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スタッフ
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そう言ってマネージャーに手渡されたのは、小さなVlog用カメラ。
俺と楓弥の“デート映像”を撮ってこいって。
自然体で、プライベートっぽく。
演技じゃないように見せることが目的。
だけど俺は――
演技じゃなくて、本気のまま、 楓弥との時間を残すつもりだった。
楓弥
楓弥が、ちょっとだけ上目遣いで俺を見てくる。
史記
史記
そう返すと、楓弥は照れたように視線をそらした。
楓弥
その反応が、可愛すぎて。
俺の心臓がまた跳ねた。
水族館の中は、青い光に包まれてて、時々ふたりの影が重なって。
カメラを回しながら、 俺は楓弥の隣を歩いた。
楓弥の横顔を映すふりして、 ちょっとだけカメラをずらして―― その指先に、俺の指を重ねる。
楓弥
楓弥は驚いたみたいに、俺を見た。
でも、振りほどかれなかった。
そのまま、静かに指を絡める。
楓弥
史記
楓弥
楓弥はちょっと赤くなって、 でも指はしっかり握り返してくれた。
少しして、静かな場所を見つけて、俺たちは水槽の前に座った。
青い光が揺れる中で、俺はふと、 楓弥に向かって呟いた。
史記
史記
史記
楓弥
楓弥は、じっと俺の目を見てた。
迷いと、戸惑いと、でも――
たしかな熱が、その目にあった。
史記
そう言って録画を切ると、俺たちの間にあるのは“撮られるふたり”じゃなくて、“本当のふたり”だけになった。
その空気の中で、俺は――
楓弥に、少しだけ近づいた。
史記
ふみくんの声が少しだけ低くて、優しくて。
カメラの赤いランプがふっと消えるのを、俺は黙って見ていた。
さっきまで“見られてる”って意識があったのに、急に世界にふたりきりになった気がする。
鼓動の音が、耳の奥で跳ねる。
楓弥
俺がそう聞くと、 ふみくんは俺の方に体を向けた。
距離、近い。
目の前で、いつものふみくんの笑顔がちょっとだけ真剣で。
なんか、ドキッとして目をそらしそうになる。
でもそらせなかった。
史記
楓弥
わけがわからなかった。
だってこれは、 ドキュメンタリーの“撮影”で。
事務所の方針で。
ふたりの関係も、 あくまで“見せるため”のもので。
……そう思ってたはずなのに。
ふみくんの目は、そうじゃなかった。
ずるいくらい、まっすぐで。
俺の心を、まるごと見透かすみたいに見てくる。
楓弥
気づいたら、ぽつりと本音がこぼれてた。
楓弥
楓弥
楓弥
俺の言葉を聞いたふみくんは、驚いた顔をして、それからふっと笑った。
史記
楓弥
それが――
とんでもなく嬉しくて、怖かった。
楓弥
楓弥
史記
史記
一瞬、息が止まった。
言葉じゃなくて、ふみくんの目を見た瞬間に、心の奥が震えた。
楓弥
楓弥
ごまかせない。
目をそらしても、気づかないフリしても、もう遅い。
俺の胸の中は、ふみくんでいっぱいだ。
楓弥
小さくつぶやくと、ふみくんはちょっとだけ照れたように笑った。
俺はふみくんの手をそっと握り返した。
今はそれだけで、精一杯だった。
でもその手のあたたかさに――
俺は確かに、未来を信じたくなっていた。
楓弥が、俺の手を握り返してくれた。
それだけで、心臓が跳ね上がるくらい嬉しかった。
焦るな、って言い聞かせてたのに。
少しの沈黙すら、 今の俺には愛しく思えた。
史記
そう言うと、楓弥は恥ずかしそうに目をそらした。
でも、手は離さない。
史記
それが演技じゃなくて、 本音だったってこと。
あのまま“ビジネスカップル”を演じてるだけなら、俺はこんな風に心を預けたりできなかった。
史記
史記
史記
楓弥
楓弥は俺の方を見たまま、 小さくうなずいた。
史記
史記
楓弥
楓弥が遮るように言った。
その声が、少し震えてた。
楓弥
楓弥
楓弥
楓弥
言葉のひとつひとつが、俺の胸の奥にじんわり染み込んでいく。
史記
楓弥
そう言って、照れ隠しみたいに笑った顔が、めちゃくちゃ愛しかった。
気づいたら、 もう一度手を強く握ってた。
史記
史記
楓弥
史記
史記
その言葉に、楓弥は一瞬だけ驚いた顔をして、それから小さく笑った。
楓弥
史記
楓弥
史記
俺たちは笑いながら歩き出した。
繋いだ手は、もう緊張なんかしてなくて、ただあたたかくて、心地よかった。
たぶん、もう俺たち――
演技じゃなくて、ちゃんと恋してる。