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若井のGlareを浴びたのは2回目だった。
目の前に広がる目を覆いたくなる光景に涙が溢れてくる。 目の前で震えている元貴の側に今すぐにでも駆け寄って、もう大丈夫だと抱きしめてあげたかったのに、身体を動かす事が出来ない自分が情けなくて堪らなかった。
初めて若井のGlareを浴びたのは、元貴がDomでPlayしてくれそうな人のあてがあると言い、その時は誰かは明かさなかったが、その人とPlayをしに行った日。 元貴は大丈夫だと言っていたけど、心配だった僕は、当日連絡するからと伝えていた。 そして、時間的にそろそろ終わって、家に帰ってる頃かと思い、電話をかけた。 すると、電話に出たのは思いもよらない人物だった。 その人は、あまり会話もすること無く、今から僕の家に行くと言って電話を切った。
数十分後、チャイムが鳴り、玄関を開けたら、無表情の若井が立っていて、普段は絶対そんな事をしないのに、招く間もなくズカズカと部屋に入ってきた若井に動揺しつつも、自分の家なのに若井の後をついていく形でリビングに行き、既にソファーにも垂れている若井の隣に腰を下ろした。
若井が元貴の電話を出た時から、元貴に何かあったのは予想はついていたけど、それは僕が思ってたより遥かに悪いもので、何をどう言っていいのか分からず、言葉に詰まってしまった。 そんな僕の様子に少しイラつきながら、更に話を続け、なぜ自分だけ何も聞かされてなかったのかと言うので、その事については、病院での元貴とのやり取りや、若井には秘密にして欲しいとお願いされていた事を説明した。 若井は誰よりも長く隣に居た自分が何も気付けなかった事を悔しく思ったのか、なぜ自分には知られたくなったのか分からないと思ったのか、苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、僕の話を最後まで何も言わずに聞いていた。 そして、ぼくの話が終わると、これからは自分が元貴とPlayをするからと、真っ直ぐ僕の目を見て言ってきた。 僕は若井のその目を見て、バレているんだと思った...
若井が元貴の事を好きだと言う事は、もうずっと前から分かっていた。 だって、元貴を見る目が僕と同じだったから。 元貴がSubだと気付き、若井には知られたくないと言った時、元貴自身も気付いていない元貴の気持ちに何となくだけど気付いてしまった。 だけど、僕は元貴の若井には知られたくないと言う気持ちを利用して、一つだけ嘘をついた。 僕はSwitchだけど、Sub寄りではなくてDom寄りな事。 だから、元貴とのPlayが上手くいかなかったのは、Sub寄りだからとかそんな理由ではない。 きっと、元貴が求めてたのは若井だったからだ...。 若井の目はぼくの元貴への想いや浅ましさを見透かすような目で、何も言えなくなってしまった。 元貴の事を本当に考えるなら、初めから元貴を説得して若井に託すべきだった。 そうしたら、その日の出来事は起こらなかっただろう...。 それでも、そのまま若井に託すのは悔しくて、若井が帰る寸前に、“元貴を傷付けないって約束出来るの?”と問いかけた。 すると、若井は僕を見て“それを涼ちゃんが言う権利は無い”と返した。 その瞬間、全身が震え、ぼくはその場に座り込んでしまった。 若井はずっと僕に怒っていたのに、我慢をしてくれていた。 それなのに、それを僕のつまらない意地で露わにしてしまった。 若井の言う通りだった。 僕がそれを言う権利なんかある訳ない。 僕の独りよがりな言動で、結果元貴を傷付けてしまったのだから。
若井は震える僕を無視して、玄関を出る寸前で、“おれは元貴を絶対に傷付けない”そう言った。
そう、言ったのに...!
藤澤
僕は、横を通り過ぎた若井を目線で追い、睨みつけた。
藤澤
一瞬ビクッと肩を震わせた若井にそう告げるが、これは若井に対してだけではなく、自分自身にも言っているものだった。
若井
そう言って、この場から元貴連れて去っていく若井。
本当は、今だって僕が元貴の側に居れたらと思っている。 それでも、その願いが叶う事はないから、僕はグッと心を殺して、それ以上若井の足を止めることなく見送った...。