……結局、今回のゲームは集団訴訟沙汰寸前まで行った挙げ句、
賠償金代わりに鳳凰院グループが学校に巨額の寄付を行うことで決着した。
谷口寛也・星晴真・奥村修の3人は、潤沢になった予算を元に、それぞれ大会やコンテストに向けて、部活動に励んでいる。
奥村修
土曜の練習試合頑張ってねヒロ君! 僕も一段落ついたら応援に行くから!
谷口寛也
おうよ! 任せとけ!
奥村修
星先輩も日曜の試合頑張って下さい! 僕は日曜部活ないので、最初から応援に──
星晴真
待て奥村。俺の試合も日曜じゃなくて土曜だぞ
奥村修
えっ……? す、すみません、思い違いしてました!
星晴真
まあ別に良いさ。……で、どっちの応援行くんだ?
奥村修
え、ええ……!?
谷口寛也
あぁ!? 俺に決まってんだろうが! しゃしゃってくんなボケ!
星晴真
へーへー。奥村、うるせーからアイツの応援行ってやれ
奥村修
わ、分かりました……
星晴真
けど、つまんなかったらいつでも見に来ていいからな?
奥村修
分かりました。ぶっちゃけサッカー部の試合は相手が凄く強い所なので、本当に行くかも知れません
谷口寛也
るっせぇ!!
……荒川和重は、斉川冬樹の祖父母宅に向かい……16年前の過ちを、改めて深く侘びた。
祖母
……もういい。もういいよ荒川さん
祖父
冬樹が許しているのなら……ワシらが口を挟むことじゃない
荒川和重
ありがとう……ございます、うう……
斉川冬樹
おばあさん、おじいさん……ごめん、今まで心配かけて……
祖母
いいんだよ……私たちも悪かったよ。いままでずっと、騙していて……
祖父
もうお前も働くことはないよ。この人が残してくれたお金を、自分のために使いなさい
祖母
荒川さん……アンタも、この子の面倒を見てやってくれ
荒川和重
はい……!
それぞれの事情を乗り越え、大きく成長できた参加者たち。
だが、生徒会長の大石優。彼だけは唯一、苦境に立たされていた……。
大石優
あ゛ーーーー……づがれだ…………
斉川冬樹
遅かったな、随分……
大石優
全部あの女のせいだよ……
斉川冬樹
なんでだよ? 学校にかなりの予算着けてくれたんだろ?
大石優
だからこそだよ! 部活動の支援に、備品の整備に、校内設備の修繕や刷新に、行事のリニューアルに……!
大石優
あの女がとんでもない予算を押し付けてくれたせいで、金がないから止めてた計画がいっぺんに動き出してんだよ!
大石優
お陰で生徒会の仕事は激増だ! 今だって山のような稟議書をようやく書き終えて、先生に出しに行くところだよ!
大石優
なんで高校生なのにブラック企業ばりに働かなくちゃなんねーんだよ!
斉川冬樹
……金があるっていうのも考えものだな……
大石優
はあ……それで冬樹、何の用だよ?
斉川冬樹
いや……色々話したいことがあるから、残ってたんだ
大石優
なんだ?
斉川冬樹
その……まず、父さんが……再婚する。星さんのお母さんと
大石優
え……!? あ、荒川先生が!?
斉川冬樹
ああ……星さんとお母さんと話し合って、折り合いを付けたらしい
斉川冬樹
で……僕は2人の養子になる。家も星さんの……兄さんの家に引っ越す
大石優
え、えぇ!?
斉川冬樹
兄さんの家の方が学校に近いし、おばあさんたちも親が揃っていた方が良いって言ってくれて……
斉川冬樹
けど……再婚したら親と子供が同じ学校に在籍することになって、色々と不都合だから……
斉川冬樹
父さんは今日付けで退職した。明日先生たちから言われるはず
大石優
ええーーーーー!!?
斉川冬樹
驚きすぎだろ……
大石優
いや当たり前だろ! 3つも爆弾ぶっ込むなや!
大石優
てかもう退職しちゃったのかよ先生ー! せめて送別会でもさせてくれよー!
斉川冬樹
ごめん……
大石優
ていうか、お前はそれで大丈夫なのかよ?
斉川冬樹
心配するなよ。ちゃんと父さんも次の仕事は見つけてる
斉川冬樹
知り合いのツテで、隣町の私立高に務めることになったんだ。ほらあの、物凄い数の生徒がいる……
大石優
そ、そっちもあるけど! 俺が心配してんのはお前だよ!
大石優
その……星先輩とか、先輩のおばさんと上手くやれるとかさ!
大石優
先輩は悪い人じゃないけど、ぶっちゃけ谷口先輩とかと一緒で、すぐカッとなる人だし……
大石優
星さんのお母さんとだって、上手くやれるか分かんないんだから……おばあさんの所にいた方がいいんじゃ……
斉川冬樹
……そうやって余計なおせっかい焼いてくるのが迷惑だって、何度言えば分かるんだ?
大石優
…………!
斉川冬樹
……ふふっ。冗談だよ
大石優
え……?
斉川冬樹
結局君は……僕が心配で堪らないんだろ?
斉川冬樹
僕が新しい環境に馴染めるか不安でたまらないんだ
大石優
う゛っ……
斉川冬樹
本当に、呆れ返るくらいおせっかいな男だな、君は
大石優
う、うるせーよ! 心配しちゃ悪いのかよ!
斉川冬樹
ああ悪いね。これまでならともかく、今の君は到底人の心配なんてできる余裕はないだろう?
斉川冬樹
たった今君が述べた通り、今の生徒会は多忙極まりない状況だろうに。猫の手も借りたいくらいなんじゃないかい?
大石優
ぐっ……そ、そうだよ。それがなんだよ
斉川冬樹
……なら、僕が貸してやる
大石優
……え?
斉川冬樹
……この僕が手伝ってやると言ってるんだ
大石優
で、でも冬樹、お前バイトが……
斉川冬樹
……馬鹿! 生徒会長のくせに記憶力も思考力もゼロか君は!
斉川冬樹
たった今長々と説明してやっただろう! もうバイトなんてする必要ないんだよ!
斉川冬樹
だから空いた時間で、君を手伝ってやるって言ってるんだ!
斉川冬樹
それが……今までずっと僕を助けてくれた君への、せめてものお礼だ
大石優
冬樹……ありがとな
斉川冬樹
まずは業務改革だ! 傍から見ていても、生徒会の業務は無駄が多すぎる!
斉川冬樹
稟議書は電子ベース! 会議はオンライン! 業務連絡は●lackだ! 生徒会だけじゃなく、学校業務全般をDX化していくぞ!
大石優
お、お手柔らかにお願いします……
……こうして、唯一その先が不安視された大石優も、最大の友人の助けを得て、苦境を乗り切れる目処がついた。
今回のデスゲームにより、自らの胸の内をさらけ出し、ぶつかりあった彼らは……何物にも代えがたい、最高の絆を掴み取ることができた。
その絆は、それぞれの心を支える強い繋がりとなり……彼らの人生の大きな財産として、光り輝いていくのである。
鳳凰院紫
……そして私の妄想の糧として雄々しく燃え上がっていくのである
タバサ
いー加減にしろこの腐敗ゲームマスターが
ダイラタンシー
にゃん
フハイゲーム 完