テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

それは俺、花守 健(はなもり たける) が中学生の頃だった

花守 健

は、えっ...

慌てて部屋に入り、滴る汗を拭った時

自分の腕に違和感を覚える

花守 健

何..これ...?

そう大して筋肉の付いていない腕に

いくつか痣の様なものが浮き出ていた

何故、痣と断言できないのか

それは痣が花の形をしていたからだ

花守 健

何なんだよこれ...

花守 健

俺、どうしちゃったんだよぉ...

花形の痣を隠すようにギュッと手で覆い

俺は力無くその場に座り込んだのだった

いつもの時間の明るい教室

花守 健

冬弥、おはよー!

水嶋 冬弥

健!

水嶋 冬弥

はよーっす!

朝から元気の良い冬弥

高校生になってもう2年も経つとゆうのに

俺の幼馴染、水嶋 冬弥(みずしま とうや)は

無邪気な笑顔で走り寄ってくる

あぁ、可愛いな...

そんな思いが頭を過り

俺は慌てて頭を振った

水嶋 冬弥

何やってんだよ?

花守 健

いや、何か虫が飛んでた気がして...

水嶋 冬弥

えぇ〜?

水嶋 冬弥

虫が飛んでるって...

水嶋 冬弥

お前、風呂入ったか〜?

顔を近付けて鼻をヒクヒクと動かす冬弥

失礼にも程がある

花守 健

近いし、入ったし、飛んでたのハエじゃないから

グイッと冬弥の顔を押し退け、自分の席に着く

頼むから...あんまり意識させないでくれ...

俺は机に頬杖を付いて

クラスメイトとはしゃぐ冬弥を静かに見詰めた

俺の体に異変が起きたのは中学の頃

突然腕やらお腹やらに花の形をした痣が浮かび上がった

痛みも違和感も無い

ソレはただ静かに現れ、しばらくすると消えるのだ

初めは怖くて誰にも言えなかったが

流石に親にはバレた

ほぼ強制的に病院へ連れて行かれ

診断結果は『ラブフラワー』

主に思春期の子供がなる奇病だ

多感な時期にある子供たちが特に昂らせる感情といえば

色恋に他ならない

ラブフラワーとは、恋の感情に反応して起こる

蕁麻疹やアレルギーと似た病気だ

発疹の代わりに花形の痣が体中に出現する

治療法や薬は無い

ただ、ほぼ100%の確率で20歳前にこの病気は治る

そんな奇病とはもう4年の付き合いになる

花守 健

冬弥

水嶋 冬弥

...

花守 健

とーや!

水嶋 冬弥

んぐっ...んっふふ...

花守 健

おーい

花守 健

...

花守 健

はぁ...

教室が夕日に照らされる頃

俺はぐっすりと寝入った幼馴染を何とか起こそうと苦悩していた

冬弥は1度熟睡し始めると中々起きない

むにゃむにゃと腑抜けた顔で眠る冬弥を見下ろし

再度、深い溜め息を吐いた

ガタリと音を立て、冬弥が突っ伏している机の前にある椅子に腰掛ける

相変わらず、睫毛長いなぁ

花守 健

全くお前って奴は

花守 健

人の気も知らないで...

花守 健

そんな無防備だと食っちまうぞー

ぷにぷにと冬弥の頬を弄び

そのサラサラな髪を梳く

夕日に透かすと金色に光る冬弥の髪は

見ていてとても安心する

それから10数分くらい経って、やっと冬弥の重たい瞼が開かれた

水嶋 冬弥

んん〜ッ!

水嶋 冬弥

ふあっ...眩しっ

花守 健

おはよ、冬弥

水嶋 冬弥

んー?

水嶋 冬弥

健、何してんの?

花守 健

何してんのって

花守 健

お前を起こしに来たんだよ

コツンと冬弥の頭を小突き、椅子から立ち上がって鞄を持つ

まだ寝ぼけているのか、冬弥は鞄から教科書類を取り出し

何故か机の中にしまっていた

花守 健

冬弥...何してんの

水嶋 冬弥

あ?だって授業が...

花守 健

今何時だと思ってる?

花守 健

とっくに終わってるよ

水嶋 冬弥

ええー?

水嶋 冬弥

あー...

花守 健

寝惚けてんなよ

花守 健

ほら、帰るぞ!

冬弥の手から教科書類を奪い、再び冬弥の鞄にしまい込む

腕を掴んで立ち上がらせ

そのまま廊下まで引っ張って歩かせた

水嶋 冬弥

健、痛い〜

花守 健

優しくしてんだろー

花守 健

お前のせいで俺まで帰りが遅くなる

水嶋 冬弥

んだよ〜

水嶋 冬弥

頼んでないじゃん、俺ぇ

花守 健

教室でずーっと爆睡こいてる幼馴染が居たら

花守 健

起こすだろーが、普通

水嶋 冬弥

健くん、優しー

隣でニンマリ笑う幼馴染の顔を、俺はもう何度も見てきた

なのに心臓は中々慣れてくれない

まずい...

気を許すとすぐにアレが出てしまう

俺は冬弥から手を離し、ついでに少し距離を取った

そっと気付かれないように自分の腕を確認する

...出ては無い、か

ギリギリ花が出ずに済んだようだ

親にバレはしたが、冬弥には話していない

仮に話したとして、花形の痣を見られたらお終いだ

水嶋 冬弥

なぁ健

早く20歳になんねぇかな...

こんなの、良い事なんて1つも無い

水嶋 冬弥

健ってば!

花守 健

ぅっ、わッ!

ハッと意識が現実に戻ると、目の前には冬弥の顔があった

少し怒った様に俺の顔を覗き込むその顔の近さに

俺の鼓動はまた高鳴った

まずい、まずい、まずいっ

ドクドクと血が騒ぐのが分かる

俺は冬弥を押し退けてクルリと後ろを向いた

水嶋 冬弥

なぁんだよ!

水嶋 冬弥

健が無視すんのが悪いんだろー!

花守 健

ご、ごめっ

花守 健

俺...俺ットイレ我慢してて!

花守 健

ちょっと行ってくるわ!

水嶋 冬弥

はぁ?

水嶋 冬弥

ちょっ、健!

呼び止める声に振り返りもせず、俺はトイレまで走った

トイレに着くや否や、制服のボタンを外していく

分かってはいた

花守 健

...ッ、くそっ

自分でも素直すぎると恥ずかしくなる

俺のこの花は

冬弥に向かってしか咲かないのだ

ー前編・finー

【BL】恋の花咲くお年頃❁⃘

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,407

コメント

32

ユーザー

わぁお……。 つか、題名すき(  ˙-˙  )

ユーザー

続きが気になります...そして最高です!!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