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その日の夕暮れ、ナナセは足を引きずりながらも、町の古道具屋〈時雨堂〉へと向かった。
木造の古びた店構えは、いつもと変わらず、静かに時を刻んでいるように見えた。店の中からは、古い陶器や硝子、埃をかぶった仏具やお守りの数々が並んでいた。
扉を押すと、鈴の音とともに背後で
ツクモ
と、低くも落ち着いた声が響いた。
ナナセ
奥から現れたのは、細身で目の大きな少女。 艶やかな黒髪をざっくり切り揃え、着物と洋服が混ざったような不思議な服装だった。
ツクモ
ツクモは静かにナナセの背中を覗き込む。
ツクモ
ナナセは警戒しつつも、ツクモの言葉に引き込まれていった。
ツクモ
ツクモの目が、わずかに揺らぐ。
ツクモ
ツクモの口元に、一瞬だけ鋭い笑みが走った。
ツクモ
ナナセ
ナナセは息を呑んだ。
ツクモ
ツクモは店の奥へと歩き出す。壁に掛けられた古びた屏風の裏に隠された箱を取り出し、中から狐の形をした小さな土人形を差し出した。
ツクモ
ナナセは首を振った。
ツクモ
狐面とツクモ。二人の間には、見えない糸のようなものがある。
ツクモ
その言葉が、ナナセの胸に冷たい棘のように刺さった。