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コメント
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妄想ね
いつの間にか寝ていた──。
いつの間にか点滴パックも交換されている。
ワコは水滴が落ちる様をじっと眺めた。
約2秒で1滴ずつ
あれから5時間は経っていると思われた。
イカれた医者は戻ってくる気配はなかった。
しかし、こうもベットに繋がれていては逃げ出すチャンスもない。
監禁されてから、いったい何日経った?
これが普通の女子高生なら
今ごろは身内や友人たちが躍起になって探しているだろう。
しかしこの世に
ワコのことなんか心配する人間など、だれ一人としていなかった。
──見捨てられた人間
ワコ
ワコ
悔しく、ふがいなく、涙すら出てこない。
ワコ
ワコ
ワコ
Kを利用して自分のおかれた境遇から抜け出したかっただけだ。
けして好意を寄せたわけじゃない。ワコはそう思った。
自分はあまりに不幸で
あまりに無知で
そして、あまりに人を恨みすぎた。
父は仕事もせず昼間から酒に女にギャンブル三昧。
母親はそんな生活に耐えきれず別の男と逃げ出した。
ワコを育てたのは父方の祖母だ。
その祖母も他界し
生きるすべを失ったワコは、中学を卒業すると父親に連れられ、とある一軒の茶屋に売られた。
茶屋とは一元さんお断りの芸者遊びをする場所のこと。
ワコはそこの配膳係りになったのだ。
ただし、今の世にあっては茶屋は、昔ながらのおき屋(風俗)とは違い、今はむしろ料亭と同じ。
金持持ちや要人たちの社交の場であり、時に密談の場でもあった。
そんなある日
今からちょうど二年ほど前のこと。
Kはどこかの偉いさんに連れられワコの働く茶屋を訪れた。
腹黒く淀み、脂ぎった男たちの中にあって
青竹のごとく若々しく綺麗な青年にワコは目を奪われた。
16歳になったばかりのワコにとってKは雲の上の人
別世界の人だった。
それから一年過ぎ
二年が過ぎ
再びKに会ったのは
最悪なタイミングの時だった。
ある日のこと。
茶屋に自分を売った父親が現れた。
ワコ
ワコ
ワコ
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親は店先でとぐろをまき、通行人にからんだりとやりたいほうだいだった。
ワコ
ワコ
父親(回想)
ワコ
ワコ
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
ワコ
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
父親(回想)
父親(回想)
最低な父親はワコに手をあげた。
父親(回想)
思いきり蹴られ
殴りつけられた。
そこにあのKが現れたのだ。
Kは父親を店先に連れ出し、
ワコが見た限り
相当な札束を渡していた。
父親の態度が急変した。
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親(回想)
父親はへらへら、ペコペコしながら去っていった。
K回想
K回想
K回想
殴られ、へたり込んだワコに
Kは手を差し出した。
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
K回想
K回想
K回想
K回想
K回想
K回想
K回想
Kは微笑み
もう一度さぁと手を差し出した。
ワコ
自分の身に起こった出来事が信じられなかった。
まるで
ドラマ。
いや
これは漫画だ。
ワコの目の前に
白馬の王子が現れたのだ。
しかし
この時点では
考えも及ばなかった。
掴んだ手は
王子なんかではなく
悪魔だったということを。
ワコが掴んだ手は
殺人に快楽を求める
サイコパスだったのだ。
*
ワコは繋がれたベットの上で思いにふけっていた。
天井にある微かなシミ──
ここに繋がれた女たちも
あれを見たんだろうか。
ワコ
ワコ
ワコは思いきり両手に力をいれた。
プチン
ワコ
あんなにきつく縛ってあった結束バンドが
いとも簡単に切れた。
ワコ
ワコ
チャンスか罠か──
つづく