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仮面

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仮面

1 - 仮面

♥

160

2019年05月25日

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宇野和彦

弱ったな

宇野和彦

あれがなきゃ稽古の続きが出来ねぇよ…

宇野は稽古中の舞台で使っていた小道具の仮面を紛失し、焦っていた。

宇垣秀治

宇垣秀治

大体、宇野は昔から杜撰なんだよ

宇垣秀治

だから色んな物がどんどんどっかにいっちまうんだ

宇野が演じる仮面の騎士と敵対する役を担う宇垣が「はぁ…」と溜め息を吐いた。

上村明日香

ねえ

上村明日香

あそこなら代わりの仮面があるかもしれないわよ?

荒木修一

荒木修一

明日香ちゃんが言ってるのは

荒木修一

閉鎖された倉庫のこと?

上村明日香

そうそう

上村明日香

そこで手頃な仮面があったらそれを代理に使えばいいじゃない?

宇野和彦

だけどあそこって閉鎖されて大分経ってるんだろ?

宇野和彦

きっと埃かぶってるぜ

宇垣秀治

このまま見付からずに稽古がままならないよりかマシだろ

宇垣に促され、宇野は渋々ながらも閉鎖された倉庫へ向かった。

数分後

宇野和彦

一応見付けたけど…

上村明日香

上村明日香

あら、いいじゃない!

荒木修一

うん

荒木修一

悪くはないな

宇野和彦

俺は微妙だけどなぁ…

宇野が見付けたのは、全く埃もかぶっていない、見た目は新品同様の綺麗な仮面だった。

ただ、宇野はどこか気に食わないのか、眉を寄せながら仮面を弄っていた。

宇垣秀治

宇野が気に食わなかろうと当分それを使うしかないぞ

宇垣秀治

元々、杜撰な管理なんかしてるお前が悪いんだから

宇野和彦

いちいち癇に障るな、お前も

火花を散らす宇野と宇垣の間に荒木は入り、なんとか2人を宥めた。

それから1週間後

荒木修一

どういう風の吹き回しだろう?

宇垣秀治

それがさっぱり

宇垣秀治

稽古が始まる前はあの仮面を付けるのを躊躇してたくせに

宇垣秀治

いざ一騎討ちの場面になると

宇垣秀治

人が変わったみたいに積極的に役になり切ってくるんだよ

上村明日香

確かに妙だけど

上村明日香

おかげで一騎討ちも迫力が出るしいいじゃないの

宇垣秀治

迫力はあったけど…

荒木修一

けど?

宇垣秀治

宇垣秀治

なんていうか

宇垣秀治

日に日に稽古中のあいつの顔色が悪くなってる気がしてさ

上村明日香

体調でも悪いのかしら?

宇垣秀治

さぁ…

荒木修一

心配だな

それから3日後

宇野和彦

…宇垣は?

荒木修一

全治1ヶ月らしい

宇野和彦

………

荒木修一

なぁ

荒木修一

本当に覚えてないのか?

宇野和彦

…本当に覚えてないんだよ

宇野和彦

逆に聞きたいんだけど

宇野和彦

本当に俺が宇垣を?

上村明日香

私が見た限りだと

上村明日香

一騎討ちの途中、宇野くんが突然激しく剣を振り回して

上村明日香

宇垣くんが戸惑いながら受け止めてたわ

上村明日香

で、結局宇垣くんの腕に直撃して今に至ったのよ

荒木修一

荒木修一

気のせいかもしれないけど

荒木修一

あの仮面をしてからお前、様子がおかしいぞ

上村明日香

あの仮面、最初は良さそうって思ってたけど

上村明日香

私もなんか気味が悪いわ…

上村明日香

宇野くんも相変わらず顔色が悪いし…

宇野和彦

それなんだけどさ

宇野和彦

変に思うかもしれないけど

宇野和彦

あの仮面を付けてる間って

宇野和彦

普段過ごしてる時よりも身体が身軽に感じたりやる気が起きたり

宇野和彦

なんか…恐怖心っていうものが湧いてこなかったりするんだよな

荒木修一

荒木修一

もうあの仮面は付けない方がいい

上村明日香

そうよ

上村明日香

最初は綺麗だなって思ってたけど

上村明日香

話を聞いてたら段々薄気味悪く感じてきたわ

上村明日香

元の倉庫に戻しましょう

宇野和彦

宇野和彦

無理だね

荒木修一

無理?

宇野和彦

監督があの仮面から漂う不気味さが際立ってるって

宇野和彦

他のを代用する気が全くないんだ

荒木修一

なら仕方がない

上村明日香

どうするの?

荒木修一

俺に任せてくれ

荒木修一

少し荒っぽくなるけどね

荒木の提案を聞いた2人(特に宇野)は驚いたが、

頑固な監督の意向を変える術は今のところこれしかないと、荒木は言った。

翌日の稽古にて…。

宮澤伊知郎

入院中の宇垣くんの代理として

宮澤伊知郎

宇野くんと対峙する役は急遽、荒木くんに決定した

宮澤伊知郎

彼自ら志願してね

宇垣の代理として荒木が一騎討ちで宇野の相手役を務めることになったと説明する宮澤監督。

宇野は例の仮面をはめる前に荒木に目配せし、示し合わせた行動の確認をした。

いざ、一騎討ちが始まると、宇野はシナリオとは違う動きを起こした。

宮澤監督は迫真の演技と興奮したが、

絶えず繰り出される宇野の攻撃を避けながら荒木は機会を伺っていた。

やがて…。

バキッ!

隙を突いた荒木は、宇野の顔面に左ストレートを思い切り繰り出した。

シナリオにはない予想外の攻撃を目の当たりにした監督及び劇団員は、唖然とした。

仮面は真ん中に亀裂が入ったが、背中から倒れた宇野はピクリとも動かない。

荒木修一

(しまった、つい力んじまった)

荒木は慌てて宇野を起こそうと近寄った。

が、その時だった。

荒木修一

うわっ!

突然起き上がった宇野が割れた仮面の口から荒木の手に噛み付き、指を食いちぎったのだ。

悲鳴を上げながらたじろいだ荒木だが、口の回りを血で赤く染めた仮面を身に付けた宇野が迫った。

荒木修一

畜生…!

荒木は痛みで顔を歪ませながら再び仮面に左ストレートを食らわせた。

宇野は少し硬直したが、再び動き出すと鞘に納めていた稽古とは別のサーベルを引き抜き、荒木の首筋に当てた。

冷たくて鋭利な感触…真剣だ。

スパッ

激しい血しぶき。

凄絶な舞台上に血まみれの物体が舞い上がり、稽古場は金切り声に包まれた。

2019.05.26 作

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コメント

2

ユーザー

やばい…もう仮面が怖い(´;ω;`)

ユーザー

…ハート100押してもうた

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