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【一宮の場合】
怒涛のごとく過ぎ去った日々は過去のものとなり、これまで通りの生活が戻ってからしばらく。
いつも通りのスーツを着こなし、颯爽と通りを歩く男が1人。
一宮
一宮
一宮
十三形が敗れた直後、一宮達は十三形が構築していた世界から解放された。
実に自然に、なんの変わりもないかのごとく。
現実世界においても、七星は入院の必要がある程度の怪我はしていたし、一宮達が気づいたのも病院の中。
非現実世界でありながら、ごくごく一部は現実とリンクしていたのではないか――とは、これを受けて四ツ谷が出した推論だった。
一宮
一宮
十三形が企てた、悪意ある策略は、一宮達の手によって阻止された。
別に正義のヒーローを名乗るつもりはないし、誰かに知って欲しいわけでもない。
ふと、一宮は立ち止まると、晴れ渡った空を見上げる。
一宮
あの後、どれだけ七星が調べようとしても、八橋という人物は見つからなかった。
もちろん、三富や六冥もまた、この世の中に最初から存在していないかのごとく、所在がまるで掴めなかった。
深く考えると、それはそれで考え込んでしまいそうだから、一宮は小さく首を横に振って、現実へと思考を戻す。
ただ、心のどこかでずっと考えている。
もし、彼女達にも墓があるのならば、いつか花のひとつでも手向けてやろうと――。
一宮
一宮は小さく頷くと駆け出した。
ごくごく当たり前の平凡の中へと向かって。
【一宮の場合 ―完―】
【七星の場合】
あの後、傷も順調に癒え、病院を退位した七星。
ただ、あちらと少し異なるのは、通り魔的犯罪に巻き込まれて刺されたことになっていた――ということだ。
ただ、その通り魔も逮捕されたという話を、担当の刑事から聞いた。
犯人の名前は伍代――。
現実世界ではないからと、好き放題にしていた彼ではあるが、しっかりと罪を償うため、警察の世話になっているらしい。
つくづく、悪いことはできないものだと七星は思う。
久方ぶりに学校へと復学した七星は、ただただ言葉を失った。
七星
隣の席に、さも当たり前とばかりに座っている女性に声をかける。
二ツ木
七星
二ツ木
二ツ木
二ツ木
七星
七星
七星は文字通りに頭を抱える。
二ツ木
七星
二ツ木
二ツ木
呪いの絵本の呪縛より解き放たれたはずの七星ではあるが――どうやら、まだまだ前途多難のようである。
【七星の場合 ―完―】
【四ツ谷の場合】
海沿いを延々とバイクで走り続けると、適当な埠頭にてバイクを停める。
事前にコンビニで買っておいた缶コーヒーをバックパックから取り出すと、海への落下防止の柵にもたれかかってコーヒーを一口。
四ツ谷
四ツ谷
四ツ谷
四ツ谷
誰に言うでもなく、独り言として漏らしてしまったのは、きっと口にすることで自分を納得させようとしたのだと思う。
自分で思っていた以上に声が大きかったことに気づいた四ツ谷は、言葉をぐっと飲み込んだ。
四ツ谷
四ツ谷
四ツ谷
沈む夕日を眺めつつ、コーヒーを飲み干すと、空き缶を捨ててバイクにまたがる。
四ツ谷
ぽつりと呟き落とすと、バイクのエンジンをかけ、そして沈みゆく夕日に向かってバイクを走らせたのであった。
【四ツ谷の場合 ―完―】