ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
𝐒𝐭𝐚𝐫𝐭
今日はめっさ静かな日やった
いつもは朝っぱらからやかましいおかんが、今日は一言も話しかけてこぉへんかった
お昼過ぎに何人かで集まったりもしたけど、みんな静かで、こまな音だけが耳に入ってきとった
今日は朝からぼーっとする
誰ぞウチに話しかけてきたのも、全部忘れた
いつのまにか、こないな時間で
昔、お兄ちゃんと、おかんとおとんで遊んだ、公園のブランコに1人腰掛けとった
今日あったことも、ほぼ覚えてへん
◇◇ ◯◯
それだけが脳内を埋め尽くしとった
爆発寸前の風船みたいに、脳がパンクしそうで、処理が追いついてへんの
◇◇ ◯◯
それが甘えた考えなのはよくわかっとる
ただ、現実から逃げたいだけなんやって
人生において、不幸っていうもんはつきものやし、それをわかっとるつもりやった
せやけど、どうしても、周りの誰ぞウチよりも幸せそうに見える
それが、今は羨ましうてしゃあない
別に、自分が生まれた時から不幸で、可哀想で、愛されへんかった子だなんて思うてへん
それなりの愛情はもろたと思うし、ご飯が食べられへん過酷な状況におったわけでもあらへん
やのに、なんでなんやろな
シンシンとしていて、寂しいのも、惜しまれるのも、痛むものが心臓を掴み絞る
別に、怪我をしたわけでもないのに、左側がジクジクと痛んでしゃあない
少しずつ心の何かがすり減っていく喪失感に呑まれる日々やった
1つ減ったら、また1つ減っていく
消えて消えて消えて、最後には何も残らへん
得たものなんて、何もなかったんや
中学時代。あないに頑張ったバドミントンは、大会で結果は出されへんかった
練習はずぼらかますことなく真面目に行なっとったし、家でもできる範囲での自主練
土日には体育館を借りて部員と練習に行くのも日常やった
それやのに、大会で出た結果は3回戦敗退っちゅう地味な結果やった
それを親に知らしたら、ため息をつかれて終わった
高校受験。第一希望の高校には入れへんかった
元々県内上位の高校を受験しようとしとったけれど、ギリギリまで偏差値はイマイチ乗らずでレベルを下げた
それを親に相談すれば、またため息一つで返された
定期テスト。お兄ちゃんと比較されてばかりやった
ぜったい悪い点数を取っとったわけやない
学年上位にはいたはずやのに、お兄ちゃんの頭の良さにはどうしても達せんといたんや
そやから、テストがあるたびに、比較されてはため息をこぼされた
友人関係。何となく周りに合わせて笑うことしかできひんかった
いつからか、周りの目が気になるようになって、目をつかれへんように、合わせとることしかできんかった
飽きられるのが、えげつなく怖かったから
また、がっかりさせてしまうのかと思うた
ウチから、全て消えていってしまうのかと思うと、怖くて仕方のうて、どないもできひんかった
全部がなぜか、鋭い矢に変わってウチに刺さってくる
そのため息一つ一つが、ウチには重うて、心がその音を聞く度に悲鳴をあげとった
ため息をつかれ続けて、耐えて来たのに、ずっとため息をついて来た奴らは、突然と姿を消した
あんたらに認めてもらいとうて、ずっとずっと頑張ったのに
結局は全て消えてしまもたんや
だれにも、認めてもらえへんかった
そんな承認要求の塊がいつからかウチの内側でおっきくなっていて、もうどすることもでけへんほどに膨れ上がっとった
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
そうは思うものの、自分で命を断つなんて、ヘタレ者のウチには到底無理な話や
せやから、もしもウチの願いが叶うなら
沈む夕日と共に、この世界から泡のように消えられたらええなって思うた
痛いのも苦しいのも、何も感じんと
この世からパチっと
◇◇ ◯◯
そんなんをぼんやりと考えながら、ウチはずっとブランコに座っとった
時間が過ぎてゆくのも気にせんと
ただ、ずっとここに
?
