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エミと一馬、食堂で食事をしている

一馬

エミちゃんありがとね、付き合ってくれて。

エミ

誘ってくれて嬉しかった。入院食には飽きてきたところだし、食堂の方が美味しいしね。

一馬

どう?少しは慣れた?入院生活。

エミ

そうだね。少しは慣れてきたかな。

エミ

一馬くんがいろいろ話し聞いてくれるし、助かってる。みんなでカードゲームするのも楽しいし。

一馬

よかったよ。ヨシキうるさいから苦手じゃないかと思ったんだけど。

エミ

ううん、全然。ヨシキ君、面白いし好きだよ。

一馬

……そっか。

エミ

しまった、これナス入ってた。

一馬

嫌いなの?

エミ

うん、嫌いだったみたい。見て思い出した。

一馬

そうなんだ。じゃあ僕がもらうよ。

エミ

ありがとう。なんか、好きとか嫌いって感情は思い出しやすいみたい。

エミ

このお肉は大好きだし、コーヒーも好きだし。

一馬

確かに。体に染み付いてるのかもね。

エミ

痛っっ

エミ、頭を抱える

エミの頭の中に浮かぶ光景 男性と向かい合ってコース料理を楽しんでいる。

一馬

エミちゃん大丈夫!?

エミ

うん、ごめんね、大丈夫。

エミ

今、断片的に思い出したの。男性と向かい合って食事してた。

一馬

うん

エミ

コース料理食べてて、相手の男性は楽しそうに笑ってて……

一馬

それって前夢に見た、追いかけられてた男の人?

エミ

ううん、違うみたい。今回の人は少しぽっちゃりしてたな。優しそうで、50代くらいの人だった。

一馬

もしかして、お父さんってことはない?

エミ

……お父さん。ではないかな。ピンとこないから。

一馬

そっか。エミちゃんって彼氏いたのかな?

エミ

え?

一馬

いや、なんか気になって。エミちゃんモテそうだから彼氏いたり……結婚してる可能性もあるでしょ?

エミ

結婚……でも指輪してないし

一馬

指輪してなくても結婚してる人はいるよ。なんか、それが気になっちゃって。

エミ

……

一馬

できればそう言う人、いなければいいな。

エミ

えっと、それは……

一馬

ごめんね、変なこと言って。忘れて。

エミ

好きとか嫌いとかの感情って思い出しやすいって言ったじゃない?

一馬

うん

エミ

だったら好きな人がいれば、思い出すと思うんだよね。男の人と話す機会もあるわけだし。

エミ

でも、思い出せない。夢で追いかけてきたり、今思い出した食事してた人も、そんなに好きって感情は無かった気がする。

一馬

……そうなんだ。

エミ

思い出せないってことは、それだけ感情がある人がいないってことじゃないかな。

一馬

そうだね。そう思うことにする。

エミ

一馬くんは?いないの?彼女。

一馬

いないよ。もう2年くらいはいないかな。

エミ

へぇ、モテそうなのに。

一馬

モテないモテない。仕事ばっかで出会いもないしね。

一馬

入院生活は嫌だけど、ここでエミちゃんに出会えて良かったよ。

エミ

そうだね。私も一馬くんに会えて良かった。運命、だと思いたいな。

一馬

うん、僕もそう思いたい。

エミ

……あとは早く記憶を戻したいな。もう4500円しかお財布になくて。入院費とか入院後の生活もあるしどうにかしなきゃ。

一馬

それは不安だよね。入院中なら助けられるし、退院してからも僕が力になれることならなんでもするよ。

エミ

ありがとう。

エミ

でも考えてみたらおかしいよね。キャッシュカードもクレジットカードも財布に入って無かった。

一馬

そうだね。でも僕は最近バーコード決済ばっかで近場なら財布も持ち歩かないけどな。

エミ

そっか、今はそういう人多いのかな。
でも私はスマホも持ってなかったし。

エミ

財布の中にポイントカードと現金しか無いのがなんか不自然な気がして……

エミ

痛っっ

エミ、頭を抱える。

エミの頭の中、ATMで現金を引き出す場面がフラッシュバックする。

一馬

エミちゃん!

エミ

何度もごめんね。

一馬

無理しないで。部屋に戻ろう。

エミ

うん。

エミの病室。 一馬に支えられ、エミは横になる。

一馬

じゃあまた。ゆっくりしてね。

エミ

ごめんね、ありがとう。

一馬、出ていく。

エミ

(私、キャッシュカードでお金を引き出してた。クレジットカードで買い物も……してた)

エミ

(誰かに意図的に抜き取られた?)

医師、入ってくる。

医師

エミさん、具合はどうですか?

エミ

相変わらず頭痛がひどいです。

エミ

何かを思い出そうとしたり、思い出す時に痛むみたいです。

医師

そうですか……先日行ったMRIでは異常が見つかりませんでした。

医師

追加でいくつか検査させてください。

エミ

わかりました。

エミ

あの、私って捜索願いとかは出されていないのでしょうか?

医師

今のところ、そういう情報は入っていません。

エミ

そう、ですか……

医師

情報が入ればすぐにお知らせしますね。

エミ

お願いします。

医師、出ていく。

エミ、無言で天井を見つめる。

……数時間後 部屋をノックする音

ヨシキ

エミちゃんいるー?

エミ

はーい、どうぞ

ヨシキ

おお、いたいた。おっ、今日はバッチリメイクじゃん!いいね!

エミ

ありがと。

ヨシキ

暇だしまたトランプでもしない?

エミ

うん、いいよ。みんなはもう集まってる?休憩スペース行けばいい?

