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桃香

……

息を、吸って、吐く

刀を握って、覚悟を決める

いくら風魔の術が優れていようと私は既に満身創痍だ

…いつ、殺されても大丈夫

桃香

さぁ、覚悟してよね当主さん

未門

覚悟するのはお前の方だ、夜桜

……そうだね

貴方が望むなら、悪役を

最期まで、演じきってみせる

桃香

いい度胸じゃん

桃香

かかってきなよ

未門

……いくぞ

瞬間、未門が視界から消える

だが、後ろで刀を握る音がしてそこに居るのだと分かった

刀がぶつかり澄んだ音が響く

桃香

ばればれ

桃香

もっと気配を消さないと

未門

……小賢しい

今度は正面から突破する気か

難なく刀で受け止める

未門

甘いぞ夜桜

刀が受け止められたのを見た瞬間、未門が屈んだ

桃香

あっ……

未門

終わりだ、夜桜

「死ぬ」

本能的にそう思った

だからなのか、気が緩んで

最期だからって、君に甘えた

桃香

……そうだね、未門

違和感

気持ち悪くなるほどの違和感

それが、ずっと居た

「岩永」として夜桜は殺すもの

その力が俺にはあった

だから、父上に言われ続けて

それが、岩永の長男であるお前の力なのだと

それが、岩永の長男としての運命なのだと

だけど、嫌になるほど気持ち悪かった

頭では夜桜は殺せと言っていて

心では夜桜を殺すなと言っていた

……まるで、意味がわからなかった

だから、冷たく接して

一瞬の隙を見つけすかさずそこに刀を向ける

「殺せる」

今までの経験がそう言っていた

だが

次に聞こえた言葉は、呪いのようだった

桃香

……そうだね、未門

未門

未門……?

その瞬間、一瞬記憶が飛んだ感覚がした

その子は、ずっと下を見ていた

空を見ないで地獄を見ていた

そんな子が自分に笑いかけてくれた時

この子は可愛いな、と思った

愛されることへの恐怖がこんなに強いなんて思わなかった

無償の愛すら、怖いなんて

……それでも、ただ君が好きだよ

いつか、この想いを受け止めてくれるまで

傍で守るから

君は、世界に愛されていたのか

それとも、世界に嫌われていたのか

君はまた重い運命を背負った

その周りには君を支える人がいて

その中でも特別な視線で自分を見てくれた時

もう、どうしようもないほど嬉しかった

世界はなんて残酷なんだ

この時、それを思い知った

不甲斐ない

君の隣にいたのはいつも自分だったのに

君よりも先に倒れることが、なんて情けない

もし、もし来世があるのなら

どうか、お願いです

未門

これ以上、桃香に迷惑をかけないほど

未門

俺を強くしてください…

未門

もう…桃香の重荷になりたくない

それが、多分その世界で最期に考えたことだ

全部、思い出しても

今更振った刀を止める力なんてなくて

刀は無情に、桃香を刺した

未門

……あっ

未門

うそ、うそ、うそでしょ…

未門

桃香…っ

桃香

……なぁんだ

桃香

やっぱり、名前がキーワードなんだね

未門

桃香……桃香……っ

未門

なんで……なんで黙ってたの……

未門

ごめん……ごめんなさい……

風魔

…巫女様っ!!

風魔が抑えきれず回復術を使う

けど、黒刀・蓬莱の奪う力によって何もかも奪われていく

桃香

…止めなさい、風魔

風魔

ですが…巫女様!!

桃香

もう、大丈夫だから

未門

桃香……ごめん……

桃香

……未門も、別に大丈夫

桃香

後のことは全部終わっているから

腕の中で桃香の体温が段々消えていく

消えてしまう、俺のせいで

こんな、残酷なことあるのか

桃香

……未門

未門

……なに?

なんで、なんで桃香がこんな目に

桃香

……未門、大好き

未門

……今じゃなくていいだろ

桃香

何言ってるの、今じゃなきゃ

桃香

……流石、未門だね

桃香

死ぬ時って、こんな感覚なんだね

桃香

未門のせいじゃないよ

桃香

だから、責めないでね

体温が、消える

体重が、かかる

目は、開いてない

未門

桃香……?

未門

もも……か……?

未門

なんで……どうして……

頭の中がぼーっとしてくる

外から、「間に合った!!」という声が聞こえる

……誰の、声?

小雪

……間に合った?

小雪

この状況、見えてるの

小雪

最悪な結果だ!!

小雪

巫女様は最期まで演じきって見せた!

小雪

だけど、なんでその功績者がここに居ないの!?

小雪

答えて、今までどこにいたの

小雪

知っていたでしょ?君達なら

小雪

……答えて

小雪

白魔、秋霖!

白魔

……そうだね

白魔

全部、話す時が来たんだね

秋霖

白魔…

白魔

クルトさんも………

白魔

……いや、姫も

白魔

姫も、きっとこうなると分かっていてぼく達を向かわせた

白魔

分かったよ、姉さん

白魔

全て、話すよ

秋霖

僕達が何者なのかも

白魔

姫がここに来るように言った理由も

「間に合った、の意味も」

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コメント

4

ユーザー

やばいやばいやばいやばいやばいやばいめちゃくちゃ好きすぎるし辛いしまじやばい 桃香さんが「未門」って呼ぶところ!!!今世では本人を目の前にして名前で呼ぶの初めて、だよね……?初めてが最期の時、なんて辛すぎるよ……っ😭😭しかも未門さんもそれに反応して記憶戻るし……っ 愛する人…桃香さんを自らの手で殺 し てしまった未門さんの気持ち考えると胸が張り裂けそうなくらい苦しいし何より桃香さんの「大好き」

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