優香里
私に対して暴言を吐いた母は
優香里
一転して私を求めるような言い方もしたけど
優香里
結局また暴言を吐いて
最終的には私のことを完全に拒絶し始めた
でもそのお陰で
裁判所はいっちゃん達が養親になることを認め
次の日曜日までには手続きが全て終わり
私は二人と一緒に暮らせることが決まった
大好きな二人とずっと一緒にいられる
もう今までみたいに
帰って行く二人の背中を見なくていい
これからは
私のところに帰ってきてくれる
郁美
拓郎
いっちゃんもたっくんも涙を堪えきれず
お庭の片隅で抱き合って泣いた
私も嬉しくて
嬉しくて嬉しくて
こんなに幸せなことはないと
幼いながらも思っていた
帰る時間になって
拓郎
郁美
美結
三人でまた指切りをした
たぶんこれが
家族になる前の最後の指切り
車が発進して
窓からいっちゃんが顔を出す
郁美
私はまた小さく手を振って
建物の中に入った
樋口(職員)
樋口(職員)
沢村(職員)
樋口(職員)
沢村(職員)
沢村(職員)
樋口(職員)
樋口(職員)
沢村(職員)
この時、私はまだ四歳
普通なら保育園や幼稚園などに通い
遊んだり歌を習ったりするのかもしれない
でもなぜか母はそれを許さず
父が亡くなる前からずっと私を家に閉じ込め
その頃は母の態度も普通だったが
近所の人から"なぜ保育園に通わせないのか"を問われ
優香里
そんなことを言っていたらしい
その影響から私は未だに字を書くことができず
殆どテレビも見たことがなかったため
世間に溢れている童謡と言う歌を知らなかった
この児童相談所でも
他の子が何気なく口ずさんだ歌がわからなくて
好奇の目で見られることがあった
そもそもテレビを見る習慣がなく
優香里
いつもそう言われていたため
相談所でもテレビには近寄ることもせず
余計に回りの視線を集めた
父が亡くなってから母の行動はエスカレートして
暴力を振るわれることはなかったものの
食事を与えてくれなくなり
声をかけても
優香里
怒鳴られるだけになった
その母はもういない
これからはいっちゃんとたっくんと一緒にいられる
楽しいことがたくさんある
そんな思いでいっぱいだった
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ここまで一気読みしました。 もう途中で胸糞悪すぎて読むのやめようとしましたが、 あたたかい人たちにやっと抱きしめてもらえて良かったです。