一覧ページ

天光獄死

第2話 - 天獄学園の案内

301

2025年11月07日

#うちの子

#自創作

#一次創作

#ファンタジー

#コメディ

#シリアス

黒Tさん。

天使が先頭で歩き、広い廊下を軽い足取りで進んでいく。

天使

はいはーい、こっちこっち☆

天使

ここは、お腹が空いた時の味方、

天使

“暁のホール”だよ！

扉を開けると、光が溢れた。ステンドグラスの天井から差す陽光が、床に虹を描く。

天使

ここのご飯、すっごく美味しいんだ〜！

天使

シェフも、すごいんだよ！

天使

天国の味も、地獄の味も…
全部知ってるんだって！

小さく肩をすくめて

天使

でもね…時々、地獄みたいに辛〜い
日替わりカレーが出るから注意してね！

次の瞬間、天使は人差し指を立て、ウインクをして言う。

天使

…あっ！ちなみに、悪魔さんがその日替わりカレーが大好物だから、もしそのカレーを見つけたら悪魔さんに言ってあげてね！

天使

多分、すっごく嬉しそうな顔するから！

隣にいた悪魔は言う

悪魔

おい天使！それはわざわざ言わなくてよいだろう！

みんなは思わず笑った。

悪魔

ったく、貴様ら…

天使

てことで、次ー！

天使は、またルンルンと軽い足で進んでいく。

後ろに歩く陽鞠が、そっとヘラの方へ体を向ける。

日向陽鞠

それにしても…
さっきは、大変だったね、ヘラくん…

佐藤ヘラ

……はい。

…ヘラは少し苦笑した。

佐藤ヘラ

…でも、俺が英雄になって、

佐藤ヘラ

平和になれば……

佐藤ヘラ

みんな、笑えるようになるはずです。

その言葉に、陽鞠は小さく目を丸くした後、

ふわっと笑う。

日向陽鞠

ヘラくん、ほんとすごいよねー！

日向陽鞠

なんというか…

日向陽鞠

いきなりなことを押し付けられたのに、受け入れるというかさ。

佐藤ヘラ

いえ…俺なんか、まだまだですよ。

佐藤ヘラ

ただ……放っておけなかっただけです。

日向陽鞠

…あははっ、優しいんだね。

日向陽鞠

ヘラくんのそういうとこ、
アタシ好きだなー！

佐藤ヘラ

えっ…？

佐藤ヘラ

あ、ありがとうございます……！

ヘラの耳がほんのり赤くなる。

陽鞠は、イタズラっぽく笑いながら、前を歩く天使の背中を見た。

日向陽鞠

でもさ〜、あの天使さん、ちょっと信用できるような……できないような？

佐藤ヘラ

…俺も、少しそう思います。

佐藤ヘラ

けど……今は、信じてみたいです。

日向陽鞠

……そっか。

陽鞠が小さく頷いたその時、前方の天使がくるりと振り返る。

天使

はーい、次は…甘い香りが漂う、癒しの空間保健室！

天使

天使の羽根の毛でできた布団があるんだ！

天使

…あ、ウチの羽根ってわけではないよ？

天使

そして！

天使

その保健室の隣にあるのが…職員室！まだ紹介していないけど、色んな先生がいるよ！

天使

…で、職員室の向かい側にあるのが学園長室！天使ちゃんの特別なお部屋☆

興味深そうに聞く和味。

古川和味

ふーん、そうなんだな…。

興味をもってくれたと嬉しそうにする天使。

天使

お！？遂に、和味くんが興味をもってくれたんだね！

天使

天使ちゃん、感激☆

古川和味

…はっ！？ちげーし！！

古川和味

ただ、そうなんだなって思っただけだし…！

天使

…そっか。まあ、いっか！次！

天使

少し廊下を歩くと…化学室があります！

天使

時に実験とかしたりとか、
色々とできるよ☆

天使

…あ、実験とか失敗したら、
死ぬ可能性があるから要注意☆

輪銅弥夜

ひぇっ！？し、死ぬ可能性とか、
あるんですかぁ…？

天使

まあまあ、そんなに怯えないで！
“滅多に”ないから！

桶結琴水

滅多にって…。

疑うように天使を見た琴水。

天使

それじゃー！一階は終えて、
二階に行こっか！

天使

本当なら、エレベーターに乗ろうと思ってたけど〜…

天使

階段に慣れてもらいたいから、今回は階段で行きまーす！

悪魔

えー…。

悪魔

嫌なんじゃが…？

天使

悪魔さんは我慢して！

天使

ほらほら〜登って登って！

階段には、マットが敷かれていた。

そして、階段ももちろん、キラキラと光っていた。

日向陽鞠

階段もキラキラしてる…！
