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ガチ!?
うっそーん
めちゃくちゃ時差でごめん!! お久しぶりだ!! 途中白ちゃんが気失っちゃった時めっちゃ心臓ばくばくした..😭😭 みんな無事でよかった~✨️ 3章ではどんな絆を見せてくれるか楽しみですね😇✨️
生きてます!!! 生きてます!!!!ごめんなさい!!
いつぶりですか本当に....あの体調不良とかじゃないのでご心配なく。 みんな(sora含め)覚えてないと思うので前回のあらすじ置いときますね....
【前回のあらすじ】 攻略不可能とされているダンジョンに乗り込んだスカイ一行。 苦戦するもペアごとに担当の部屋を攻略していき、5人が合流する。 1人行方不明状態の最年少は一体....?
そしてついに第2章完結ですね。 第1章の最終話もダンジョンでしたが、そこからの成長を書きたいところ... それではLet's go〜!!
※血だらけの背景が出てきます。 ご注意を。
2024/12/01投稿
第57話
「剣」
赤
青
青
笑いながら駆け寄ってくるりうら。 こちらの5人はというと、唖然としてなにも喋らない。
めっっっちゃ心配してたねんけど...? そんな元気に帰ってくることある??
黄
赤
ギューーーッ
赤
赤
黄
突進するかのように抱きついて誇らしげな笑顔を浮かべるりうら。 アニキはというと、心底安心したように小さく抱きしめ返している。
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赤
赤
桃
青
赤
紫
笑いながら返す初兎に激しく共感する。 全員が謎の亀裂に落ちたのに、行く予定だった部屋にたどり着きそれをちゃんと攻略し、全員が合流できている。
もう奇跡に等しい。 メンバーの実力もあったのだろうが、今回の運はもう使い果たしているのではないかというくらいのミラクルだ。
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黄
黄
水
水
水
桃
この人は何を言っているのだろう。 1度自分の足に視線を落としてみてもらいたい。
青
桃
桃
青
青
水
水
桃
桃
水
水
桃
水
桃
水
水
ギュッッ(思いっきり頬をつねる
桃
水
青
紫
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赤
青
青
いむしょーを探すのはアニキのためだったから百歩譲って許すけど、自分から怪我しに行ったのは許せない。
「まろが傷つく方が嫌だ」ってなんやねん。こっちだってないこが傷つく方が嫌に決まっとるやろ。
あんなの、自分の能力の方が上やからって助けるフリして勝手に背負い込んでるだけや。 ひとつも俺のこと信じてない。お荷物みたいな扱いしやがって。
青
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赤
赤
紫
青
黄
黄
アニキはないこが俺を庇ってあの怪我を負ったことに気づいたのだろう。 不貞腐れている俺の頭をぐりぐり撫でてきた。
青
ないこには聞こえない声の大きさで、 本音をこぼす。
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紫
赤
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紫
にししっとイタズラに笑う初兎。 その考えは無かった。
たしかに、お互い守り合えば一方的な "守らないといけない奴"という認識にはならない。
同じ立場、同じ関係、同じ想い。 きっとそれは1番いい仲間の形だろう。
青
青
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水
桃
水
桃
桃
水
桃
ほとけにヒールをしてもらった後、少し休んでから次の部屋を探すことにした。
ダンジョンというのは、基本的にボス部屋の前にモンスターは湧かない。 体制を立て直すのはそこまで進んでからにしようという作戦だ。
正直ここも安全では無い。 全員が揃っているとはいえ、万全な状態ではないので大変危険である。
青
赤
