注意書きは1話へ
これは第五話なので、 前の作品を見てから、 見る事をお勧めします
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第五話 『笑顔をもう一回』
「初兎ちゃん」 って呼ぶ声が、
元気な声なのに どこか優しさを 隠してるような
大好きな、声
他の4つの声も、同じで、 とっても心地よかったんだ
夢かもしれない
妄想かもしれない
でも、でも それでも、
僕は、信じたい
信じなきゃ
思い出さなきゃ
頑張らなくちゃ
こんなもので僕の心を プレスする何て、最悪
忘れちゃ駄目な人
一番大切な人
嫌だ
思い出せない 何てそんなの
何よりも、一番に、 優先すべき事なのに
思い出せない
どうしてか分からなくて、 ただ床に這いつくばるだけ
でも、
本当に、独りの方が、 僕には良かったのかな
独りじゃないはずなのに、 僕は今、一人きり何だから
この現実が、今の僕の、 首を締め付けてくるんだ
どうやっても、この 感覚が苦しいものに 変わってしまうんだ
苦しくて、苦しくて、
嗚呼、忘れたい
忘れたいなぁ
全部、忘れたい
全部、なかった事にしたい
全部、終わらせたい
終わりにしたい
何もかも、忘れて、 この馬鹿げた物語を 早く、終わらせたい
もう、やめたい
一体何に苦しんでるとか、 具体的に言えって言われた なら、きっと何も言えない
でも、それでも、僕は、 どうしようもなく苦しい
どうしてだろう
1人じゃない、って、 言ってくれてるのに
ごめん、
ごめんなさい
いつの間にか、 「ありがとう」 じゃ、なくて、
「ごめんなさい」 に、変わっていた
このありがとうや ごめんなさいを、
幸せに変えられるのだろうか
ガチャッ…… [ドアが開く]
こんな知らない人に 泣いて縋りたくない
この人は何も知らないのに 関係ないのに巻き込んでる
でも、知りたい
知らない事があったら 知りたいのは当然だろ
聞かないで
聞かなくていい
顔は分からなかった
全て、聴覚に頼ったから
でも、
凍りつく空気
息をしたら肺が全て 凍りそうな程冷たい
顰めた顔をして、 こちらへ近づいた
今から、何をされる とか、何をするとか は、分からないけど
でも、嫌だ
嫌な予感がする
さっきまでの絶望と、 少し違うような絶望が こちらへと近づいてる
急に連れて来させられた まったく、知らない場所
無理矢理変な気持ち悪い 機械に取り付けられて、
拷問でも始まるんじゃないか って言う雰囲気が漂っている
ガチャガチャと機械を いじっているのを見る だけで少し寒気がした
この感情はきっと、
さっきから、 何なんだろう あの、人間は
優しかったと思ったら、 今になって急に怖くなる
気持ち悪い大人
怖い
怖い
助けて
何が始まるかなんて、
僕には知らない
えっ、なになにー?
「写真、撮りたくて…」
撮ってくれるのっ!? ちょっと待って…!!
「んふっw何よww」
今ボロボロだからッ…!
髪ぐしゃぐしゃだし…
「ええよええよww」
……おっけ〜!
「はい、ちーず!」
いえーーーい!!
「いむくん…あのー、 写真撮っていい…?」
いいけどなんでー? 珍しいじゃーん!!
なぁに?何かやりたい 事でもあるの〜っ!?
「思い出を、ずっと 残したくて……!」
思い出……?
ふふっ、いいじゃん
かーーっこよく 撮ってよね!!
「ふふっwはいはいw」
「はい、ちーず!」
ぴーーーすっ!!!!
ん〜?どしたー?
「…写真、お願い してもええ…?」
写真?全然いいよー! じゃあカメラ貸して!
「え?」
え?
