靴屋
小春
何があった‼︎
アタシは勢いよく 店の扉を開けた。
夜笑
こ...小春っち...
夜笑
ア...“アレ”...
小春
“アレ”?
夜笑が指を差す方向を見ると 黒い何かが蠢いていた。
小春
小春
ゴキブリ...?
それは黒光りした“G”だった。
小春
はぁ...焦って損した...
夜笑
アレは焦るでしょ‼︎
小春
まぁ老朽化してるからな、虫やネズミくらい出るだろ
小春
ちょっと待ってろ、倉庫にゴキブリ退散スプレー取ってくる
夜笑
あっ‼︎倉庫は開けないでっ‼︎
アタシは夜笑の言葉を無視して 倉庫の扉を開けた。
小春
ん?何が...
だがアタシはこの行動を すぐ後悔することになる。
チューッ‼︎
ジジジジッ‼︎
カサカサッ‼︎
小春
小春
は?
それは一斉に蠢いた。
小春
ああああァァァッ‼︎
夜笑
うわあぁあぁあぁあぁッ‼︎
平日の15時過ぎに 2人の断末魔が店中に 響き渡った。
夕方
小春
はぁぁぁぁ...
夜笑
あぁぁぁぁ...
アタシ達はヤツらの逆襲の 疲労感から床に共倒れしていた。
小春
何でこんなことになったんだ...
夜笑
なかなか小春っちが戻らないから、ウチと舞で店内を探検しようってなってさ...
夜笑
舞が倉庫内にあった靴の在庫を少し動かしたら...ヤツらがいたんだよ...
小春
あー...そういやあの在庫、何年放置してたっけ...
小春
てか、犯人の舞はどこに行ったんだァ?
夜笑
トイレに篭ってる。全部退治したこと言っても怯えて出てこない
小春
小心者め...
夜笑
小春っち...その...ごめんね...
小春
あ?何がだ?
夜笑
何がって...大事な用事があったんじゃないの?
小春
どうしてそう思うんだァ?
夜笑
だって何かの店にいるような音楽が聞こえたから...
小春
あー、あの内装とは裏腹に落ち着いた音楽が流れてたヤツか
夜笑
?
小春
いや、こっちの話だ
小春
確かにアタシは店にいた、しかもそこそこ重要だった
夜笑
本当に...ごめんなさい...
小春
だがな、アタシは金を持っていなかった。だから買うことは不可能だった
小春
だから別に呼ばれようが何だろうが、ここに帰るつもりだった
小春
だからもう謝んな
夜笑
でも
小春
くどい
夜笑
....
小春
まあ、そこそこ楽しかったしな...
夜笑
えっ?
小春
あ?何でもねーよ
小春
てか腹減って飯食いてぇから舞呼んで来いよ
夜笑
自分で作れば...
小春
賞味期限が切れたおにぎりパーティーするか?
夜笑
あ、料理できない感じ?
小春
アホか、カップラーメン作れるわ
夜笑
それお湯入れて待つだけじゃん‼︎
小春
いちいちうるせーなァ、さっさと舞呼んで来いよ‼︎
夜笑
もう人使いが荒いんだからー‼︎
夜笑は不満を漏らしながら 舞を呼びに行った。
小春
....
小春
そこそこ楽しい...か
小春
ケヒヒ...自分で言って笑えてくるなァ...
小春
この感情...何だか懐かしいな...
小春
はぁ...何考えてんだかアタシは
小春
とりあえず明日は2人に掃除を任せて、アタシは花を買うか
アタシは軽くひとりごとを 呟くと、再び静かに 2人が来るのを待った。