周りを見渡しながら歩くりうら。 その様子に普段と違うところは無く、緊張ももちろん無い。すました顔をしていた。
青
赤
青
赤
青
突然戻ってきた時のりうらはいつも通りだった。 いや、"いつも通りすぎた"。
装いのいつも通りなんじゃないかとしか思えなかった。 無理して、もしくは自分がそうしたくて、なにかを覆い隠すようにいつも通りを演じているのではないか。
赤
青
赤
赤
赤
そう言ったりうらの瞳は小さく揺れていて、「あぁ、本当に隠してたんだ」と納得するには十分だった。
列になって歩いているメンバーも、お互い喋りながらこちらへ聞き耳を立てている雰囲気だ。
青
赤
赤
赤
赤
赤
青
赤
青
辛かっただろう。 仲間と恩師が重なって、昔の自分の力無さに打ちのめされて。
泣きたくなるような記憶を鮮明に思い出したのかもしれない。
でもきっとその記憶は、彼が悲しむために、苦しむためにあるものではないはずだ。大切な人との記憶は、もっと幸せであるべきだ。
それに、過去によって生きる価値を測るのは間違っている。
青
青
青
赤
青
赤
赤
赤
「ちゃんと教えてくれてありがとう」 そう言ったりうらは泣きそうな顔だったのが少しマシになっていて、俺自身がほっとした。
少しでも苦しみを拭うことができたのなら、それが1番嬉しかった。
水
ほとけが亀裂の傍で腰を下ろす。 が、こいつなら落ちかねないのでマントを掴んで少し引き離した。
青
水
桃
紫
黄
青
桃
紫
紫
黄
桃
紫
ガシッ
青
赤
初兎が俺とりうらの手を掴む。
紫
青
赤
ドサッ
紫
青
赤
りうらは自分で上手く受け身をとったようだが、俺は初兎に抱えられたまま着地したらしい。
ないことアニキほどでは無いと言え、まだ疲労が残る俺を気遣ってくれたのだろう。
ドサッ
桃
黄
水
全員が降りてきたところで辺りを見渡す。
部屋の中はなにかの生き物の中のように生暖かく薄暗かった。 床が呼吸するように動いている。
青
グラッ
青
桃
紫
床が急にボコッと突き上げてきた。 この床、きっと細胞みたいに自由自在に動くのだ。
近くに居たないこと一緒に持ち上げられたようで、足がおぼつかず落ちかけたないこを引っ張る。
青
ヒールしてもらったとは言え、まだ足に痛みが残るないこが降りるのは無理だ。 俺がこのまま抱えて__
紫
青
紫
グラッ
桃
青
初兎が床自体を切ったみたいだった。 足場が切り刻まれてグラつくが、なんとか耐えてみんなの元へ戻る。
そうか。この床も壁も本当に細胞で、この部屋自体が生物なのだ。
青
紫
紫
青
赤
魔力はまだ回復していない。 魔法を撃つのはもう少し魔力がたまるまで我慢しなければならない。
青
俺ができる攻撃方法は__
青
赤
俺が蹴ったことで凹んだ床を、りうらが隙を見逃さずすぐさま毒で畳み掛ける。
"細胞"....つまり生き物。 りうらの毒もちゃんと効くようだ。
赤
青
連続攻撃に挑戦するのはこれで5度目。 そろそろ3人とも疲れが見えている。
初兎がボロボロになった床目掛けてすごい勢いで突っ込んでいく。
紫
プツッ
どこからともなく糸のようなものが切れる音がした。
紫
紫
赤
青
水
桃
黄
青
赤
紫
青
俺の回し蹴りの威力はそんなに強くない。アニキの3分の1くらい。
2人の攻撃が強かったからあの部屋を攻略できたのだ。 2人だって疲れてるはずなのに。
紫
紫
赤
紫
桃
桃
紫
青
水
紫
地下なのでどのくらいの時が経ったのか正確では無いが、多分2日くらいこのボス部屋前に滞在している。
そろそろ頃合いだと、みんな思っているだろう。
ズキッ(頭が痛む)
紫
体力回復のために3度くらい寝たけど、その度にあの炎の夢を見た。 それがあってから頭痛が止まらない。
大切なことを忘れてる気がする。 捨て子である自分の記憶が完全じゃないことは知っているが、朧気に残るなにかを思い出せない。
いむくんと攻略した部屋で見た自身の記憶も気になる。 あれは、俺の知らない記憶だった。
きっと俺が拾われる前の__
黄
紫
紫
黄
治る気配の無い頭痛でダンジョン攻略を止めるわけにはいかない。
紫
黄
紫
黄
黄
紫
紫
黄
さすがいむくん。ぬかりない。 「僕にはこれくらいしかできない」なんて言うけど、それがどれだけ助かるか。
メンバーに恵まれてるなぁと思う。
紫
紫
20分後....
