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教室は、異様なまでの静けさに包まれていた
まるで、誰かが大声で泣き叫んだ直後の…
空気が一度破られ そして硬く閉ざされた様な
────“重い沈黙”
全員が席に着いている
遅刻常連のMr.レッドも 始業より一時間以上も早く来ていた
誰かと談笑する者も居なければ
スマートフォンを眺める者も居ない
全員が、ただ 「ここにいること」だけを目的に集められた様な
奇妙な光景だった
私はすでに自席にいた
扉の開く音も、椅子が引かれる気配も 何度も耳にした
けれど、そのどれもがやけに遠く…
────“現実味”を欠いていた
ふと、気づいた
誰も目を合わせようとしない
教室の、誰一人として…
机の表面を見つめていたり、
何も映っていない窓の外を眺めていたり、
或いはただ、虚空を見つめていたり────、
その瞳は────酷く濁っていた
ドロリとした恐怖 身を這うような不快感 理性の裏を針で刺すような痛み
────そして、言葉にならない喪失
あぁ、恐らく
彼らも見たのだ
“あの人”の「死」を────
Mr.ブラック
こんなにも人がいるのに ────息苦しい程、孤独だ
言葉を交わせば きっと、少しは和らぐのだろう
だが、それを誰も望んでいない
────いや、怖いのだ…、
踏み入れた夢の奥底に 現実までも侵されていることを認めるのが…
教室には、全員揃っている筈なのに
────どこか、空っぽだった
言葉の無い空間が、ただ時間を削り取っていく
耳鳴りのような静寂が続き
ふとした拍子に泣き出してしまいそうな 不安が、喉元に滲む
切ないのは、誰も泣かない事だった
皆、何かを喪った筈なのに
声を殺し、涙の痕すら見せず
ただその喪失を「個人の痛み」として 心の奥底に無理矢理押し込めている
私は、耐えられずこの教室を離れたくなった
────でも、立ち上がれない…、
この沈黙の輪に、私もまた囚われていた
パソコンの起動音が鳴る
もう、キーボードを打つ気力もなくて パタン、と画面を閉じた
ジジッ────ザザッ────ジッ
ザーッ────ジッ──…、ジジッ────
ジジッ──、ジッ────ッ────、
ぶつっ