野乃子
私はそう言うと、先ほどまでの静寂がまるで嘘のように拍手喝采が鳴り響いた。
私たちはこれからもライブをする。
彼のためにも。ファンのためにも。そして自分たちの為にも。
だってそれが生きている私たちがやれる大切な宗司のためにやってやれる唯一の手段なのだから。
こうして私たちの復活ライブは終わり、再スタートの幕を開けただった。
だってあの頃、私たちは墓で誓ったから。
私たちは解散ライブ後、本当に彼の墓に行った。
静寂な空気の中で静かに漂う線香の煙。墓にそびえ立つ花がある。
手を合わせる前に夏下さんが彼の墓に声をかける。
夏下
その言葉を発し終えた直後だった。
風が強く吹き上げられ、花びらが揺れる。
宗治
風と共に吹かれた声は宗司の声だった。
夏下
川根
岩井
そうだよね、解散ライブで解散するって言ったから。復活なんて出来ないよね。
その時はそう思っていた。
しかし彼らの答えは違った。その意志を夏下さんの口から聞かされた。
夏下
私を見つめるメンバー三人の男たち。
その顔は笑顔で私の決意で復活してもそのまま離れ離れになったとしてもどちらを選択しても責めようとしないような優しい笑顔だった。
私はその決意を決めていた。
力強く首を縦に振る。
夏下
岩井
野乃子
私がそう言うと、夏下さんの耳が少し赤く染まる。
夏下
その声と共に私たちは目を閉じて自分の両手を合わせて復活することを誓ったのだ。
そして今に至るのだ。
またどこかで静かに風が吹きあげてきそうだ。
その風と共に彼の声がまた聞こえてきそうだ。
私たちはその声が聞けることに恐怖や不安はない。
むしろ聞きたいという楽しみの方が私たちの感情を埋め尽くしているのである。
そんなことを考えながら、今日もまたどこかで私はメンバーと共にライブを行っている。
~完~