紫
青
桃
水
赤
黄
紫
ちなみに俺はりうちゃんと一緒にボスへ突っ込む要員。 まぁ剣士なので当然だろう。
このダンジョンのボスは攻撃方法が豊富らしい。そして声がデカい。とても。
なんせ山1つ崩せる咆哮だ。 まず注意するべきはそこだとみんなで確認し合った。
紫
紫
黄
水
いむくん的には以前いきなり掻っ攫われたのがトラウマらしい。 さすがに今回もいむくん目当てということは無いと思いたいが....人質に取られる可能性はある。気をつけないと。
赤
そう言いながらりうちゃんが触っているのは壁にあるランプ。 巻物の記述によると壁に並ぶ全てのランプを一斉に灯す必要があるらしい。
黄
紫
転移魔法で転移された後もなるべく近くに居たい。みんなが集まった状態でどうやって火をつけよう....?
桃
青
赤
桃
....今えげつない事言わんかった???
青
桃
キメ顔でそう言いながら、ランプと同じ数の矢を弓にセットする。 天井へ弓を突き上げた。顔もその先を見据えている。
桃
青
ボワッ(矢に炎がつく
桃
シュパッ
高い天井に炎を帯びた矢が舞い上がる。 火の粉を散らしながらアーチ状に落ちていく。
紫
全てのランプに届いた。
水
赤
桃
ゴゴゴゴッ
青
紫
水
黄
ピカッ
視界が真っ白になる。
赤
りうちゃんの声が響くと同時に、頭に強い痛みを感じながら体が光に呑まれていった。
紫
まるで夢から覚めた時のように頭が混乱する。
確かに2本の足で立ってるはずなのに、さっきまで寝ていたような感覚だった。
赤
隣でぼーっと天井を見つめたまま動かないりうちゃんの肩を揺さぶる。
紫
赤
赤
黄
さっきの立ち位置のままここに転移されたみたいだ。 全員狐につままれたような顔をしている。多分俺も。
神殿のような見た目の空間。 ここがボス部屋なのだろう。
ボスの姿は見当たらない。居たら一瞬で分かるはずだし、気配も感じるはず。 気配さえも感じないということは、離れたところに居るのかそれとも__
紫
紫
青
桃
水
青
青
「前見えへん」.....? まろちゃんは視界が真っ暗ってこと? 他のみんなにそんな様子は無さそうだ。
桃
桃
青
紫
赤
紫
赤
なにかをジェスチャーで伝えようとしている。 耳を指さしてるけど.....
水
紫
赤
本当に聞こえなさそうだ。 上手く喋れてないのも自分の声が聞こえていないからだろう。 でもなんで急に....?
桃
紫
黄
水
天井に"バケモノ"が張り付いていた。
「バケモノ」としか表現できない。 おぞましく、憎悪の塊のような、形の定まらない生き物。 胃の底から恐怖の感情が湧いてくる。
こちらへ飛びかかってきた。
紫
赤
ドォォォォォンッッッ
ボス
ボス
ビリビリ
紫
すごい咆哮。 「音」じゃない。「空気の振動」だということがよく分かる。
でも山を崩すほどじゃない。 つまり、こいつはまだ本気とは程遠い エグイ相手ってこと。
皮膚がビリビリして感覚が麻痺する。 りうちゃんも耳が聞こえなくても振動で咆哮のすごさが伝わっているようだ。
紫
赤
俺が剣を構えたことで意図は伝わったみたいだ。
紫
プツッ
紫
カシャーンッ(剣が落ちる音
赤
視界が回転して天井にうつる。 身体が動かない。なにも感じない。 今俺はどうなってる?
紫
さっきまで感じてた咆哮の余韻も、ボスの禍々しさも、肌につたわるこの部屋の冷たさも、全てどこかへいってしまった。
まろちゃんの視覚といい、りうちゃんの聴覚といい、このボスは何をしたんや?
俺は....触覚を奪われたんか?
『弱者がノコノコと、よくも眠りを邪魔してくれたな』
紫
脳内に直接なにかの声が響く。 聞くだけで肺が凍りそうな、氷河のように冷たくて鋭い声。
紫
『お前たちの目の前に居る者だよ』
『剣士のお前と魔法使いのお前には見えてないか?w』
「剣士のお前」という言葉が頭に強く響く。 俺とまろちゃんのことだろう。2人ともボスのことは見えていない。
"お前たち"ということは多分、6人全員の脳内にこの声を送っているはず。
『久しぶりに楽しませてくれるんだろ?なぁ人間』
紫
紫
『....あぁ、人間はみな"あれ"を欲しがるのだったな』
『持って帰ろうとでも思ってるのか? 無論、まず帰れるわけがないが』
紫
『はっw"相当"なんて言葉は、俺を舐めてるからか?』
帰る前に死ぬと。そういうことだろう。 それはそうと俺の言葉が癇に障ってしまったらしい。いらないことを言った。
紫
ボス
紫
やば....目の前に.....
