最近、出張ばっかで忙しくて全然、悠二に会えていなかった。久しぶりに明日、出かけることになったんだ。早く明日になんないかなとかそんな幸せなことを考えながら、補助監督の運転する車で帰路に着いていた。
五条悟
夏油傑
五条悟
傑に、話しかけようとした時、俺の携帯から着信音が鳴った。それは俺の後輩の伏黒恵だった。正直嫌な予感がした。恵は、口数が少なく、プライベートで連絡が来ることなんてほぼない、だいたい俺が、連絡して付き合ってくれる感じだ。
だから、誰かが怪我したとか、そういうことしか思い当たる節がない。内心不安になりながらも、平常心を装い電話に出た。
五条悟
伏黒恵
伏黒恵
すると、今まで聞いたことの無い恵の切羽詰まった声が聞こえてきた。 何が起こっているのか理解できなかった。
五条悟
夏油傑
夏油傑
そう言い残し、車から出ると俺は、直ぐに高専に向かった。 高専に着くと相当泣いたのか、目が真っ赤になって嗚咽している野薔薇が医務室の前で座っていた。野薔薇に何があったのかといかけた。
釘崎野薔薇
釘崎野薔薇
そう、俺の思っていたものよりも遥かに酷い状況だった。きっと、野薔薇は虎杖の怪我がグロすぎて見てられなかったんだろう。
五条悟
釘崎野薔薇
五条悟
俺が、医務室に入ると、鉄のような鼻にくるにおいが散漫していた。ヤバいな。相当出血してるな。そう思いながら奥のベッドを見ると血塗れで、殺人現場のようだった。
俺の口からは言葉が出なかった。心肺停止状態の悠仁を恵が心肺蘇生していた。 たくさんの管に繋がれてもなお、鉄パイプが腹に刺さったまんまの悠仁は痛々しくて見てられなかった。
五条悟
伏黒恵
伏黒恵
伏黒恵
五条悟
伏黒恵
五条悟
五条悟
相当焦っているだろうに、でも恵は冷静に指示を求めた。多分、時間がない。俺がやるしかないか。
ハサミのような手術の器具をベッドのそばの机に置いた。失敗したら悠仁は起きなくなるかもだし、麻酔は使えない、このままやるしかない。
伏黒恵
手によく切れそうなメスみたいなのを持って、腹を切っていく。恵が動揺してるのがわかる。俺も冷や汗をかきながら、手を進めていく。 医務室の医師も不在。出張で京都校にいるからだ病院に連れていくにも時間が無い。一刻を争う状況なのだ。
腹を切り、鉄パイプをゆっくり慎重に抜いていく。上手くいったか、と思ったが先端を抜き取った瞬間に大量の血が流れた。それはもう、滝のようだった。輸血が足りなくなりそうな位に。
五条悟
伏黒恵
息が切れた恵が涙を流しながら、口を開いた。そうだ諦めてはいけない。大量に流れる血を止血をして、包帯を巻いた悠仁はさらに痛々しい様子になった。
それから5分くらい、恵と交代交代で心肺蘇生してた。傑も、高専に戻って来た。事情を聞いた傑も途中で恵と交代で心肺蘇生をしてくれた。
夏油傑
傑とすると、心肺蘇生を交代しようとした時、棒状だった心電図に少し、ほんとに小さな波ができた。奇跡と言ってもいいだろう。
夏油傑
五条悟
俺が蘇生を続けると、心電図が再開した。 すると、かなり苦しそうではあるが悠仁の 呼吸が再開した。 恵も俺も傑もほっと安心して、地面に 崩れ落ちた。
虎杖悠仁
悠仁が消えそうな声で一言そう言ってまた眠りに落ちた。恵の目からはしきりに大粒の涙がポロポロ零れた。不安だったんだな。辛かったな。あんまり力の入らない手で優しく恵の頭を撫でた。
そのあと、硝子が…重症な術師の治療が終わったらしく医務室にやっと戻って来た。硝子は、京都校に出張中の医務室の医師に連絡を入れてくれて高専専門の病院から医師を呼んでくれた。高専専門の病院の医師の判断で輸血が開始された。傷口は、硝子が反転術式で塞いでくれた。
