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長尾謙杜
大西流星
真っ白な顔で眠り続ける流星くんは、 やっぱり返事がない。
ピッピッピッ
響く心電図の音も一定で、 ほんまに生きているのか不安に なってくる。
でも。 僕が触れている流星くんの手は、 こんなにも温かい。
その事実だけが、今、流星くんを ここに繋ぎ止めている。
コンコン
長尾謙杜
遠慮がちに病室の扉を ノックする、小さな音。
この音は、 多分みっちーやな?
道枝駿佑
当たりや。
細く扉を開け、 隙間に体を滑り込ませるようにして 入って来たみっちーが 何だかおかしくて、 俺は久しぶりに笑った。
長尾謙杜
道枝駿佑
安心したような顔で優しく微笑んで そう呟いたみっちーは、 急に表情を引き締めて、 真面目な顔をした。
道枝駿佑
あぁ。みっちーには、 全部お見通しなんやな…。
長尾謙杜
道枝駿佑
俺の答えに、一瞬だけ不満そうな顔を したみっちーは、すぐに表情を 切り替えて小さく笑った。
なにわ男子の最年少、といったら 僕やけど、みっちーも僕と同い年や。 そんなみっちーに心配してもらうんは、 なんか違う気がした。 僕らは、同い年だからこそ、 こんな時だからこそ、 支え合わなあかん。 やから、ごめんな、みっちー。 今は、みっちーを頼れへん。
コンコン
長尾謙杜
俺は謙杜が落ち着いたタイミングを 見て、ドアをノックした。
道枝駿佑
長尾謙杜
俺の部屋の入り方をみて、 謙杜が笑った。
あー。
謙杜がちゃんと笑っとるの、 久々に見たかもしれん。
道枝駿佑
久しぶりに謙杜の笑顔を見て、 凄く安心した。 嬉しかった。
流星くんの病気が分かってから、 皆んなはできるだけ今までと同じ 対応ができるように心がけてきた。
でも。
全部が同じってわけにはいかんくて、 少し変わったこともある。
特に謙杜は最年少で 悩むことも多かったんやないかと思う。
だから、謙杜がいつも通りに 笑ってくれたことが、 めっちゃ嬉しい。
そん時の俺は、 ニヤニヤが上手く 隠し切れてへんかったと思う。
どうにか表情筋を抑えて、 伝えたかったことを口にした。
道枝駿佑
俺が尋ねた時、 謙杜の瞳が小さく揺れているのを見た。
やっぱり。
さっきも、謙杜のことを泣く程 追い詰めてしまっていたんや。
怖くないわけないよな…。
長尾謙杜
そう言って弱々しく微笑む謙杜が あまりにも儚くて。 今すぐにでも、手を握って、 大丈夫だよ、って 言ってやりたかった。
でも。 頭が良くて優しい謙杜は、 きっと俺のことは頼らない。
同い年の俺じゃ、 少し足りないからー。
道枝駿佑
みっちーが部屋に入ってから 約10分。
その間、俺と大橋くんは2人で、 みっちーたちの会話を聞いとった。
なにわ男子の中では最年少の2人。 ずっと、弟みたいな存在やと 思っとった。 でもー。 2人は俺が思っていたよりもっと、 ずっと大人で、抱えるものが大きくて。
これからは、 2人を守っていくんやない。 7人で支え合っていくんや。 もう、子供じゃないから。 きっと、それは本人たちが 一番思っていることやと思う。 だから俺たちは大人として、 メンバーとして2人と 関わっていかなあかん。
道枝駿佑
そんなことを考えていたら、 みっちーの落ち着いた声に 名前を呼ばれた。
高橋恭平
俺は、少し緊張した面持ちの 大橋くんに声をかけた。
大橋和也
みっちーも謙杜も、大橋くんもー。 もう大丈夫そうやで? 俺は。 俺は、大丈夫か? 覚悟を決めろ、俺。
高橋恭平
大橋和也
急に深呼吸を始めた俺に、 心配そうに声をかけてくれた大橋くん。
高橋恭平
深い呼吸で だいぶ落ち着いた心。
りゅちぇ。
今行くな。
高橋恭平
ガチャ。
みっちーが鍵を開けた音。
俺は大橋くんと目を合わせ、 扉に手をかけた。
分かっていた。
流星は眠って動かないこと。
ちゃんと、分かっていた。
でもー。
大橋和也
正気のない顔で 横たわる流星をみたら、 俺はパニックになった。
咄嗟に恭平の腕に 縋りつき、そのまま恭平を 盾にした。
高橋恭平
どこまでも優しい恭平の言葉に、 頷くことしかできない。
道枝駿佑
長尾謙杜
みっちーも謙杜も、 心配しとる。
年上組の俺がこんなんじゃダメや。
思えば思うほど、息が苦しい。
大橋和也
高橋恭平
昨日みたいに、 恭平は俺を抱きしめてくれた。
やけど。 今日は全然震えが止まらんくてー。
大橋和也
俺はアホみたいに 同じ言葉を繰り返した。
西畑大吾
藤原丈一郎
大ちゃんと丈くんの声がする。
あぁ。全員揃ったんや。 やっと。
流星、よかったなぁ。
みんな、流星を待ってんで?
好きな時に、起きてきてええからな?
ごめんな、流星。
そばにおってやれんくて。
やっぱり、俺。 ダメみたいや。
どうしても、昨日のことを 思い出してまう。
俺なんかが病室にいることは、 俺自身が許せへん。
大橋和也
高橋恭平
藤原丈一郎
恭平の静止を振り切って、 俺は病室を飛び出した。