オレンジ色の夕日が完全に地平線に身を隠した頃、頭上から淡々とした声が聞こえた
顔を上げると、見たことのない顔が真顔でこっちをのぞいとった
見ただけでわかった、自分よりいくらか年上なんやと
ジャージを着とるから、高校生なのはわかったけど、それに見合わん落ち着いた空気と、凛々しいオーラを纏い過ぎやと思うた
◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
そう言うてからウチはまた視線を地面に落とした
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
せんどせんど電話を掛けた
せやけど、お兄ちゃんが出てくれたのは最初のいっぺんだけやった
おとんにも、何度か電話してみたけど、一切出てくれることはあらへんかった
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
そんなん関係ないって言われても、この拗らせすぎた頭には何も響かへん
「みんな違ってみんないい」なんて言葉があるけど、そんなんじゃ何も納得できへん
もっと明確な答えが欲しい
ウチがウチを認められるような
そんな、答えが欲しいんや
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
感情に任せて出て来た言葉はおっきく静かな公園に響く
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
そんなん、とっくに知ってんで
当たり前やで、未来なんて誰にもわかれへんねんから
せやけどな、それがもう、ウチはおとろしいんや
未来が、おとろしいんや
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
しんどいんや
包丁をぶん回すおかんを止めるのも
定期的に家を荒らしに来るおとんにも
なんの協力もしてくれへんお兄ちゃんにも
もう、全部しんどいから、ウチはここに来たんやと思う
全部終いにしとうて、今ここにおるんや
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
いつからか、親同士のぶつかり合いが増えて、家庭環境は悪循環になっていった
とばっちりがくるのも日常で、何をそないにに怒っとるんか、いちゃもんなんていつも通りのことやった
もっとええ点数を取れ
部活で成績を残せ
飯を作れ
遊びに行きなや
親同士の喧嘩が起きると、いつものように言われた
そらまるで、いつの日からかウチの目には毒親のように映っていった
それに嫌気をさしたお兄ちゃんはわざわざ遠い大学を受験しぃ、ウチをここに置いていった
毎日のように怒鳴り声が家中を支配していて、ウチは部屋で怯えてることしかできんひんかった
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
いつからか、左側が痛くなるようになった
人間は、不思議やな…
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
自分らしく人生を歩めていたら、こんなことにはなっていなかったのだろうか
どこで、道を間違えたんやろか
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
誰かにとってのバッドエンドが、ウチにとってのハッピーエンドなら…?
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
そう言うてから肩からかけとった鞄から、筆箱とこまい紙を取り出して何か を書き始めた
北 信介
差し出された紙は、電話番号と名前がきれいな字で書かれとった
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
彼はウチの質問に、首を少しだけ傾けた
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
その言葉に、心の奥にポカッと火が灯るような感覚がした
いつのまにか、堅苦しい気持ちが少しずつほぐれていく
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
そう言われたから、ウチは不思議に思いながらも顔をスッとあげた
◇◇ ◯◯
思わず、感嘆な声を上げた
目の先には無数の星々たちが強く輝きを放っとったんや
行き場のない考えごと涼しい風がさらってゆく
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
久しぶりに見た星空は、最後に見た時より、何倍、何十倍も美しく、綺麗に見えた
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
久しぶりに感じた、何気ない優しさに、鼻がツーンとなって目の縁からジワリと涙が滲んだ
あぁ、泣くのなんて、いつぶりやろか…
ずっと我慢してたんや
泣いたら、頑張って頑張ってどうにか繋ぎ止めとった糸が切れてしまいそうで
それが怖かったんや
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
そう言うてから北さんはウチの頭にポンッとぬくい手を乗せて優しく撫どった
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
北 信介
その優しい言葉で、細ぉて脆かった糸は、プツンと簡単に切れて涙は決壊したダムのように溢れ続けた
