しばらくしてから 店のドアが開くような音が 賑やかな酒場に鳴り響いた。 こんなに周りの雑音が 煩く鳴り響いて居ると言うのに、 それにも負けないくらいの大声で 店の中へとでかい男が1人入ってきた。
柘浦
柘浦
クラスの奴らは声を聞くなりワイワイ 柘浦の元へ集まって行った。 肩をガッシリと組み合いながら 自然な流れで奥へと入ってきた。 狭い居酒屋がさらに狭く感じたが、 この狭さはどこか教室の中を 連想させ、 思い出へと浸ることが出来た。
柘浦
桜
蘇枋
元から賑やかだった俺らの周りは 柘浦が来たことにより さらに煩く鳴り響いた。 隣のヤツが特に騒ぎだしたから、 俺の肩や腕などに激しく当たってきた。
少し減った酒のグラス。 これが原因で ほんの僅かに酔っていて、 言い返す気力も残っていなかった。
ほんのり顔が暑く、 視界がボーっとした 眉を顰めながら、 静かに隣のヤツの攻撃を耐えた。
蘇枋
という声と共に、 俺は軽々しく持ち上げられた。 下にあるのは蘇枋の 少しゴツゴツとした足で、 顔を上に向けると 蘇枋の顔がすぐ側にあった。
蘇枋
本当に申し訳無さそうに アイツらしくもない表情を見せた。 蘇芳色の目が俺の事を 真っ直ぐ見つめ、 その後俺の返事を待たずして 酒を飲み始めた。
こういう事しなくたって、 俺の隣のヤツに 注意するだけで良かったのでは? とも思ったが 酒で心が浮かれていて、 こいつと離れたくないと言う思考が 込み上げてきた。 忘れなくてはならないこの気持ちを 酒の所為にして 俺は知らない振りをした。
蘇枋が酒を飲みこんで 喉仏が上下に動いた。 まだ酒の入っているグラスを テーブルの上へ置いていた。 中に入っている氷が、 少し揺らいで音を立てた。
蘇枋
桜
桜
座っている場所は 畳の上で、 とてもじゃないが この人数の多さでは、 座布団すらも置けなかった。 蘇枋は姿勢正しく、 正座で座って居た。
蘇枋
蘇枋
なぜ袖を捲らなければならないのか そう考えている内に 一言も喋らないでいると、 するりと蘇枋の骨ばった長い指が 服の袖を肘上位へあげた。
蘇枋
俺の疑問を優しく答え 袖を捲ったばかりの腕を 慎重に、ゆっくりじっくり 見つめていた。
蘇枋
確認が終われば 直ぐに捲り上げた袖を下ろしていた。 まだ皮膚に蘇枋が触った感覚が残り 少しこそば痒くなった。
酒をゆっくり嗜んでいると、 蘇枋越しに何かの衝撃が伝わってきた。 反射的に顔を上げると、 眉を下げ、 顔を少し顰めた蘇枋が居た。
蘇枋
桜
桜
桜
蘇枋の温もりを感じられないのは 少し寂しいが、 俺の代わりにコイツが 怪我するくらいならと考え 俺は元いた位置に戻ろうとした。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
そう恐る恐る聞いてきた 蘇枋の顔は 酒が入っていた所為か 少し赤く火照ていて、 俺は元居た位置へ 戻ろうとした足を止めた。
思考が酒に呑まれ掛けていた時、 明るい男の声が聞こえてきた。
楡井
楡井の俺谷を呼ぶ声を 聞いた瞬間 現実へと引き戻された。 我を取り戻した俺は、 急いで蘇枋の膝上から離れた。
楡井
楡井
蘇枋
蘇枋
さっきまで近くに居た蘇枋が、 俺を避けるように 楡井を俺達の間へ入れようとしていた。 少し心はモヤッとしたが、 俺はもうコイツとは別れた。 そう言い聞かせ、 俺も横のヤツに事情を話し、 楡井が入れるだけのスペースを作った。
楡井
楡井
桜
蘇枋
桜
楡井
桜
さっきまでの空気は 全く感じられない程、 此処は楽しげな空気へと変わり、 ここの周りに 桐生と柘浦も集まって来た。 飯を食ったり 酒をガブガブ飲んだりと、 それは楽しい時間を過ごした。
時間は過ぎ去り、 飲み会の時間も終わりに近ずいていた。 少しの寂しさが顔に出ていたのか、 周りのヤツらには背中を 思いっきり叩かれ、 また集まろうな!っと言われた。 この会話も少し気恥しかったが、 それと同時に嬉しさも込み上げた。
会計はこの場にいる全員で出し合い、 無事に飲み会を終え店を出た。 帰り道もまだ少し賑やかで、 時間が経つにつれて、 人数が減って行き 静けさが残った。
楡井
桐生
柘浦
蘇枋
桜
蘇枋
桜
桜
桜
自分で言っておきながらも 心臓が締め付けられる様に痛かった。 本当はもっと 恋人らしいことをしてみたかった。 別れた後は考えもしなかった思考が 酒の所為でどんどん湧き出てきた。
蘇枋
蘇枋
確かに結構酔っている。 腹の底から気持ち悪さが 溢れて来ていた。 視界も歪み 歩くのもしんどいくらいだ。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋の肩を借りながら 静かになった夜を 歩いた。 途中から記憶もなく、 気づけば家へ帰り 寝ていた俺は、
あの時の蘇枋の顔すら 覚えていなかった。
コメント
9件
最高すぎます!ブクマ失礼致します🙇🏻♀️՞
最後の蘇芳の言葉がなんか寂しそうに聞こえるのはなんだろう...( ; ; ) 楡井くん良いところに来すぎ...( ; ; )