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芙梛は、薬草の束を抱えて中庭にいた
朝露に濡れた蓮の花に指を這わせながら
何かを考えている
芙 梛
昨夜、炭治郎と話したときの胸の奥のざわつき
彼の言葉
『 鬼みたいな冷たさを感じない 』
が、まだ心に引っかかっていた
元気な声が飛んでくる
芙 梛
芙 梛
我 妻
我 妻
芙 梛
我 妻
芙 梛
芙 梛
芙 梛
にこっと笑って受け流す
でも...
芙 梛
芙 梛
そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎった
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その日の訓練中
伊之助が勢い余って飛び込んだ先、
芙梛の腕にかすり傷ができた
芙 梛
嘴 平
芙 梛
ピタッと空気が止まる
炭治郎が、芙梛の腕に目を向ける
血が傷口からすっと流れ出る
けれど...
それは、真っ赤ではなかった
ほんのり桃色がかったような
"人の血とは違う色"
竈 門
芙梛の動きが止まった
炭治郎の眉が寄る
竈 門
芙 梛
芙梛は、反射的に手で傷を隠した
芙 梛
芙 梛
竈 門
芙 梛
にこっと笑ってみせると、炭治郎の顔が真っ赤になった
芙 梛
でもその後も、炭治郎は黙ったまま
芙梛のことをじっと見ていた
その瞳が、どこか哀しげで
芙梛の心をひどく締めつけた
夜
芙梛は薬室の隅で、小さな瓶を抱えていた
中には、自分の血を薄めた液体
芙 梛
誰にも聞こえない声で呟く
芙 梛
芙 梛
芙梛の瞳に、ほんの一瞬、涙が滲んだ
芙 梛
芙 梛
扉の外で、訓練組の笑い声が聞こえた
人間たちの声
その中に、自分の声が混じることは
きっと永遠にない