無月
無月
無月
第1章 きみとの契約
青
指先で肩を叩かれた瞬間からもう 苛立ちが湧いていた。
青
後ろの席の青ちゃんが笑いの混じった声で僕を呼ぶ
振り返るとまず目に飛び込んできたのは青ちゃんのにやけ顔ではなくスマホ画面だった
青
画面を見る前からそこに写っているものはわかっていた。 今日青ちゃんが興奮気味に桃くんに自慢していたのを見かけたから。
青
黄
青ちゃんはドヤァと効果音がつきそうな顔をしていた 僕は口元がひきつりそうになるのをこらえ驚いた表情を作る
黄
青
青
青ちゃんが嬉しそうに掲げていたのは新作のゲーム機の写真 ゲームが大好きな青くんが以前から欲しいと繰り返していたなかなか手に入らないものだった
青
黄
青
黄
熱弁する青ちゃんに曖昧な返事をして 僕はおもむろに立ち上がりカバンを肩にかけた
黄
青
話を遮られたことに気を悪くすることも無く青ちゃんはいい感じの笑顔でじゃあね!と手を振って帰って行った
その手に握られていたスマホが最新機種になっていることにその時に気づいた。 先週までは違ったはずだったのに…
いつ変えたのだろう。 昨日が誕生日と言っていたからその時だろうか 先程見せられたピカピカのゲーム機より、何故か、 そちらの方が頭に引っかかった
青ちゃんはそれについては何も言わなかった まるで取るに足りないみたいに。
実際今の青ちゃんはゲーム機のことで頭がいっぱいでスマホを新しくしたことなんてどうでもよかったのだろう
青ちゃんにとっては
きっと
それ程度のことだったんだろうな
女子A
下駄箱で靴をはきかえていると、後ろから女子のそんな声が聞こえた
女子B
女子B
女子A
女子B
女子A
女子B
耳に入ってくる、その華やいだ声に思わず顔が歪む 先程の青ちゃんに対する苛立ちとも合わさって、胸の奥でどす黒い感情が膨らむのを感じた
いいなぁ、お前らは 心の中で吐き捨てる。
履き古したスニーカーのかかと乱暴にふみ、早足で下駄箱を離れる。 これ以上彼女達の声を聞きたくなかった
何の迷いもなく、バイト代を自分のために使うという、そんな自分以外の【当たり前】をこれ以上突きつけられたくなかった
外に出ると雨が降っていた。 念のため持ってきていたビニール傘をさし、黒い雲が多く込める空の下を歩き出す
普段より早送りの周りの景色につられるよう、 自然と早足になった
無月
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