アタシ、すっごく幸せなんだけど〜！？

陽鞠は瞳をキラキラとさせながらヘラの方に顔を向けた。

ヘラは、そんな陽鞠を見て、微笑ましそうに笑った。

佐藤ヘラ

…ふふ、良かったですね。

天使

二階に到着〜！で、階段の右側に行けば…教室がありまーす！

天使

一組、二組、三組って分かれているよ！君たちは、三組に分類されるかな！

天使

教室は、二箇所あって…普通教室は普通の授業を受けたいな〜って時に受けれるよ！もう一つは…三階にある、教室。特別教室って言って、“普段とは違うこと”をするよ！

佐藤ヘラ

天使さん、質問…いいですか？

ヘラが手を挙げる。

天使

いいね〜ヘラくん☆質問どうぞ！

佐藤ヘラ

…特別教室のことについてですが、
“普段とは違うこと”って、一体…？

天使

いい質問だね☆
でもね、それはその時に話すよ！

佐藤ヘラ

あっ分かりました。

天使

ちなみに〜、普通教室の反対側には…

天使

資料室と図書室があるよ！
静かで、時間がゆっくりと進むらしい！

すると、天使が悪魔に尋ねる。

天使

ねえねえ悪魔さん、あなたは本が好き？

悪魔

わしは、本が嫌いじゃ。

シーンと静まる空間。

天使

それじゃ、次に三階に行こっか！
ちょうど、特別教室について言ったし☆

さっき悪魔が言った言葉を無かったことにした天使。

悪魔

おい貴様──

天使

みなさーん！階段登るの頑張ってね〜☆

天使

はーい！三階だよ☆

天使

さっき言った通り…特別教室があるよ！

天使

この特別教室では、
普通教室みたいなことは学ばないんだ！

天使

…簡単に言えば、自分の個性に合わせた授業をやるってことかな？あ、ごくたまに天界語を学べるよ☆

佐藤ヘラ

天界…語…？？

ヘラは、疑問をもつ。

古川和味

天界語って、なんだよ？

そう和味が言う。

天使

天界語は天界語だよ！

古川和味

……。

諦めたかのように黙る和味。

天使

じゃ、このまま奥行こっか！

天使

ここが訓練場、“暁原”。

天使

広いでしょ！天使ちゃんが思うがままに飛べるように作ったようなものなんだ！

コソッと悪魔は呟く

悪魔

まあ作り途中、何度も飛んで…何度も何度もぶつけてたがな…

佐藤ヘラ

えっそうなんですか？

悪魔

そうじゃ。

天使

ちょっと悪魔さーん！

天使

それは内緒だよ！

悪魔

別にいいじゃろ、貴様だって…わしについて言ってるじゃろ。

天使

もー！

天使

…まぁ、いいや！

天使

次言ったら、日替わりカレー食べさせないようにしとくから！

悪魔

それはやめろ。

天使

気を取り直して！次は屋上だよ！

天使

屋上では、空や雲が間近で感じられる場所なんだ！

天使

夜になると、星が近くで見えて、とても綺麗だよ☆

日向陽鞠

屋上！すっご…っ！

陽鞠はまた目を輝かせた。

天使

…さて！そろそろ、
天獄学園の外も案内しようかな！

天使

あ、下る時はエレベーターに乗ろっか！

悪魔

じゃあ、元からエレベーター乗ればいいじゃろ…。

天使

はいはーい！みなさーん！外だよ、外☆

天使

まず最初に…グランド！訓練や運動会、
行事などに使われるよー！

天使

天界特有の浮遊リングで
飛行訓練もできる！

佐藤ヘラ

浮遊リング…？

またもや疑問をもつヘラ。

天使

空飛ぶ絨毯とか、
筋斗雲みたいなヤツかな！

天使

そして、あそこはプールがある光輪池！

天使

まず泳げるし…夜になると水面が光って、まるで星空を泳いでるみたいなんだ！

天使

今は水泳の授業じゃないから行けないけど、その時に行けば…みんなも気に入るはずだよ！

天使

次は、庭園！ふふっ、疲れたら“蒼花庭”においで。

天使

どんな季節でも花が咲いてる不思議な庭園だよ！

天使

夜には蛍が飛んで、ね？

天使

まるで星の中を歩いてるみたいなの！！

天使

ぜひとも、夜に訪れてみてね☆

天使

小動物と触れ合いたいなら、
“花籠”がオススメ！

天使

リスや小鳥、うさぎもいるんだ！

すると、ヘラは“小鳥”という言葉に胸が弾む。

佐藤ヘラ

小鳥…！

それを見た天使は、ニコッと笑った。

次の瞬間、天使は表情を元に戻し、言う。

天使

あと、一匹だけ…
お世話するのが大変な子もいるけど、

