この作品はいかがでしたか?
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読んでる方もすごく辛いですなんか最近涙腺がやばい気がしてきました
あれは本当に
本当に何気ない日だった
いつものように、近所の子供が公園に集まって
楽しく遊んではしゃぎ回っていた
その中にはもちろん、俺と冬弥も居たんだ
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
花守 健
近くに居るにも関わらず、興奮のせいか大声で俺を呼ぶ冬弥
何かと思い振り返ると、冬弥は眩しい笑顔をこちらに向けていた
水嶋 冬弥
花守 健
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
ビシッと自慢気に見せ付けられたのは
花の形をした小さな石ころだった
その石にはちゃんと花びらがいくつか付いており
自然に形成された物とは思えない程にキレイな花の形をしていた
確かに凄い石だけど
そんな事ではしゃぐ冬弥は小さな子供のようだと笑う
すると冬弥は怒って顔を真っ赤にしながら、俺に石の凄さを語った
水嶋 冬弥
花守 健
花守 健
差し出された石の花を、悪いよと冬弥に押し返す
けれど、俺の言う事を全然聞いてくれない幼馴染は
俺の手を取って強引に石の花を握らせた
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
ドクドクと血が騒ぎ、心拍数が明らかに跳ね上がる
全身が真っ赤になる感覚はこれが初めてだった
水嶋 冬弥
冬弥の裏表無い笑顔を見て
俺の身体の中で何かが弾けた
好き
自覚してしまえばもう遅い
目の前の男の子がどうしようもなく輝いて見える
俺はギュッと自分の腕を掴み
長い前髪で顔を隠しながら小さく呟いた
花守 健
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
俯く俺に近寄ってきた冬弥は
俺に上を向かせて、頬っぺたをむいーっと左右に引っ張った
悪戯っ子の笑顔が目の前に迫り、俺は益々赤くなる
その時、目に映る幼馴染の表情が変わった
とても不思議そうで、知らない何かに出会った様な顔
そんなキョトン顔も可愛いだなんて、俺は思い始めていた
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
触れたい
冬弥に触りたい...
水嶋 冬弥
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
花守 健
水嶋 冬弥
再び俯いた俺の顔を見ようと、冬弥が下から覗き込んできた
だから俺は顔を見られないように
冬弥との距離を無くしてやった
冬弥...冬弥、冬弥...
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
花守 健
ドンッ!と冬弥に突き飛ばされ、俺は派手に尻もちをつく
その痛みと衝撃のおかげで頭が冷えた
俺...何した...?
見上げる先には荒く肩で息をする幼馴染が
キツく俺を睨んで立っていた
水嶋 冬弥
花守 健
花守 健
水嶋 冬弥
水嶋 冬弥
自分のした事の重大さが測れなくて
怖くて俺は全力でその場から逃げ出した
幸いにも、冬弥より俺の方が足が速かった
後ろの方で俺を呼ぶ冬弥の声が聞こえる
だけど俺は怖くて、泣きそうなのを必死に堪えて
振り向く事も出来ず、ただひたすらに走った
石の花を置いてきてしまったと気付いたのは
家に閉じこもって泣き疲れた夜中の事だった
目を開けると見慣れた天井がぼんやりと見えた
あー...
またあの時の...
花守 健
絶対に放課後のせいだと頭を垂れる
じっとりと汗をかいていて気持ちが悪い
俺はベッドから体を起こして、乾いた喉を潤しに台所へと向かった
幼い俺が逃げ出したその後
合わす顔が無かった俺は次の日学校を休んだ
なのに、空気の読めない幼馴染は俺の部屋へと上がり込んできたのだ
そっからは何か意味分かんない喧嘩みたいになって
結局、俺の好きは友達としてって感じで収まってしまった
拍子抜けする程に簡単に仲は元通り
そんな一悶着があったからか、冬弥は俺の奇病発症を忘れている様だった
授業でラブフラワーの事が話題になった時
思い出したらどーしよう、と焦りもしたけど
冬弥は全く気にもとめてない様子だった
少し残念なような、安心したような
あの時の俺は複雑な思いで過ごしていた
そこら辺から俺はちょっとグレた
グレたとゆーか、口が悪くなった...かな
花守 健
花守 健
なんて言ってみても、あの頃と違って気軽に休めない
今思えば俺は何も成長していない
今回もまた逃げ出してしまった
トイレで気を落ち着かせ、戻った頃にはもう冬弥は居なかった
それから何の連絡も無いし
俺から連絡も取っていない
明日は冬弥の朝練が無い日だ
いつも通りに登校すれば、確実に玄関先で顔を合わす事になる
花守 健
花守 健
花守 健
花守 健
冬弥の近くに居ては病気がバレる
病気がバレれば俺の気持ちも同時にバレる
子供の頃と違って、俺も冬弥も色々と学んだ
それに成長もした
あの頃は無かった事に出来たけど
今バレたら確実に関係が壊れる
やっぱり好きな人の傍には居たい
それを叶える為には、この気持ちは隠し通さないといけない
いつか冬弥が別の誰かの隣を歩くまで
そん時に笑って背中を押せるように
俺は良い幼馴染でいなくちゃな...
もう何度目かの胸の痛みと
淡く浮き出る花の模様
俺は眉間に皺を寄せ、自分の部屋へと静かに戻った
ー中編・finー