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セミ
うだるような真夏の午後。セミの鳴き声が頭の中まで染み込んでくる。 窓際のカーテンが、弱々しく揺れていた。
にゃぽん
にゃぽんは、床の上に寝転びながら天井をぼんやりと見つめていた。
最近はずっとこの調子。毎日同じ景色、同じ音、同じ空気。
刺激が欲しい。心が踊るような何か。そう思って家を飛び出した。
けれど、外の世界も、思っていたほどドラマチックじゃなかった。 太陽は容赦なく照りつけ、額から汗が止まらない。
歩き回った末に、結局にゃぽんは家に帰ってきた。
にゃぽん
にゃぽん
ドアを開けた瞬間、ふと玄関に目をやると、革靴があった。黒くて、どこか威圧感のあるそれは、日本のものだ。
にゃぽん
嫌な予感。いや、ワクワク。にゃぽんの中で、ふたつの感情がせめぎ合う。 だが、好奇心が勝った。
にゃぽん
忍び足で廊下を抜け、普段使われていない和室の前まで来る。 そっと襖の隙間を覗くと、そこには日本の姿があった。
彼は押し入れから何かを取り出し、じっと見つめている。 口元で何かを呟いていたが、言葉までは聞き取れなかった。
その表情は、いつもの優しい兄のものではない。どこか、苦しそうで、悲しげで――。
日本
にゃぽん
見てはいけないものを見てしまった。 にゃぽんは反射的に後ずさりし、そのまま外に飛び出した。
にゃぽん
にゃぽん
しばらくして、日本が家を出たのを確認すると、にゃぽんは急いで家に戻った。
にゃぽん
押し入れを開けると、驚くほどものに溢れていた。古びた箱、布に包まれた何か、よくわからない書物。
にゃぽん
汗をかきながらかき分け、やっとのことで見つけ出した。
一つの木箱。埃をかぶっていて、金具はすでに錆びていた。 震える手で蓋を開けると、中には…
にゃぽん
ボロボロになった日本刀と、巻物状の紙が入っていた。
日本刀はすでに使い古され、刃も鈍っている。それでも、にゃぽんには美しく見えた。
にゃぽん
軽く振ってみる。音はしない。ただ、心が少しだけ弾んだ。
次に手に取ったのは、家系図らしき巻物だった。
慎重に広げてみると、「平安」「鎌倉」「江戸」――見覚えのある名前が並んでいた。
にゃぽん
にゃぽん
ある一点に差し掛かったとき、にゃぽんの動きが止まる。
にゃぽん
日本とにゃぽんの“上”、つまり父にあたる国が、濃い墨で塗りつぶされていたのだ。
そこには名前が記されていたが、読めなくなっていた。
にゃぽん
でも、もしこの家系図が本物なら、江戸は“祖父”に当たる。
じゃあ、“父”は? なぜ、それを隠さなければならなかったのか?
にゃぽん
そう呟いたとき、外で風鈴の音が鳴った。 夏の風に混じって、遠くでセミが鳴いている。
にゃぽんの胸に、確かな違和感と――
かすかな、恐怖が芽生えた。
(つづく)