なんぼか時間が経って、心も晴れた頃には、もう夜中の10時を回っとった
スマホを見てみると、大量の着信が来とった
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
そのままウチは画面を下にスライドしていく
親戚の人の名前がズラリと出てくる
その中に、一つだけせんど見慣れた人からの着信も入っとった
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
ウチは少しだけ震える手を知らんふりしてお兄ちゃんとのトーク画面を開く
何やか、今のウチなら何が来ていても大丈夫な気がしたから
◇◇ ◯◯
送られて来とった言葉を読んで行ったら、さっき止めたばかりの涙が勢い良く溢れ出てん
北さんはそんなウチを見て、スマホの画面に視線を送った
北 信介
北さんは嬉しそうにまたウチの頭に手を置いて大人らしい笑顔で言ってくれはった
◇◇ ◯◯
あれから月日は流れて、私はもう社会人として働いとる
今日も出勤日で、いつも通り仕事に精を出しとった
青年
青年
◇◇ ◯◯
青年
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
青年
青年
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
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青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
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◇◇ ◯◯
青年
青年
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
そう言って静かに涙を流す頭をクシャッと撫でてやる
◇◇ ◯◯
青年
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
青年
そう拳を握りしめるのをみて、強くなったなと、感じる
出会うた時は、あんなに弱々しかったんに…笑
青年
◇◇ ◯◯
青年
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
青年
青年
◇◇ ◯◯
青年
青年
◇◇ ◯◯
青年
大きく手を振ってくるのに対して、私もヒラヒラと振り返す
遠くなる背中を眺めてその逞しさに感動した
◇◇ ◯◯
そんな感傷に浸っていると、ポケットに入っているスマホが鳴った
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
ピッとボタンを押して電話に出る
◇◇ ◯◯
◇◇ ◯◯
北 信介
北 信介
◇◇ ◯◯
北 信介
◇◇ ◯◯
きっと誰しもが、消えたいと願ぉたことがあるやろう
孤独や苦しみを箱に入れて、鍵をかけて、奥底に押しやって
そうやって、我慢して我慢して、必死に自分をコントロールしようとしとる
せやけどその気持ちが、ふとした瞬間に溢れ出てしまう
そないな時に、人はきっと「消えたい」「生きたない」そう思うてしまうんや
せやけど、今の私はそれでええと思う
消えたらいけないなんて、消えたいと思っちゃいけないなんて。
そんなん、名前も知れへん誰かが勝手に決めたことやねん
あるべき姿、正しい価値観、みんな同じ思考回路
私たちは幼い頃からそれを刷り込まれてきた
それが正解なんだと、何の疑問も持たんままに
人生、色んなことがある。つらいこともある、苦しいことだってある。
その中で消えたいと願うことがあったってええんや
生きてるんやから
生きとるから苦しうて
生きとるからつらうて
生きとるから孤独を感じる
誰だってみんな弱さを持っとる
せやから、そんな弱い自分も、認めてあげてええんや
そんな自分も大事にしてあげてええ
きっと、私たちが生きるのに大した理由なんていらへん
だって、私たちはそないなことを考えてこの世の中に生まれ落ちたわけやないから
日々を重ねていく中で
たくさんの人と出会う中で
色んな経験をする中で。
誰かの正論を、正義のように刷り込まれてきた私たち
意義がなきゃいけへんとか
意味があるからこそ尊いだとか
身も知らずの誰かをおもんぱかれとか
せやけど、本当はもっとシンプルで、全て手放してええはずや
生きる理由なんて、本当に何でもええ
大切なあの人ともう少し一緒にいたい
そんな簡単な願いでええ
この世の中は消えたい人で溢れとる。
だから、私から、そないな人たちに伝えたいことが一個だけある
これだけは、伝わってほしい
あなたがただそこで呼吸を繰り返して、立っているだけで
ただ、それだけで
あなたはきっと、誰かの光なんや
おっと、最後に言い忘れとった
私にとっての、光は
ヒーローは
私の、大切な大切な
“家族”やで
𝑭𝒊𝒏
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
ぬしぱる
コメント
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コメント失礼します! ウワーッ!!!ハピエン!!!ハピエンありがとうございます!! なんて素晴らしい作品なんだ…主様の文芸と創作の力たるや… 最終的に北さんと彼女は寄り添って幸せになれたのですね…!!彼女は幸せになれたのですね…‼︎‼︎ 見に来てみたら、凄まじく感動いたしました…!お体に気をつけて、無理はせずにお過ごしください!