輸血が、終わり硝子、病院の医師の許可を 貰い…悠二を医務室から運び、俺の部屋に 寝かせた。俺は、硝子と話しがあるので、 悠二が起きるまで、傑に様子を見てて 貰うことにした。
医務室に残った悟は、硝子から詳しい話を聞いて愕然としていた。 悠二が、運ばれた時…硝子は真っ先に悠二の処置をしようとしていたらしい。だが、硝子の携帯が鳴り、上からの指示で宿儺の器より重症な術師の治療をしろと言われ、悠二の治療が出来なくなったらしい。逆らうと、殺すと脅されもいた。
五条悟
家入硝子
五条悟
五条悟
家入硝子
家入硝子
少し硝子と話したあと、俺は医務室を後にした。高専はしんと静まり返っていて、いつのまにか降り始めた雨の音だけが響く廊下を歩く。自分の任務で忙しかった、なんて言い訳だ。気付けなかった自分に無性に腹が立つ。
廊下を歩いている時、ブーブーとポケットの中で電話が、鳴っていた。携帯を取り出すと宛名の表示に夏油傑と文字が見えた。
五条悟
夏油傑
五条悟
夏油傑
夏油傑
五条悟
夏油傑
夏油傑
五条悟
五条悟
夏油傑
五条悟
俺は、瞬間移動の術式を使い医務室の近くの廊下から自分の部屋へと飛んだ。ガラリと景色が、変わった。電話を切った後だったので傑は、俺がすぐに来ると思わなかったらしく少しビックリしていた。傑は、任務に行き交代で悠二の様子をみる事になった。
硝子から、私の反転術式は、傷は治すけどすべてのダメージをなくすわけじゃない。身体はちゃんとダメージを受けてる。怪我や傷を負うと、それを治そうとして発熱したりすると言うことを聞いていた。
硝子の術式は信頼している。あれほどの大怪我を負ったのなら、身体は相当なダメージを受けたはず。いくら宿儺をその身に宿しているとは言え、元はちょっと丈夫な普通の高校生。そんな、呪術師の家系に育ったわけでもない彼に、ある日突然突き付けられた現実はあまりにも残酷で。
自分には、この世界へといざなった責任がある。 側にいてやると決めたのだ。 —今度こそー
五条悟
虎杖悠仁
俺の優しい声音に、気を張っていたものが緩んだのか、悠仁の目に涙がたまる。 こくんと頷くと、ポロポロと涙が溢れて悠仁の頬をつたう。
五条悟
落ち着かせるように、優しく問いかけながら状況を確認していく。
虎杖悠仁
虎杖悠仁
五条悟
五条悟
そう言って、スマホを片手に側を離れようとすると、く、と袖をひかれる。
虎杖悠仁
五条悟
虎杖悠仁
硝子はすぐに電話に出た。間髪入れずに、虎杖か?と問われ、そう、と答える。
家入硝子
そう言うとぷつり、と電話は切れた。
よかったな。と安心させるように言って頭を撫でる。よく見ると、額に汗をかいてる。 着替えられそうか聞くと、ゆるやかに首が横に振られる。
虎杖悠仁
五条悟
虎杖悠仁
立ちあがろうと床に手をつくが、うまく力が入らないようだ。俺は、悠仁に抱き抱えてもよいか尋ね、否定のないことを確認すると、両腕の下に手を回し、一度立たせてからベッドへと座らせた。
椅子にかけてあったスウェットを手に取り渡す。緩やかな動きではあったが、なんとか着替えを済ませると、悠仁は動かなくなってしまった。
五条悟
虎杖悠仁
そんな悠仁を見ていられなくて、俺は咄嗟に問いかける。
そういえば、とあたりを見回して、水分補給が出来るようなものが近くに見当たらないことに気づく。水分も取っていなかったのだろうか。
水を持ってくるから、というと、先程同様離れたくないと言う悠仁を、すぐに戻ってくるからとなだめ冷蔵庫へと向かう。
普段からしっかりしているのか、水やスポーツドリンクが数本、冷蔵庫にあったのが幸いだった。