桃
ボス
紫
急いで起き上がって剣を構え直す。 ないちゃんのおかげだ。助かった。
紫
赤
りうちゃんも耳の異常は治ったようだ。 遠目だがまろちゃんもちゃんと見えているような雰囲気。
ボス
きっとこいつは、集中しないと相手の感覚を奪えないのだろう。
紫
赤
赤
紫
グサッ
紫
ボス
紫
巨体すぎて力でかなう気がしない。 持久戦はキツイ。かといって一発で仕留めることもできないだろう。
完璧に根性。耐えるしかない。
青
ボス
青
紫
青
黄
『騒ぐな』
バケモノの無数にある腕のひとつにまろちゃんが掻っ攫われる。 「騒ぐな」という声が脳内に響き、みんなの動きがピタッと止まった。
青
『動くな殺すぞ』
青
『俺の話を遮ったから今こいつがこうなってるんだ。わかるか?桃色髪』
ボス
桃
『そうかこいつは「まろ」というのか』
ないちゃんの心を読んだ....? このバケモノは人の心まで読めるんか?
『ならまろ、お前にいくつか質問だ』
青
『1つ目、この中のリーダーは誰だ』
青
『2つ目、なぜ"あれ"を手に入れようとしている?』
青
『ほう....』
『こんなレベルの低い集団に任せるなんて、国も国だな』
紫
このバケモン好き放題言うやん.... まろちゃんが人質にとられているせいで無闇に動けないのが悔しい。
『こんなに下までやってきた人間は久しぶりだ。しかし、俺にはこんなにも弱い奴らがここまで来てしまったことが不快でならない』
『俺は強い奴にしか興味がない』
青
『お前らには消えてもらう』
紫
青
紫
喧嘩売り始めた....!? 何が癇に障ったんや!?そういうとこまろちゃんの悪い癖....!
『.....』
青
それかー!!!!(納得)
『お前もそこのリーダーと同じくらい 生意気だな』
紫
『1人くらい殺せば大人しくなるのか?いや、どうせお前らは死ぬ運命だが』
『ひとまず後悔させる必要がありそうだな』
桃
ないちゃんがそう呟いた瞬間、バケモノの上に展開された矢が下へ降り注ぐ。 脳内に語りかけられている間に用意していたのはみんな気づいてた。
黄
青
黄
悠くんの上だけ見事に矢が降ってこない。ないちゃんの調節がすごい。 この人本当は魔法使いなのでは?
悠くんの技がバケモノに命中。 そこまでダメージは無さそうなものの、まろちゃんを引きはがせたのでとりあえずほっとする。
赤
ボス
ボス
赤
桃
ボス
赤
あいつ....腕も勝手に伸びるんや。 脳内に直接語りかけてくるし、心読まれるし、体は自由に変形するし、長年生きたモンスターの脅威は計り知れない。
俺は....あの腕を切れるんか?
紫
ザシュッ(ボスの腕
紫
桃
高く飛び上がったないちゃんがこちらへ飛び込んでくる。
2人の力なら腕は切れた。 切断面から血がダバダバと溢れ出して、それが頬に飛び散ってくる。
赤
赤
水
切れた腕
紫
赤
水
切断したはずの、もうバケモノとひとつも繋がってないはずの腕がうごめいてりうちゃんの首へ飛びかかる。
絶対苦しいはずなのに、りうちゃんはいむくんを守るのをやめない。
青
赤
『そこの2人の腕を切る判断は正しかったかな?』
ボス
紫
桃
『....』
『いい。仕切り直しだ。 次から手加減は無いぞ』
紫
ボス
ボス
グォォォオ"ォオオォッッッ"!!
ボス
青
紫
黄
聞こえとらん....!!
