これは、私が数年前に出会った
瑠璃
⋯。
???
あなた、だれ?
不思議な“ニンゲン”の話。
瑠璃
⋯私は、
瑠璃
(あれ⋯私って、)
瑠璃
⋯わからない。自分の名前なんて覚えていない。
???
お母様やお父様は? はぐれちゃったの?
瑠璃
両親と言える人は居ない。
瑠璃
“製作者”なら居る。
???
せい⋯さく⋯?
???
もしかして、あなたは自分のことを人じゃないって思ってるの?
???
だから、自分が産まれたこともそんな風に⋯
瑠璃
違う。私は本当に、
あなたの思う“ニンゲン”じゃないから。
???
⋯え?
ネリネ
はっ⋯。
ネリネ
(夢⋯。)
ネリネ
(また、同じ夢⋯。)
ネリネ
なんで、あの夢ばかり見ちゃうんだろう。
ネリネ
──私は、望んで見ている訳じゃないのに。
ネリネ
おはようございます。お母様、お父様。
母
あら、ネリネ。今日もいつも通りの時間ね。おはよう。
父
おはよう、ネリネ。
私の両親は、私の年齢に反して若い。
それは、今の両親が実の親じゃないからだ。
母
今日も頑張りなさいね。
ネリネ
勿論です、お母様。
父
さぁ、朝食が出来ているから食べなさい。
ネリネ
はい。
私の家はいわゆる貴族で、代々宝石や骨董品を売って儲けている家系だ。
その商売も最近はあまり上手くいっていないようで、私の両親や家の者は随分焦っている。
しかし、私は跡を継がずに他の貴族へ嫁ぐことになっている。
両親は、毎日血眼で私の結婚相手を探しているらしい。
ネリネ
(⋯私は、そんなことに興味はないのに。)
母
ネリネは本当に気になっている方は居ないの?
ネリネ
はい。ですので全てお母様とお父様で決めてくださって構いません。
母
そう⋯。
父
ネリネに気になっている人が居れば、少しは嫁がせやすくもなるんだがな。
ネリネ
⋯ごめんなさい。
母
いいえ、ネリネは悪くないのよ。
母
気になっている方が出来たら教えてくれればいいわ。
ネリネ
分かりました⋯。
瑠璃
⋯。
瑠璃
(最後に会ってから何日経ったか⋯。)
瑠璃
(⋯そんなことに興味は無いけれど。)
ネリネ
⋯!
ネリネ
居た⋯! やっぱりいつもここに居るんだね。
瑠璃
出かける必要もなければ会いに行こうと思うニンゲンも居ないから。
ネリネ
あまり来るのは控えた方がいいと思って⋯。最近来れてなかったんだ。
瑠璃
⋯そう。
ネリネ
それでも、やっぱり会っておいた方がいいと思って会いに来たの。
ネリネ
久しぶり、瑠璃。
瑠璃
⋯久しぶり、って言うのが何か分からない。
ネリネ
⋯そっか。
ネリネ
瑠璃は、ずっと⋯
ネリネ
⋯。
瑠璃
⋯。
ネリネ
やっぱり、このお話は辞めよっか。
瑠璃
辞めたいと思うなら好きにして。
ネリネ
瑠璃は、最近何して過ごしてたの?
瑠璃
何もしていない。ただここに居るだけ。
瑠璃
⋯昔は、まだやりたいと思うことがあったのかもしれない。
瑠璃
でも、それが思い出せない。
ネリネ
⋯そうなんだ。
ネリネ
あ、そうだ! 私がこの前プレゼントした日記、使ってる?
瑠璃
日記ってこれのこと?
ネリネ
うん、そう!
瑠璃
一日って感覚がないからつけてない。
瑠璃
それに、毎日ずっと同じことの繰り返しなのに、なにか意味があるの?
ネリネ
それは⋯そうかもしれないけど⋯。
瑠璃
だから、つけてない。
ネリネ
⋯そっか。
ネリネ
それじゃあ私はこれで。
瑠璃
⋯日記のことだけを聞きに来たの?
ネリネ
うん!
ネリネ
あと、久しぶりに会いたいなと思ったから。
瑠璃
⋯そう。
※牢屋の中
瑠璃
⋯。
〇月×日 天気:晴れ 気温:19℃ 今日はネリネが牢屋まで遊びに来た。 私が日記を使っているかどうか聞きたかったらしい。 その時は使っていないと答えたけれど、 ネリネからのプレゼントだから、大事な日や 必要な時には使っている。
瑠璃
⋯「何も無い時は」日記もつけてないけど。