天使

それはまた今度話すね！

学園の白い回廊を歩きながら、天使はくるりと振り返って微笑む。

天使

さてさてぇ、ここからはみんなが
“寝泊まりするおうち”──つまり、
“寮”のご案内だよ！

羽を小さくはためかせながら、天使は手を叩く。

天使

天獄学園にはね、
それぞれの“心”や“花の性質”に合わせて、いくつかの寮があるんだー！

天使

まずは──

天使は指を一本立てて、ふわりと微笑む。

天使

アルムノア寮！ここはね、“静かに考える時間”を大事にする人が暮らす寮！

天使

白と灰色の建物でね、夜になると星の光が差し込むんだ。ひとりの時間が多いけど、そのぶん、心と向き合える場所なんだよ！

佐藤ヘラ

ほう…

天使

それから……

天使

じゃじゃんっ！

天使

ソレイユ寮！ここは、太陽みたいに明るい子たちの寮！

日向陽鞠

太陽……！！

天使

花言葉で言えば、“友情”“希望”“絆”かな！

天使

続いては──

天使

セラフィール寮！ここは“癒し”と“安らぎ”の寮。

天使

中庭には、夜になるとユウガオが咲く小さな温室があってね。そこに灯る光は、見ているだけで心が落ち着くの。

古川ゆう

ユウガオ……

天使

お次は、“雨の音が好きな子たちの場所”──プルウィア寮！

天使

静かで、ちょっぴりミステリアスな雰囲気。雨のガラス越しに見る景色が、本当に綺麗なんだ！

古川和味

…へぇ。

天使

風と旅立ちの寮、リベルタ寮もあるよー！

天使

風通しがよくて、外には花畑が広がってる。別れも、涙も、ちゃんと希望に変えられる子たちが集まるんだ。

佐藤ヘラ

いい寮ですね。

天使

そして、朝日に輝くエルピス寮！

天使は胸の前で手を広げて、太陽の光を受けるように笑う。

天使

“希望”と“誇り”を象徴する場所でね、毎朝ここから見る朝日はまるで世界の始まりみたいなんだ！

輪銅弥夜

なっ、なんだか…その、かっこいいというか…

天使

最後に──夜空を夢見るソムニア寮！

天使

夜になると廊下の床が星みたいに光るんだ。

天使

“夢”を信じる子が集う、静かな奇跡の寮なんだよ！

桶結琴水

夢を信じる…か。

天使は全員の顔を見回して、ふわりと羽を揺らす。

天使

──ね？　どの寮も、
“君たち自身”を写す鏡なんだよ。

天使

花のように違っていい。

天使

咲く場所も、色も、
香りも違うからこそ、美しい。

天使

だから、寮は“家”っていうより、
“もう一つの自分”なのかもしれないね♪

そう言って、天使は柔らかく笑った。その笑顔は、春風のように温かかった。

天使

さて！

天使は手を合わせる。

天使

案内は、これで終わり！

天使

…みんな、きっと歩き回って疲れたでしょ？

佐藤ヘラ

はい、少し…。

天使

だよね！じゃあ、
さっそく寮で休もうか！

天使

えーとね、陽鞠ちゃんと琴水ちゃんと弥夜ちゃんは、ソレイユ寮！

日向陽鞠

アタシ、ソレイユ寮！？太陽ってことでしょ？アタシにピッタリじゃーん！

桶結琴水

太陽…私に合うか、どうかね。

輪銅弥夜

キンセンカも一応、太陽ですし、その…私も合うというか…っ！！

天使

で、和味くんとゆうくんはセラフィール寮！

古川和味

ふーん、こいつと同じ寮か。

古川ゆう

…うん、同じ……。

天使

そして──ヘラくん！

佐藤ヘラ

あっはい！

天使

君は、アルムノア寮！！

佐藤ヘラ

なるほど、俺はアルムノア寮…

天使

そういえば…言い忘れていたんだけど！

佐藤ヘラ

…ん？

天使

この天獄学園…一組・二組・三組の生徒しかいないんだ〜！

天使

それぞれのクラスに六人ずつ、合わせて十八人！

天使

……不思議でしょ？でも、
ここではそれが“全員”なの。

佐藤ヘラ

……全員、ですか？

天使

そう！まあ、その中の四人が空に旅立っちゃったから、十四人だけどね！

古川和味

その四人って、誰だよ…。

天使

英雄達だよ。

そして、天使以外のみんなは黙り込む。

一同

……。

天使

…まあつまり〜、一組・二組・三組しかいないから、モブキャラのような生徒達は、いないってこと！

天使

そして、寮にも…他の一、二組と君たち三組しかいない！

すると、陽鞠が『はい！はーい！』って言いながら手を挙げる