紫
赤
黄
赤
ボスが咆哮してしばらくたったが、状況は悪化していくばっかりだ。 覚醒したのか、何人もの感覚を奪えるようになってしまった。
悠くんは聞こえん。 りうちゃんは見えん。 ないちゃんは腕負傷のためヒール中。
まともに戦えるのは俺とまろちゃん。 体制はぐっちゃぐちゃで、事前会議で決めたポジションは全部崩れている。
連携がとれてるなんてお世辞にも言えない。あのバケモノ、このパーティーを根本から崩しにかかるつもりだ。
紫
とは思うものの、実際の解決方法は全く分からない。
紫
紫
前回はメンバーを入れ替えられる余裕があった。1人に負傷や問題があっても他のメンバーで補えた。
今は個々がバラバラで、連携がとれていない。
紫
お互いの足りないところを、補う。
紫
赤
紫
黄
悠くんの前に立って身振り手振りでペアになってほしいことを伝える。 しばらくきょとんとしていたが、なんとか伝わったようだった。
紫
紫
赤
お互いの能力を信じてる2人なら背中を預け合えるはずだ。
2人に限らず、メンバーはお互いの能力をよく知ってるし信頼している。 誰がどの感覚を奪われても、ペアになれば補い合うことができる。
ボス
紫
俺らの今までの絆があれば、こんなバケモノにも勝てるはずだ。
赤
ボス
紫
桃
かなりの長期戦だが、序盤の何倍も上手く戦えている。 あのバケモノも生物だ。能力を使いすぎたのか、こちらの感覚を奪ってくるスピードも落ちてきた。
今は誰も魔法にかかっていない。 みんな見えるし聞こえるし動ける。
決着をつけるなら今だ。
ボス
紫
桃
ボスの背中をないちゃんの矢が、胸らしき場所を俺の剣が、それぞれ突き刺さる。
両側から攻撃されたボスの目が歪んだのが見えた。
紫
まだいける。もう1回技を出せる。
紫
『そうか、お前は仲間を信じていないんだな』
紫
ズキッッ
タイミング悪く頭の奥が痛む。 霞む視界の中バケモノと目が合う。
ボス
その目は、気持ち悪いほど歪んでいた。
紫
なんでこの景色.....? 俺、みんなとボス部屋で戦ってたはずやのに....
父親?
紫
いつもは喋れないのになぜか喋れる。 それに、子どもの姿だったのが実際の大きさのままなようだ。
父親?
紫
母親?
母親?
紫
手を伸ばすと2人ともスっと消えていく。触れなかった。
紫
紫
赤
紫
紫
青
紫
2人の姿を見て安堵する。 無事でよかった。それに目立った怪我もない。
赤
赤
紫
青
青
紫
赤
紫
赤
そんなことない。 自分の夢なんて持ってない。
魔王討伐は夢の中の夢で、ただ理想なだけで、俺にとってなによりも大事なのは6人が揃ってることなのに。
紫
1年間、ずっと?
紫
紫
青
紫
青
青
2人が踵を返して消えていこうとする。 笑い合いながら、座り込んだまま動けない俺を置いて。
追いかける勇気も気力も無かった。
桃
黄
紫
2人にしがみつくように抱きつく。 その体はなんだか冷たくて、不気味な感じがしたけど。
桃
紫
桃
紫
黄
紫
ないちゃんは大怪我したし悠くんは半分気失っとったけど、みんな生き残ったはず。あんなに少年のお母さんに感謝されたのに。
桃
ないちゃんが俺の頬を両手で包む。
桃
紫
ないちゃんの子供を諭すような声に思わず肩が跳ねる。 背中を冷や汗がつたうのが分かる。
あの村の火災で死んだとするのならば、2人があそこに駆けつける原因を作って殺したのは__
紫
桃
黄
黄
紫
悠くんはそんな頭の撫で方をしない。 いつもならもっと優しい手で、優しい顔で、優しい言葉をかけてくれる。
黄
黄
紫
でも、悠くんの言うことは真っ当だ。 俺は2人を振り回して心配させた挙句、怪我させて行動を制限してしまった。
あれで本当に2人が死んでたら? いや、本当は死んでいるのか?
もし死なせていたら俺は....
紫
桃
桃
ないちゃんを見上げる俺は多分、絶望した顔で泣いているのだろう。 彼はそんな俺を冷たい目で突き放した。
黄
黄
そう言って後ろから迫る炎に呑まれていった。
突き放された俺の目の前で炎は止まって、熱気漂うそれは床に吸い込まれていった。
紫
こっちが現実.....? 俺が見てたのは全部都合のいい夢?
紫
水
紫
このいむくんも偽物.....? いや、こっちが現実なら本物なんか....?
