霽月
……どういうこと?
スイ
そうですよ!
あの方と何があったんですか?
あの方と何があったんですか?
マドカ
(先輩の隣……♡)
マドカ
(あぁ、先輩の温もりを感じる……!♡)
4人の前に突如現れた白衣の男───ゲントウについて問い詰めるスイと霽月に、そんなことは全く気にせず、ただスイの温もりを感じているマドカ。
イザヤは困った。 2人からの質問にどう答えるべきなのか。
イザヤ
……。
霽月
何か答えたらどう?
あんたが自分の情報を吐くまで辞めないけど。
あんたが自分の情報を吐くまで辞めないけど。
イザヤ
もはや尋問か拷問の類いだろそれ……。
イザヤ
分かった分かった、1部なら話そう。
……まだ全てを話すのには早いからな。
……まだ全てを話すのには早いからな。
霽月
……それで?
霽月
あんたとゲントウっていう男の間には何があったの?
霽月
あんたが答えないと、あたしが知ってるあんたの情報をここでスイに教えるよ?
イザヤ
……?
イザヤ
まぁいい。きちんと話す。
イザヤ
……俺は、昔とある研究所に居た。
冬凪研究所という場所だ。
冬凪研究所という場所だ。
スイ
冬凪研究所……?
マドカ
人体実験をしているという噂の研究所ですよね。
マドカ
前に不審に思った警備隊が研究所に押し入ったけど、人体実験をしている証拠は見つからなかったとか。
イザヤ
……あぁ。マドカの言う通りだ。
イザヤ
そして、俺はその冬凪研究所に居たことがある。
イザヤ
両親が行方不明になって孤児になった俺を研究所が引き取ったんだ。
イザヤ
……いや、正確にはゲントウが、の方が正しい。
イザヤ
それから俺は研究所で数年間暮らしたんだが、そこでの生活は最悪だったさ。
イザヤ
居心地が悪くて息が詰まりそうだった。
霽月
……それ、あたしがバラそうとしていたことと関係あるかも。
イザヤ
そうなのか? どうしてだ?
霽月
資料室である記録書を見つけたんだ。
No.なんちゃらの記録とか……。
No.なんちゃらの記録とか……。
イザヤ
あの記録書が?
誰かに盗まれていたはずなんだが……。
誰かに盗まれていたはずなんだが……。
イザヤ
まぁいい。
それは俺についての記録だ。
それは俺についての記録だ。
イザヤ
研究所から記録書を奪い取ってきたんだ。
霽月
こわ。
スイ
物騒ですね……。
マドカ
……で、貴方は研究所で何かされたんですか?
マドカ
一見何も無いようにも見えますけど───。
イザヤ
……このガーゼは研究所に居た時につけられた傷を隠しているものだ。
イザヤ
見てみるか?
※これのこと
霽月
……見てみる?
スイ
……ですね。
2人がそう言うと、イザヤは頬のガーゼをゆっくりと外した。 そこには、古傷になっていない切り傷があった。
マドカ
どうして何年も前の傷がそのままなんですか?
イザヤ
詳しいことは俺もよく知らないが、とある毒を塗られたらしい。
イザヤ
もう何年も前のことだし、塗られた時に気絶したせいでよく覚えていないんだ。
霽月
つまり、イザヤはゲントウや冬凪研究所にはあまりいい思い出が無いってことだよね。
イザヤ
あぁ。正直顔すら見たくないな。
マドカ
あの男、凄まじい嫌われっぷりですね。
スイ
まぁ、自分の体で実験してきた男だからね……。
マドカ
先輩が被害に遭いそうになったらあたしが守りますからね!
スイ
あ、うん、ありがとう……?
霽月
ゲントウはこれからどうするんだろう。
霽月
また学校を襲撃する可能性だってあるよね?
スイ
油断大敵ってことですね……。
イザヤ
スイとマドカは気を付けて生活してくれ。
イザヤ
俺と霽月は……冬凪研究所について調べるか。
霽月
……あたしも?
イザヤ
……お前、今朝昼晩3食寝床付きなんだぞ。
文句を言わずに働け。
文句を言わずに働け。
霽月
はーい。分かってるよ。
イザヤ
……それじゃあ、そういうことでいいか?
イザヤ
余裕があったらスイとマドカも研究所について探ってくれると助かる。
マドカ
分かりました。
マドカ
先輩とならどんなことでもしますので!
スイ
あはは……頑張ります。
ガチャッ
話が終わったスイとマドカは診療所から出た。
すると───
ゲントウ
イザヤー! 居るか〜?
会いに来てやったぞ〜。
会いに来てやったぞ〜。
イザヤ
は……!?
霽月
噂をすれば、ってやつ?
ゲントウ
オレの噂でもしてたのか?
イザヤ
……何の用だ。
ゲントウ
いいや?
ただ挨拶をしに来ただけだ。
ただ挨拶をしに来ただけだ。
ゲントウはそう言いイザヤに手を差し出すが、 イザヤはその手を握ることは無く、ゲントウを睨んでいた。
イザヤ
……騙されないぞ。
どうせ手に毒でも塗ってあるんだろう。
どうせ手に毒でも塗ってあるんだろう。
ゲントウ
チッ、バレちまったもんはしゃーねぇな。
ゲントウ
失くした実験体No.0274の記録書が見当たらないんだ。
ゲントウ
ここにあると聞いたんだが、本当か?
霽月
記録書……。
イザヤ
あれは俺についての記録書だろう。
俺が持っててもいいんじゃないか?
俺が持っててもいいんじゃないか?
イザヤ
ましてやあんなことがあったんだ、簡単にお前達の手に渡らせたくない。
ゲントウ
はぁ……。
ゲントウ
もういい。
お前のことはよく分かった。
お前のことはよく分かった。
すると、ゲントウはイザヤに手をかざした。 そして───
グッ───
かざした手を固く閉じた。
ゲントウが手を閉じると、イザヤは突然苦しみだした。 どうやら頬の傷が痛むようで、霽月は慌てて駆け寄った。
イザヤ
っ……!
霽月
イザヤ───!?
ゲントウ
さぁ、早く実験体No.0274の記録書を出せ。
イザヤ
……分かった。
イザヤ
記録書は資料室にある。
霽月、案内してやれ……。
霽月、案内してやれ……。
霽月
……分かった。
ゲントウ
最初からそうしていれば良かったんだ。
ゲントウ
どうせお前達は負けるというのに、無駄な抵抗をするからだ。
ゲントウ
分かったか? オレの方が強いんだ。
イザヤ
……。
ゲントウ
さ、そこの嬢ちゃん。
早く資料室まで案内してくれ。
早く資料室まで案内してくれ。
霽月
……分かった。資料室はこっち。
ドサッ
ゲントウが手を戻すと、イザヤは床に倒れ込んでしまった。
次回:2025年3月11日