灰谷兄弟の秘密

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俺はあの日

運悪く父親の事故現場を目撃した

警察の調べでは車には親父1人だと言われ

誰も真犯人がいるとは思わなかった

助手席に母さんが座っていて

父さんが運転していた

突然母さんがハンドルを掴んだ

訳が分からなかった

だって母さんは

"電柱に向かっているのだから"

ｶﾞｼｬﾝ!!

鈍い音と同時に煙がたった

恐る恐る車の方を見た

すると

ボロボロの母さんが出てきた

笑顔でブツブツ言っている

ボロボロの状態で母さんは歩いて行った

俺は何も信じたくなかった

母さんが事故らせて父さんを殺したことも

父さんが浮気をしていたことも

あんな恐ろしい母さんを

信じたくなかった

何も知らないふりをして

俺は家へ戻った

しばらくすると

インターホンが鳴った

外が騒がしい

パトカーのサイレン

救急車のサイレン

近所の大人たちのざわめき

ピンポン

何も知らない顔で母さんがドアを開ける

警察が見せた写真

それは

車かどうかも判断できないような

さっき電柱にぶつかった父さんの車だった

母さんは演技が上手いのかもしれない

数分後

警察と何かを話す母さんの声が聞こえた

父さんが死んだらしい

そりゃあそうだ

あんだけ原型もなくぺちゃんこになれば

人間でもなんだろうが死ぬだろう

そう言って俺らを抱きしめる母さんの手は

震えていた

それから2年後

俺は母さんと共に家を出た

俺は勘づいていた

母さんは今日

俺らを捨てて家を出る

だから俺は今日母さんを

この手で殺す

母さん

今、どんな気持ち？

俺は

今すぐにでもナイフを出したいよ

でもまだ早い

もっと

今まで耐えてきた気持ちを全部全部

全部母さんに味あわせてから

母さんを手にかける