未知子
…。

昭
そうよ、あの女よ。

昭
宝生グループの創始者、宝生隆の一人娘、宝生絵梨華よ。
昨年までアメリカの警察にいたみたいだけど、どうゆう訳か、神南南署に移動になって、重役ポストについてるわ。
署長を抑えて、全ての権限を握ってる。
まさに、鉄壁のお城ね。

未知子は、動揺が隠せなかった。
手と手を合わせ、震えを抑えた。
未知子
そう…。生きてたんだ。

昭
そうなのよ。まさのまさか。
こんな所で会うなんて運命のいたずらよね。

昭
それで、どうするの?
今日中に向こう方に連絡しないといけないんだけど…。

昭
それとも、やめておきましょうか?
あまり乗り気じゃないみたいだし。
まぁ、同然よね…。
あの女がいるって分かったら行く気がなくなるのも。

昭
お断りしておきますね。

そう言って、昭は椅子から立ち上がり、電話をかけようとした。
すると…。
未知子
待って。昭さん。

未知子
行くわ。

昭
いいの?

未知子
行って、自分の目で確かめてみる。

昭
わかった。
未知子がそこまで言うなら、向こう方に連絡しておくわね。

未知子
うん…。

そう言って、未知子は、写真に目をやり、決意を新たにする。
そこには、未知子と昭さん、そしてもう一人写っていた…。
未知子
昭さん、私…。

昭はその言葉の先を察して、未知子の見ていた写真を伏せた。
昭
未知子、過去に縛られるのは良くないわ。未知子は、今この未来を歩んでるんだから。

未知子
…。

昭
それとも何、あの人との約束を忘れたの?

未知子
それは違う、忘れてない。
あの時も、今も…。

すると、〝カランカラン〟と鈴が鳴り、一人の男が入ってきた。