紫
また冷たかったらどうしよう。 腕の中で崩れたりしたらどうしよう。 もしそうなったら、俺は本当に壊れてしまう気がする。
ギュッ
紫
水
俺の前にしゃがんでぎゅっとしてきた。 思わず相手の背中に腕を回して抱き返す。ちゃんと温かかった。
水
紫
水
いつも通りの声で魔法を唱える。 血が滲んでいた手の甲はみるみる元通りになって、痛みが引いていく。
水
紫
水
いむくんが俺の両手をしっかり握る。 強い眼差しでこう言った。
水
水
紫
水
水
ギュゥッ.....(抱きしめる)
水
紫
後ろからバケモノが.....っ!!
水
紫
紫
水
腕の中で動かない彼。 背中についたあのバケモノの爪痕であろう傷口からドクドクと血が流れている。
咄嗟に剣を抜こうと腰に手をかけたのに、剣を持って無かった。
紫
「いふくんの言ったこと」 「本当の僕」
「夢から覚めるの」
さっきの言葉が繰り返し頭に響く。 頭痛が酷い。心臓の速さも異常だ。
紫
「初兎はず〜っと夢見とる」
「どっちが現実かよぉ考えや」
....こっちが、夢?
いや、普通に考えればそうだ。 ないちゃん達の言葉に惑わされたが、本当は死んでいないはずなのだ。
紫
いむくんと落ちた花畑のときみたいに耳を澄ませ。きっとみんな俺に声をかけてくれてるはずだ。
みんなのいる現実に意識を戻せ。
紫
紫
紫
「初兎ちゃん!」
「初兎!起きろ!!」
「初兎っっ!!!」
聞こえた....っ!
紫
ボス
目の前にボス。 最後に見た歪んだ目は、俺が自力で目覚めたことに驚いているのか見開かれていた。
夢の中の時空がおかしかったのか、気を失った瞬間とまったく同じ状況。 俺自身、剣を構えたままだった。
紫
ボス
紫
なんとか持ちこたえて体制を立て直す。 後ろから肩を引っ張られた。
青
紫
紫
まろちゃんの言葉で目覚めないといけないことに気づいたので「ありがとう」と言おうとしたが、彼にはなんのことか分からないと思うので喉の奥で止めた。
ボス
青
青
紫
まろちゃんが俺と自分を保護するかのように周りに壁を展開させた。 魔力も残り少ないだろうに、こんなに大きな火の壁ができるのか。
紫
青
まろちゃんの顔は汗だくで頬が汚れてて、目立った傷は無いものの小さな擦り傷だらけだった。
さすがに熱いなとか思った自分を殴りたくなる。一番熱いのは彼なのに。
青
紫
青
青
紫
青
まろちゃんのしかめっ面で言われると吹き出しかけてしまう。 別に顔が面白いんじゃなくて、隠してるつもりのものがこんなにもあっさりバレてしまってることに対しての笑いだ。
青
紫
紫
青
青
紫
紫
青
青
紫
周りの炎がゴォォッと沈んでいく。 バケモノを真っ直ぐと見据えた。
紫
ボス
ザシュッ
紫
止まるな初兎。 ボスも同じくらいの傷を負ってる。 今しか無いのを思い出せ。
紫
ボス
バケモノに傷をひとつ与える度に自分の傷がひとつ増えていく。
これでは倒す頃には自分も倒れている。
紫
桃
桃
赤
仲間がいるから。
きっとさっきのは俺の想像とバケモノの魔法が引き起こした白昼夢だ。
本当にパーティーを抜けたかったのではないか。あの火災でみんなが死んでいたかもしれない。 必要が無いから捨てられたのかも。
心の奥底に押し込んでいたそういう不安を、あのバケモノが全て引っ張り出して夢として見せたのだ。
しかし、真実を教えようとしてくれたまろちゃんの優しさも、俺が炎に呑まれないように突き飛ばしてくれたないちゃんの賢明さも、
"ここ"と一緒だった。 "今"と変わらなかった。
夢の中でいむくんが抱きしめてくれたのは、きっと俺の体がその感覚を覚えていたからだ。
みんなの優しさを、賢さを、強さを、 絆を、忘れてはいけない。
仲間を信じて戦えば、どんな強敵でも怖気付かず立ち向かえる。 手足の震えだって無くなる。
紫
ボス
『幼稚だ。実に幼稚だ』
『剣士...いや、お前は__』
紫
『お前は、選ばれし者じゃないのか?』
「選ばれし者」....?
俺が誰に選ばれたというのだろう。 国の派遣の者だということか?