ペットボトルを口元に近付けてやると、されるがまま素直に口をつけた。それほど、少しの動きも億劫なのだろう。
こくり、と小さく喉を鳴らしスポーツドリンクを飲み込む悠仁だったが、三口ほど飲んだところで、けほ、と咳き込んでしまった。
その背中をさすりながら、普段の悠仁とはあまりにもかけ離れ弱々しく咳き込む姿に心が痛んだ。なぜこの子がこんな目に合わなければいけない。そんなに恐ろしいか。——笑わせる
虎杖悠仁
五条悟
悠仁の苦しそうな声にはっとして我に返る。
そのまま口元を抑えて、動かなくなってしまった。
五条悟
俺はそのまま優しく悠仁の背中をさすり続ける。近くにあったごみ箱を口元に持っていってやると、はじめは少し抵抗していたが、やはり我慢は限界だったのだろう。先程飲んだ水分をほとんど戻してしまった。
飲み物すら受け付けないほど身体が弱っているのか。
何が最強だ。
助けてやることすら出来ないくせに。
ちょうどその時、コンコン、とドアを叩く音がした。開いてるぞ。と声をかける。
硝子が来てくれたことに悟は安堵した。 そして思い直す。 今は自己嫌悪に陥ってる場合じゃない。 硝子に手短に状況を説明する。
わかった、と言いながら、準備を進めテキパキと処置をしていく硝子の姿を眺めていると、おい、と声をかけられた。
家入硝子
五条悟
家入硝子
五条悟
家入硝子
その言葉に思わず息をのむ。 そうだ、決めたじゃないか、自分で。
家入硝子
硝子は、ふう、とひと息つくとそう呟く。
家入硝子
すうすうと落ち着いた寝息を立てて眠る悠仁の頭に、小さく優しく、コツンと手をあてた。
五条悟
家入硝子
しばらくの沈黙のあと、あとはお前がついててやんな、私は帰って寝る、そう言い残して硝子は部屋を出て行った。 扉を閉め、ベッドの脇に置いてあった椅子に浅く腰掛けると、ふー、と大きく息を吐いた。
虎杖悠仁
ぽそり、と声が聞こえた。 寝ていると思っていた悠仁から発せられた、自分を心配する言葉きいて、思わず俺は泣きそうになる。
五条悟
虎杖悠仁
朦朧としていた意識がはっきりしてきたのか、言葉も先程よりしっかりとしている。 身体を起こしながら、悠仁は少しだけ気まずさを感じていた。
—無理はするなー
そう言われていたのに、結局、五条先輩、夏油先輩、家入先輩、伏黒、釘崎にも迷惑をかけてしまった。
五条悟
虎杖悠仁
五条悟
怒られる、と思っていた悠仁は、予想外の言葉に驚き顔を上げた。その瞬間、こちらを真っ直ぐ見つめていた悟と目が合った。
虎杖悠仁
五条悟
五条悟
消え入りそうな声でそう呟き、悠仁を抱き締めたまま動かなくなってしまった。 何となくだけど、知っている。 だけど詳しいことは知らなかったし、それを知ったところで自分に出来ることなんてないのだ。
虎杖悠仁
五条悟
悠仁の肩に顔をうずめながら、悟は返事をする。この子どもを甘やかすために、名前で呼んでよ、と言ったのはいつだったか。 いつの間にか、甘やかされているのは自分となっていたことに、こんな時に気付かされるなんて。
虎杖悠仁
五条悟
強くなって、たくさんの人を助ける。 みんなを、五条先輩達を守れるくらい。 強く。
虎杖悠仁
コメント
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悠二君を心配する五条先輩が、すごく優しくて、最後…涙が止まりませんでした。 悠二君、みんなに愛されていて幸せそうで…とても感動する物語でした⭐︎ 次回も楽しみにしています!! 管理人からのお知らせ📢の第一話を 呼んだのですが、また参加型をやるんでしたら、教えて下さい〜! 参加したいです♪