テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夜の静けさが、藤の花の香りとともに屋敷を包んでいた。
胡蝶邸の廊下を歩く足音はひとつ。
しのぶ
静かに部屋の障子が開かれた。そこにいたのは胡蝶しのぶ。
カナヲは縁側で膝を抱えていた。 髪が夜風に揺れている。
しのぶ
カナヲ
言葉は少ないけど、心は確かに揺れている。 しのぶはそんなカナヲの隣に静かに 座った。
しのぶ
カナヲ
しのぶ
カナヲ
その言葉に、しのぶの目が一瞬見開かれる。 そしてふっと優しい微笑みを浮かべた。
しのぶ
カナヲの肩に、そっとしのぶの手が触れる。 藤の香りがさらに濃くなった気がした。
カナヲ
しのぶ
言葉が、視線が、夜の中で交差する。 そして、しのぶはカナヲの頬に手を伸ばし――
しのぶ
そっと唇を重ねた。 カナヲの肩がびくりと震える。でも、逃げない。 それが答えだった
――その夜、初めて感情で動いたのはカナヲだった。 涙も笑顔も、自分の意思で。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!