紫
紫
バケモノの目を真っ直ぐと見つめる。 みんな、適切な距離をとってこちらを見守ってくれている。 「今だ」という合図だろう。
手に力をこめて腕を振り上げる。 魔力さえ溜めているような気分だが、 そんなもの残っていないので腕力だけ。
人間でもこんなバケモノに勝てるのだということを、証明してみせる。
紫
ボス
紫
喉が焼けそうなくらいの叫び声が出る。
紫
バケモノに対しての感情が膨らんで膨らんで止まらない。
このパーティーを罵られた屈辱と、ここが墓場になってしまった数多の冒険者の無念と、
人を殺すしかない運命に生まれてしまったバケモノの魂に対する同情と、
俺に夢を見せ、大切な人との思い出をねじ曲げようとした行為への怒り。
紫
ボス
ザシュッッ
紫
紫
紫
ボス
初めに見た時は「おぞましい」「憎悪の塊みたい」と思っていたその姿は、 「退化してしまった悲しい生き物」のように感じた。
このバケモノにも、嬉しいとか楽しいとか、悲しいとか、そういう感情があったのだろうか。
いや、無かったらきっとこんなに必死に勇者のコンパスを守らない。 あれはきっと、大切なものなのだ。
紫
紫
ボス
『そうか』
『用が済んだら...あいつに返してくれ』
紫
『頼んだぞ、ゆう__』
ボス
紫
この場を支配していた、威厳ある生き物の気配が消えた。
水
紫
紫
桃
桃
紫
起き上がるとみんなの顔がよく見えた。 汗だくで、怪我だらけで、息が上がりっぱなしだけど、誰1人欠けていない。
紛れもなく最高の仲間だと思う。 俺の誇りで、宝物で、大切な人達。
紫
赤
青
水
紫
黄
りうちゃんが「ひとり〜、ふたり〜」と指をさして数えていく。 「5人」で止まった。....え???
水
水
紫
青
ホラーなんだが。
黄
紫
なぜか壁を叩きながら歩いている。 何をしているのだろう。本人もおでこから血がダバダバ出ているのだが大丈夫だろうか。
赤
桃
桃
紫
桃
紫
なんだかピンときた。 ないちゃんの足元だけ、少し柄が違う気がする。
ないちゃんがしゃがんで床を叩く。 額から血が1滴ポタッと落ちる。 いむくんが今まで以上に顔をしかめた。
水
青
桃
青
桃
黄
赤
青
まろちゃんが床を引っ張ろうとするけどツルツルすべってやりにくそう。 引っ張るのじゃない気がする。
紫
赤
紫
これは.....なんか、床が「押せ」って言ってる感じがする。
紫
カチッ
魔法のように消えていく大理石。 明るく輝く下にはハシゴが続いていた。
水
紫
桃
赤
桃
紫
水
紫
黄
青
黄
青
帰ってきた
水
青
水
ドサッ
水
紫
紫
赤
りうちゃんが白い布でくるんで大切そうに持っていたものを開いて見せる。 羅針盤の形をしたそれは、針がカタカタ意識を持っているかのように震えていた。
桃
紫
水
「伝説の剣」というのは、勇者の剣のことだろう。 どこにあるかわかっていないらしい。
青
黄
青
紫
桃
水
赤
水
水
全員が一斉に俺の手の中でガタガタと音を立てるコンパスを見る。 たしかに異常だ。通常がどんなかは知らないが、あきらかにおかしい。
桃
黄
桃
青
青
紫
手の中にあるコンパスが「早く剣を見つけて」と言わんばかりの震え方をしているのが気になるが、俺らには今時間が無い。
俺が持っておくのは怖いので、とりあえず安心安全のないちゃんにコンパスを持ってもらうことにした。
紫
桃
紫
桃
赤
紫
桃
水
黄
桃
ないちゃんが全力否定してコンパスが揺れる。でも針は動かない。 不具合だったのだろうか。
水
赤
紫
赤
こいつぅ.....
黄
水
桃
青
しばらく黙っていたまろちゃんが突然口を開く。 神妙な顔つきで俺の両肩に手を置いた。
紫
青
桃
まろちゃんが俺を押しながらみんなの周りを一周する。 それと同時にみんなの表情がみるみる変わっていくのがわかる。
紫
黄
赤
水
紫
もしや....と思い自身の腰に収めている剣に触れる。
紫
続く