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会社終わりにデートに誘われた

夕日と海がきれいな場所があると。 それを聞いたときもう分かってた。

私と彼が初めて会った場所。 おしゃれなカフェが近くにあって そこから見える景色が大好きだった。

彼が私の会社まで迎えに来てくれた。

私の前まで来て、 ガチャ、と音を立てて車の扉を開けてくれた。

どーぞ、お姫様

そう言って彼は優しく ふっ、 と笑いかけてくれた

その余裕の笑み、 性格は少し変わったけど 大人になっても変わらない優しい声、

全部、ぜーんぶ、 大好き。

私は笑いながら

ふふっ、笑、どーも。

そう返した。

私もすっかり大人になっちゃったね

…だな

冴も大人になってからすごく変わったよね〜

まぁ、あのときの自分に比べたら

今のが断然、紬のこと好きだからな

そういうところは変わってないのね笑

冴と付き合ってからそういう恥ずかしいこと

ズバズバ言われて私の心臓持たなかったの覚えてる笑

あの顔が一瞬でタコみてぇになっていくのは可愛かったけどな

もうっ!笑

そうやって他愛のない話をして あー、私今幸せだなって、 思ってた。

ドンッッッッ____

いきなり鈍い音が車内を揺らした。 なにかがぶつかった  その衝撃で私と冴は車から放り出された。

ッッ、

なに、今の、……

……、!

ッッッッ!!?

私の目に、衝撃的な光景が写りこんだ その光景を理解するのに数分かかった

彼の頭部と腹部から赤い液体がダラダラと流れているのだ。

ッッッ、

いやッ、キャァァァァァッッ

仰向けになってピクリともせず ただただ雨にうたれ、血を流している彼を見て 確認しなくても分かった。

___ああ、死んだ。___

私の頬に涙がつたっていくのが分かった。

ひどい、ひどすぎる。 12本の薔薇、 私はその意味をやっと理解した

私の妻になってください。

なんで。 神様、私、なにか悪いことしましたか? 大好きな人にプロポーズされる直前に、 最大の幸せを目の前に、 彼を殺されなきゃいけないくらい悪いこと、 私、しましたか?

返してください、 返してください。

私は彼の隣にいれるだけでいいんです。 会社終わりに初めて会ったあの場所で、 あのときは、お互いの思いがすれ違ったりして 大変だったね、 それでも今はこうやって一緒にいれて良かったね、って。

2人で話して、休日には冴と私のあの家で リビングでコーヒーなんか飲みながらくつろぐ。 それだけでいいんです。 それ以上はなにも求めません。

ただ、それだけで、……

う゛ッ、ぅぅ、

もう雨なのか涙なのかも分からない水が 私の頬を濡らす。

もっと彼と話をしておけばよかった、 もっと彼との時間を増やしておけばよかった、

___もしもこの思いが届くのならば、

もう一度あなたに会いたい

もう一度話をしたい

そう神様に願い、私は息を引き取った

薔薇と君の匂いに包まれて

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