「僕がないちゃんを 撮るんやで…?w」
え!?!?ww
なんだよも〜w 先言えよーww
「ごめんごめんww はい、ちーず!!」
えええっもう!?!? ちょwちょっとまっ……
「写真撮る」
10文字以上30文字以内で 簡潔に説明してください。
「写真撮りたいです」
それ9文字やろ!!!ww
「ちっちゃい「や」も 含むやろうが!!w」
ふくみませぇーんww
「と、思うじゃぁんwww」
おいやめろ"ッッ!!!!ww
「はいちーずッッ!!!ww」
えっはちょっとまっ
「悠くん、今ええ?」
おっ、初兎か! 今大丈夫やで〜
どしたんー?
「写真が撮りたくて…」
写真ーっ!?やったー! 俺写真めっちゃ好き〜!
「ほえー!そうなん!?」
おう!だからポーズはもう 考えてあるんやで〜っ!!
「ガチ勢やんww」
ふはっwまーなww
「はいっ、ちーず!w」
……あ、れ
写真…撮ってる…?
なんだっけ、これ…
…あれ、
何、この記憶
俺、知ってる
いやりうちゃんポテト 食べてるんやけどww
せめて手下げようやw
いむくんは単純に ピースなんやなww
きっしょいポーズとか するんかと思ったわww
ないちゃんッ…w
これはポーズしかけてる とこ、なのかな…?www
まろちゃんwww
笑っとるやんかwww
ほんで悠くんよw
ポーズ考えてあるとか言って たのに証明写真やんかwww
でも、みんな……
みんな、いい笑顔やな
僕はずっと…この笑顔を 大切にしていきたいな…
…これからも、ずっとずーっと みんなのそばで沢山笑いたい…
僕だけじゃなくて、みんなも たっ…くさん笑えるように、
ただ、ずっと……
もうこれ以上何も いらないから……
僕の願いは、ただ それだけだから…
神様、そのくらい 叶ってもええよな
みんなと、笑いたくて
ずっと笑い合いたくて
みんなの笑顔が大好きだから 一人一人の写真を撮ってて、
大切にしよう、って
そう、思って
また、もう1人の僕
でも、
もう、胸を張って言えるから
あの時とは、違うから
どうしていなくなったかは 知らないけど、でもきっと 僕も納得できる理由がある はずだから、絶対あるから
あの頃の弱かった 僕とは、違うから
もう、迷わないから
きっとこのもう1人 の僕も、僕なんだ
僕だから、今、
涙を、流してるんだ
生きるか死ぬか、 本気で迷っていた
でもその時は死ぬ勇気 なんてなかったから、 もう少し大きくなって から死のうと思ってた
けれども、大きくなっていくに つれてどうでもよくなっていた
だから、なんとなくで 今まで生きていたんだ
けど、
ずっと1人だった
でも、みんなが一緒 にいてくれたから、
大切な事に気付けた
嗚呼、人と関わるって 素晴らしい事なんだな
それが、人生だから
やりたくないけど しなきゃいけない 事は沢山あるけど
でも、それも全部全部 愛せるようになりたい
苦しい思いをしても、それが 将来笑い話になれるように、
今を頑張るしかないんだ
全部、忘れないから
こうして僕は、
アンドロイドにされた
でも、どうやら、 失敗だったらしく
ゴミ置き場に捨てられて、
りうちゃんに拾われた
急いで走ってきた、 りうらに話を聞くと 青組が消えたと言う
急な報告に思わず耳を疑うが、 どうもそれは事実だったようだ
目に涙を浮かべていた のも納得できる内容だ
青組がいない
おまけに、ないこも いなくなったと言う
もう、これ、以上りうらに、 トラウマを植え付けたくない
りうら、ごめん
ごめんな、りうら
沢山背負わせた
沢山悩ませた
最年少なのに唯一 敵に手を出して、
でも届かなかったのが トラウマになり、泣き 逃げ出しちゃっても、
初兎のロボットを連れ 帰ってきてくれたんだ
みんながずっと悩んで、 ずっと泣いていたのは、 痛い程、よく知っていた
