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夕方の陽射しが、和室の障子越しに差し込んでいた。
押し入れを開けっぱなしのまま、にゃぽんは正座したままじっと家系図を見つめていた。
にゃぽん
あの巻物と、日本刀。確かに見つけたときはドキドキした。
でも、そのあとに押し寄せてきた感情は――恐怖だった。
にゃぽん
その考えが頭を離れない。
怒るなんて、滅多にしない人なのに。でも――このことに関しては、違う気がした。
にゃぽんは震える手で家系図と刀を布で包み、押し入れの奥に隠し直した。
にゃぽん
そういうことにしてしまえば、楽になれる。
でも、脳裏に浮かぶ“塗り潰された父”の文字が、それを許してくれなかった。
にゃぽん
にゃぽん
汗でシャツが背中に張り付いていた。
にゃぽんは町外れにある、とある国の家へと、走っていた。
にゃぽん
住宅街を抜け、坂道を登る。
坂道の先にあるマンション。アジアンテイストな風鈴がどこか異国感を演出している。
にゃぽん
ピンポーンピンポーンピンポーン
インターホンを連打。指が赤くなるくらい押しまくった。
???
ガチャリ、とドアが開く。
台湾
パイナップル模様のエプロン姿の台湾が現れた。
いつもの柔らかな笑顔――のはずが、その顔を見た瞬間、にゃぽんはもう堪えられなかった。
にゃぽん
部屋に上がり込むや否や、にゃぽんはテーブルに座って、ありったけのことを話した。
押し入れ、刀、家系図、父の謎……。
台湾
台湾の顔から、スーッと血の気が引いたのが分かった。
瞬きが少なくなり、口がわずかに開いたまま動かなくなる。
にゃぽん
台湾はすぐに笑った――でもそれは明らかに“作った笑顔”だった。
台湾
台湾
――笑ってる。でも、目の奥が笑ってない。
にゃぽん
にゃぽんは身を乗り出した。
台湾の手が、ぎゅっと膝の上の布を握りしめている。
台湾
その一言は、声になっていなかった。目が、そう訴えていた。
涙がこぼれそうなほど、必死な表情だった。
にゃぽん
重苦しい空気の中で、風鈴の音だけがカラン、と響いていた。
夜――。
日本は、いつものように静かに家に帰ってきた。
にゃぽんは、玄関に座って待っていた。背筋を伸ばして、目だけは真剣に。
にゃぽん
日本
靴を脱ぎながら、日本が少しだけ不思議そうな顔をした。
にゃぽんは、緊張で手が汗ばんでいたけれど、なんとか笑った。
にゃぽん
日本の動きが止まった。
にゃぽん
日本
静寂が、空間を支配した。
日本
にゃぽん
少し声が大きくなってしまった。
日本の目が、ほんの一瞬だけ鋭く光った気がした。
だがすぐに、柔らかな笑みに戻る。
日本
にゃぽんは、もう一度何か言いたかったけど、言葉が出てこなかった。
日本の見せた笑顔も――やっぱり、目が笑ってなかった。
(つづく)