日向陽鞠

天使さーん！アタシ、質問したいんだけど、いいー？

天使

はーい！質問どうぞ☆

日向陽鞠

思ったんだけど、アタシ達以外の生徒はなんの寮に住んでるの？

天使

うーんとね…

天使

プルウィア寮には兄妹二人が住んでいて…

天使

リベルタ寮には男女二人、

天使

エルピス寮は男子二人…

天使

ソムニア寮には、女子二人かな！

日向陽鞠

へぇー！じゃ、アルムノア寮…ソレイユ寮…セラフィール寮は？

天使

君ら三組かなぁ！

天使

あっでも…前に、
英雄の二人がソレイユ寮だったよ！

日向陽鞠

そうなんだ！？ありがとう！！

天使

ううん、いいよー！
いつでも質問してね☆

陽鞠は、話を終えたあと、ヘラの方に顔を向けて言う。

日向陽鞠

だって！ヘラくん！

佐藤ヘラ

…なるほど。

佐藤ヘラ

……ん？

ヘラは思った。

『あれ、俺だけ寮で一人…？』っと。

佐藤ヘラ

…あの天使さ──

天使

それじゃあ！それぞれの寮で、
ゆっくり休んでね！

天使

ご飯の時間になったら、
寮に鐘が鳴るはずだから…その時、
食堂の暁のホールに来てね！じゃ！

佐藤ヘラ

わっ、ちょっと！天使さん！
待ってください！俺は──

話の途中で、天使はいなくなっていた。

佐藤ヘラ

……

そして、気づいたら、周りのみんなは寮の中に入っていった。

佐藤ヘラ

一人の寮って…あまり聞かないような…。

佐藤ヘラ

まぁ、いっか。

佐藤ヘラ

寮に入ってみようかな。

ガチャ──と、扉を開ける。

佐藤ヘラ

なんだろう、落ち着くような…
落ち着かないような？

ヘラは、寮の中を見回すと、ベッドを見つけ、

真っ先にベッドに向かい、ゴロンと寝っ転がる。

佐藤ヘラ

……はぁ、なんか…

佐藤ヘラ

今日、色々とあったな。

佐藤ヘラ

目覚めたら、知らない場所だし、
知らない人とも出会うし、

佐藤ヘラ

いきなり…英雄にさせられたり……

佐藤ヘラ

──でも、これで…
俺が望む世の中になるならば…

佐藤ヘラ

俺は……

佐藤ヘラ

これでいいや。

小さな吐息を吐いて、独り言を呟く。

佐藤ヘラ

そういえば、本当に…

佐藤ヘラ

あの“黒い扉”は、なんだったんだろう。

佐藤ヘラ

……まぁ、知りたくはないけど。

ベッドから起き上がり、目を右に向けた。

そんな時──

佐藤ヘラ

……

佐藤ヘラ

…え。

あの“黒い扉”があった。

佐藤ヘラ

……な、なんで…？

ヘラの体が勝手に動き、

一歩…また一歩と黒い扉に近づいていた。

佐藤ヘラ

…ま、また…ドアノブに…っ

体が…勝手に動く。

ヘラは、顔に汗を垂らしていた。

今は、ヘラ一人。陽鞠はいない。

佐藤ヘラ

……っ

すると

カーンカーン！

佐藤ヘラ

──っ！？

鐘の音が鳴った。それに、目がいったヘラ。

そしてもう一度、黒い扉を見ようとする──が、

黒い扉は、消えていた。

佐藤ヘラ

…え？消えた？

佐藤ヘラ

……どこに？

頭の中が疑問だらけになった。

佐藤ヘラ

…と、とにかく……助かった…

ホッと安堵の溜息を吐く。

佐藤ヘラ

……そういえば、少しお腹空いたな…。

佐藤ヘラ

ちょうど、鐘の音が鳴ったし…
食堂に行ってみようかな。

佐藤ヘラ

…よし、行ってきます。

この作品はいかがでしたか？

301

7件

見るのが遅くなった…っっっっ！！！天使さんの笑顔や仕草が好きです。マジで寮のネーミングとかホント好きなんだよ…っっ！！！伏線かなって思う箇所を大事にして読みます!!!!

マジで要所要所に伏線が散りばめられている（気がする）一人の寮は楽そうだけどちょっと寂しそうだな… プルウィア寮の兄妹二人が気になってきたよ天使さんはマジでだんだん怪しく見えてきた

花のように違っていい、違うから美しい…なんてかっこいいことだ……！！！

黒Tさん。

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

天光獄死

第2話 - 天獄学園の案内

作者の他の作品すべて見る

#うちの子の新着小説
一覧

関連するタグ

天光獄死

第2話 - 天獄学園の案内

作者の他の作品すべて見る

#うちの子の新着小説一覧

関連するタグ

#うちの子の新着小説
一覧