です

イザック

現状、
有用な情報が
少なすぎる…

イザック

この状態で
議論を進めても、
かえって逆効果では?

ノクトル

僕も賛成

ノクトル

てか、相手は
『ウェンデッタも
知ってる人』なんだろ?

ウェンデッタ

そうらしいわね

ウェンデッタ

クロエに
よれば…だけど

ノクトル

ならさー、
わざわざ議論
しなくても

ノクトル

だいたい
見当つくんじゃ
ないの?

ウェンデッタ

無理ね

ウェンデッタ

心当たりが
多すぎるわ…

ウェンデッタ

普通に考えれば、
皇国五大貴族の誰か
だろうけど

ウェンデッタ

直系と傍系で
私が把握してるだけでも
相当な数よ

ウェンデッタ

しかもクロエは、
元・平民…

ウェンデッタ

相手が
平民の可能性だって
否めないもの、はぁ…

ウェンデッタが、 ため息をついた。

クロエは もともと平民だったが、

『聖女』に選ばれたことで 皇国五大貴族ミスミ家の 養女になった。

それまでの経歴は 広く知られていないのが 現状なのである。

ウェンデッタ

(イザックの
主張も一理あるか)

ウェンデッタ

(下手に決めつけると
先入観での判断ミスも
起きやすくなるし…)

ウェンデッタ

わかったわ、
今日のところは
保留にする

ウェンデッタ

…イザック、
追加の情報収集は
頼めるかしら?

イザック

全く、人使いが
荒いお人だ…

ウェンデッタ

しょうがない
じゃない

ウェンデッタ

他に
任せられる人なんか
いないんだから

イザック

でしょうね…ふふ

文句を言いながらも どこか少し 嬉しそうなイザック。

ウェンデッタ

ということで
報酬は上乗せするから
頑張ってちょうだい

イザック

…承知しました

イザック

内容が内容だけに
少々お時間は
頂きますが

イザック

本日中に諸々
手配いたします

イザックは にこりと微笑んだ。

この作品はいかがでしたか?

159

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