月は薄く、雲の向こうでぼんやりと光を放っていた
蝶屋敷の中庭に、芙梛の姿があった
誰も見ていないその空間で 彼女はただ一人、空を見上げていた
ふいに、琵琶の音と共に落とされる
呼ばれたのだと、すぐに分かった
彼女は深く息を吸い、歪んだ空間に足を下ろす
そこにいたのは、無惨
血に染ったような紅い瞳で、彼女を見つめる
鬼 舞 辻
蓮 華
鬼 舞 辻
鬼 舞 辻
鬼 舞 辻
鬼 舞 辻
蓮 華
蓮 華
鬼 舞 辻
蓮 華
蓮華の声音に、揺らぎはなかった
蓮 華
蓮 華
無惨の眉が僅かに揺れた
その瞬間、空気が捻れ、蓮華の体に強烈な圧がかかる
骨の軋む音が聞こえる
視界が霞む
鬼 舞 辻
鬼 舞 辻
鬼 舞 辻
蓮 華
息も絶え絶えに、蓮華は応えた
再び蝶屋敷へ戻る頃には 彼女の指先の震えは止まっていた
笑顔を貼り付け
水を汲み
訓練を手伝い
普通の少女を演じ続けた
炭治郎と禰豆子が中庭で遊んでいるのを見つけたとき
彼女の足が止まる
芙 梛
芙 梛
禰豆子がふわりと笑って、芙梛の袖を引く
禰 豆 子
禰 豆 子
芙 梛
芙梛は微笑み返した
この笑顔の裏には、命令がある
無惨の声がある
圧がある
いま私は、この子の命を握っているんだ
私は自分の手で、 禰豆子ちゃんを無惨に渡すことが出来るのか?
芙 梛
芙 梛
そう声を掛けかけて、彼女は思いとどまった
芙 梛
鬼 でありながら、命令 よりも優先したい想いがある
人間 として過ごした日々が、 心に棘のように刺さっている
その夜
芙梛は、自分の部屋に戻って呟いた
芙 梛
芙 梛
勿論、答えは返ってはこない
けれど、その問いを投げた時点で 彼女の中ではもう答えが出ていたのかもしれない
逃げずに、選ぶときが来たのだと
コメント
2件
うわぁぁぁぁぁ⁉️最高‼️続きが楽しみ楽しみ楽しみ楽しみ楽しみ楽しみ楽しみ楽しみ楽しみにしてる‼️(((o(*゚∀゚*)o)))❤️🍼❤️🍼❤️🍼