でも、こんなのに目を背ける わけにはいかなかったから、 何か力になろうと思ったんだ
でも、それだけだった
本当に、口だけで、何も 行動になんて移してない
もういいから
何もしなくていいから
これ以上、みんなを、 背負わなくていいから
違う
違うから
違う
違う
これも、違う
伝えたかったのは、こんな ちっぽけな言葉じゃなくて
もっと、もっと、
もっと、
力強くて、
「悠くんっ!!」
まっすぐな、
「さっすが悠く〜ん♪」
優しい、
「無理は、あかんで」
誰かを、救うような、
「ちゃんと、見とるから」
優しい優しい力強く まっすぐな言葉を、
「なぁ、悠くん
ずっと、隣におるから」
「どこにも行かへんから」
「だから、
心配、いらへんから」
あのな、初兎
あの時、
嬉しかったんや
俺が、少し詰まってた時 一番に気がついたのは、
初兎だった
彼は、どこか、 怒ってるようで
どこか、優しかった
向こうが、俺を突き放す のではなく、俺が向こう を突き放したら、少しは 楽になれると思っていた
だから、離れるか 迷っていた時に、
そう言って、ふわっと 抱きしめてくれたんだ
今でも、あの温もり を、体が覚えている
腕の中で沢山泣いたのを、 感情が忘れさせてくれない
幸せだったんだ
俺が欲した言葉を、 お前が言ってくれた
ここに居ていいんだよ、って ずっと言って欲しかったから 本当に、心から、嬉しかった
でも、俺はどうだろう
お前に、初兎に、
言葉で伝えられ ていただろうか
初兎が欲しかった言葉を、 伝えられていたのだろうか
お前の欲しい言葉は 何か、俺は知らない
だから、帰ってきたら、 絶対に聞いてやるからな
でも、
初兎、お前は、
幸せだったんかな
ここは、自殺事件 が多数ある場所だ
今日の天気も最悪
海の匂いが何故か 気持ち悪く感じる
タイミングよく吹く風が 肌を触ってきて気色悪い
今なら、世界の全てが 悍ましく感じてしまう
気持ち悪い
吐きそう
そんなの幸せじゃない
そんなちっぽけな結末で 終わらせたくなんかない
ここまで一緒に歩いてきた 仲間を途中で切り離したら 絶対ダメだって分かってる
もう一回なんて 失わないから、
もう一回なんて 言わせないから
離れていく背中
遠ざかっていく匂い
それは全て、
海にかき消された
嗚呼、そっか、
幸せの形って、
タンッ………
みんな同じじゃないんだ
気色悪い空
気持ち悪い足元
馬鹿みたいに汚い俺
惨めな俺
最悪な俺
きっしょい俺
この世の汚いもの全ては 俺の為に作られたのかも
ダメだな、俺
今までしてきた事全部、 何故かは分からないけど
初兎ちゃんになら 許される気がする
今日も汚れたまま 世界は回っている
俺の事なんか気にせずに ただただ回っているだけ
きっと世界は俺の事を 許してはいないと思う
でも、憎んでいる わけでもなさそう
ただただ、
触れ合っている
死ぬ事も生きる事もできない ずっと息苦しいこの世界で、
俺は笑いたい
笑えなかったっけ
笑顔って
なんだっけ
手が届かなくても
言葉が届かなくても
うまく泣けなくても
上手く笑えなくても
うまく生きれなくても
地球は回り続ける
人形は踊り続ける
物語はまだ終わらない
人生もまだ終わらない
だから、
ぼく達は生き続ける
進み続ける
手が届かなくても
言葉が届かなくても
うまく泣けなくても
うまく笑えなくても
うまく生きれなくても
笑って
笑って
笑って
笑って
笑い続けるから
もう一回、心から 笑い合えるように
絶対に、取り戻すから
絶対に、守り抜くから
そして、もう二度と、 君を泣かせたりしない
そして、もう二度と、
失わないから
その、笑顔を
676タップ お疲れ様でした。
投稿日.8.27