ヨシキ

それがさ、一馬もナナちゃんも部屋にいないんだよね。ここきたらもしかしたらいるかと思ったんだけど、いないね。

エミ

……そうなんだ

ヨシキ

だから二人で神経衰弱でもしない?

ヨシキ

あ、大貧民でもいいな!

エミ

……トランプは後にして、院内を散歩でもしない?気分転換したくて。

ヨシキ

おう、いいね!なんかデートっぽいじゃん!

エミ

はは。じゃあ行こう。

エミとヨシキ、部屋を出る。

ヨシキ

さあて、まずは売店でも行ってみる?

エミ

うん。いいね。行こう。

ヨシキ

エミちゃんってさ今更だけどなんで入院してるの? 一馬には聞くなって言われてるけどそう言われると余計気になっちゃってさぁ。

エミ

え?あ、えっと、公園で倒れてて……

ヨシキ

なんで?貧血とか?いや、それにしちゃ入院長いよな。

エミ

あー、えっとその辺の記憶が曖昧なんだよね。実は自分が誰なのかもわからなくて。

エミ、キョロキョロしている

ヨシキ

マジー? 記憶が曖昧って記憶喪失とか?

エミ

うん、まぁそんなところかな。

ヨシキ

スゲー!!俺ドラマでしか見たことないよそういうの!

エミ

はは。あんまりいないよね。

ヨシキ

スマホ無いって言ってたのも、そもそもスマホがない記憶が無いってこと?

エミ

うん

エミ、周りを見回している。 ヨシキ、それに気づかず話し続ける。

ヨシキ

じゃあさ、何覚えてるの?自分のこととか家族のこととか。

エミ

え、あぁ。自分のことはエミって名前しか覚えてなかったけど、入院中に少しずつ思い出してきてる。

エミ

家族についてはまだ……

ヨシキ

そうかー。それは大変だな。でもさ、きっと思い出せるよ!なんとかなるなる!俺も協力するし!

エミ

あ、うん、ありがとう。

エミとヨシキ、売店に入る

ヨシキ

エミちゃん、何でも買ってあげるからカゴ入れてよ!

エミ

(……ここにはいない、か)

ヨシキ

おーい、エミちゃん?

エミ

え?あ、うん、ありがとね!優しいね、ヨシキくん。

ヨシキ

あったりまえよー!遠慮しないでいいからね!

ヨシキ、食べ物や飲み物を次々カゴに入れていく。

エミも遠慮なく、飲み物やお菓子をカゴに入れる。

ヨシキ

おー、ほんとに遠慮なしだな!

エミ

ねぇ、これ買ったら屋上行ってみない?

ヨシキ

屋上?なんで?

エミ

屋上でおやつ食べたいかなって。眺めもいいしリラックスできるよ。

ヨシキ

松葉杖だけどいけるかな。階段しかないよな。

エミ

私が支えてあげる。

ヨシキ

えっいいの?おしっ、じゃあ行こう!

エミとヨシキ、屋上に到着する。

ヨシキ

おー、初めてきたよ。眺めいいんだな。

エミの視線の先、ベンチに座る一馬とナナの姿。

エミ

(……)

ヨシキ

あれー、一馬とナナちゃん、ここにいたんだ!

一馬

おー、ヨシキ。あ、エミちゃんも。

ヨシキ

一馬、抜け駆けはやめろって〜!

一馬

はは。ヨシキほんとナナちゃん好きだよな。

ナナ

日光浴してるだけだよ。ずっと病室だと気分が塞ぐからって一馬くんが気を遣って連れてきてくれたの。

エミ

(……なんか、マウント取られてる?)

エミ

(私の体調が良ければ私を誘ってくれてたはずなのに)

一馬

ヨシキは無理矢理エミちゃん誘ったんだろ。

ヨシキ

あー?そんなことするかって。

エミ

ううん、私が来たいって言ったの。ヨシキくん松葉杖なのに付き合ってくれて。

一馬

そっか。

ナナ

ヨシキくん優しい〜!

ヨシキ

優しさの塊よ?!

ヨシキ

てかさ、みんなでトランプしようぜ!

一馬

今日は何する?

ヨシキ

神経衰弱かー、大貧民!

一馬

大貧民ってどんなだっけ?

ナナ

私もわからないなぁ。

エミ

……大貧民はなんか嫌だな。『貧民』って響きが嫌い。

ヨシキ

はは!貧乏は嫌いってことか!

一馬

じゃ、神経衰弱か。

ヨシキ

オッケー!じゃあ休憩スペース行こうぜー!

一馬

大丈夫?立てる?

一馬、ナナに手を差し出す。

ナナ

ごめんね、ありがとう。

ナナ、カズマの手を借りて立ち上がる。

エミ

……

エミ

ナナちゃんって何で入院してるの?

ナナ

えっ

エミ

ごめんね、失礼なこと聞いて。でもずっと気になってて。

ナナ

ううん、大丈夫。乳がんなの。何回か再発しちゃって入院と自宅療養繰り返してる感じかな。

エミ

(じゃ、死ぬからいっか)

エミ

そう、なんだ。教えてくれてありがとう。助けられることがあったら何でも言ってね。

ナナ

ありがとう。みんなで一緒に遊んでる時が一番楽しい。それが私の薬になってるよ。神様がくれたプレゼントかな、なんて。

エミ

(あれ、私今、恐ろしいこと考えなかった?嫉妬してるとはいえ……)

エミ

(最低なことが……頭に浮かんだ)

ヨシキ

おーい、早く行こうぜー!

一馬

ったく、松葉杖のくせに移動早すぎだろ。

ナナ

エミさん、いこう。

エミ

うん。

4人は屋上を出ていく。

病棟のシンデレラ

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