テラーノベル
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商店街の真ん中あたり、空き店舗の軒先に期間限定のたい焼き屋が出ていた。
ユイ
ユイが腕を組み、行列を睨みつけるようにして言う。
俺
ユイ
俺
焼き型の上で、溢れた生地がじゅうと音を立てて香ばしく焦げる。
ユイ
俺
ユイ
ユイが、人さし指を立て歯を見せて笑う
俺
前に三人。
生地の焦げる匂いが、冬の重い空気に乗ってゆっくりと漂ってくる。
ユイ
俺
ユイ
俺
ユイ
俺
ユイは、型の中から現れる、きつね色の『魚』たちをじっと見つめている。
ユイ
俺
ユイ
俺
ユイ
俺
ようやく順番が回ってきた。
俺
受け取った紙袋は、内側からほかほかと生命力のような熱を放っていた。
近くのベンチに腰を下ろす。
俺
ユイ
そう言うユイは、たい焼きを左右の手の間で、忙しなく往復させている
俺
二人で並んで、ふぅふぅと息を吹きかける。
白い湯気が、グレーの冬空に溶けては消えていく。
俺
ユイ
俺
端っこから、一口かじる。
はみ出した熱いあんこが、凍えた身体に染みる。ちょうどいい甘さだった。
ユイが、小さく何度もうなずく。
ユイ
俺
ユイ
たい焼きのしっぽが、ぱきっと乾いた音を立てて割れた。
商店街の向こうで、誰かの自転車のベルが鳴る。
世界に特別なことなんて、何一つ起きていない。
けれど、たい焼きを持った指先だけは、ちゃんと、確かな熱を感じていた。
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