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俺はバカや。
あいつの本当の気持ちに、 何でもっと早くに 気づかんかったんやろう。
あいつはー。
大橋は、誰よりも明るくて、 みんなの笑顔を見るのが好きで。 そして、誰より繊細だった。
流星の病気を知ったときの 大橋の顔を、俺は確かに覚えとる。
苦しそうで、悲しそうで、 見ているこっちまで胸が痛くなるような 暗い表情をしとった。
それなのに、どうして、俺は 大橋に向き合って やらんかったんやろう。
苦しいのは、辛いのは メンバーみんなおんなじや。
向き合わないけんかったのは、 流星だけじゃない。
俺はなにわ男子の最年長として、 Jr.時代から 長い時間を共にした相棒として、 あいつにもっとして やれることがあったんちゃうか。
ごめんな、大橋。
俺、自分のことに精一杯で、 お前のこと全然気に かけてやれんかったな…。
大橋が出ていってから、 誰も言葉を発さない。
そりゃそうか。
大橋があんなに追い詰められとるとこ、 メンバーは見たことないもんな…。
いつもは強がりな あいつが強がれんくなるほど 抱えていたもの。
これからは、俺にも 持たせて欲しい。
皆んな、今までになかった状況に 怯えている。
そんな状況を変えるのは、 きっと俺の役目や。
やからー。
藤原丈一郎
俺は、悲しそうに目を伏せていた恭平に 声をかけた。
藤原丈一郎
高橋恭平
藤原丈一郎
高橋恭平
安心と悔しさから涙が溢れた 恭平の肩を抱き、 俺は病室を後にした。
藤原丈一郎
丈くんの言葉は、 優しく胸の中に溶けていった。
高橋恭平
藤原丈一郎
高橋恭平
俺1人じゃ、大橋くんは 支えてあげられんかったけど、 俺、頑張れてたかな?
少しでも、大橋くんの気持ちを 楽にさせられたかな?
丈くんの優しさと、 少しの不甲斐なさから、 涙が止まらへんかった。
丈くんが大橋くんを追いかけて 病室を出ていってからは、 大吾くんやみっちー、謙杜が ずっと側にいてくれとる。
西畑大吾
道枝駿佑
長尾謙杜
みんなの言葉が温かくて、 やっぱり涙は止まらへんかった。
丈くん。
大橋くんを頼みます。
昨日と今日で、 大橋くんとのキョリは 縮まったけど。
やっぱり丈くんには 敵わないから。 ちょっぴり悔しいけど、 今の大橋くんには、絶対に丈くんが 必要やと思う。
やから、一杯一杯になって 苦しんどる大橋くんを、 どうか助けてあげてください。
藤原丈一郎
大橋が部屋を出ていってから 約15分。
未だにあいつは見つからない。
でも、長年の勘で、あいつはー。 大橋はまだ、この病院の どこかにおる。そんな気がした。
藤原丈一郎
大橋のことやから、 そんなにわかりにくい場所には 隠れないはずや。
あいつは昔から、 強がって何でも隠したがる。 でも、嘘や隠し事はかなり 下手くそやった。
やから。
見つけたー。
藤原丈一郎
俺が見た大橋の 背中は、不規則に、そして不自然に 上下していた。
大橋和也
過呼吸や。
藤原丈一郎
俺は大橋に近づき、 怯えた様子の彼をそのまま 抱きしめようとした。
でもー。
大橋和也
藤原丈一郎
大橋は恐怖に満ちた その黒い瞳で じっと俺を見つめ、 渾身の力で俺を突き飛ばした。
その手は可哀想なくらいに 震えていて、 見ている俺が苦しくなる。
大橋和也
自分が俺を突き飛ばした。 その事実が、また大橋を追い詰める。
大橋は、完全にパニックなっとった。
きつく握り締められた 拳には、うっすらと血が滲んでいる。
藤原丈一郎
大橋和也
真っ青な顔で固まったまま、 大橋は動かない。
藤原丈一郎
大橋を刺激しないよう 注意して、まだ震えの治まらない 大橋の両手をとった。
大橋和也
大橋はビクッと全身を揺らすけど、 さっきのように振り払いはしない。
藤原丈一郎
藤原丈一郎
藤原丈一郎
大橋和也
大橋は、何も言わへんかったけど。
小さく、何度も、しっかりと 頷いてくれた。
藤原丈一郎
座り込んでいた大橋の手を引き、 2人で立ち上がる。
そのままゆっくり、 大橋と病室へ向かって歩いた。
その間、俺たちは 何も話さへんかった。
流星の部屋に近づいたとき。
大橋和也
大橋俺の服の袖を、 弱い力で掴んだ。
藤原丈一郎
大橋和也
大橋和也
俯いて、唸るように呟いた大橋を、 優しく抱きしめる。
藤原丈一郎
大橋和也
小さな声で啜り泣く大橋の背中を さすり、大橋が落ち着くのを待った。
大橋和也
目を腫らして笑う大橋の表情は、 どこかスッキリしていて、 少し吹っ切れたように見えた。