仕事の説明を終えた僕は
百さんに紅茶を入れるため ティーポットを持ってくる
来夢
来夢
百
百
百
百
終始穏やかだった百さんが 初めて慌てた様子で声を張る
来夢
百
百
制止するように腕を抑えられる
軽く触れているはずなのに ティーポットを持った僕の手はビクとも しない
ち、力強っ…
来夢
百
百さんは僕の腕を掴んだまま 正面に回り込み
まるで主人に使える従者のように 片膝を付いてしゃがみ、諭すように続ける
百
百
来夢
百
百
百
来夢
来夢
先程まで顔もみられないほど 恥ずかしがっていた青年とは違う
柔らかく目を細め真っ直ぐ僕を見つめる
そんな風に言われたら反論できない
百
僕の見ながら答えを待っていた百さんは
何かに気づいたように小さな声を漏らす
来夢
その声に僕が反応しかけた時
愛衣
図書館の正面ドアが開き聞きなれた声が エントランスに響く
ずっと聞きたかった、恋しかったその声に 思わず少し涙腺が緩む
来夢
百
来夢
百
来夢
すごく自然な流れで百さんに話した後 「しまった!」と顔を背ける
愛衣
愛衣
僕が迎えに行くよりも早く
愛衣ちゃんはいつの間にか 部屋の入口に立っていた
ティーポットを持ったまま呆けている僕と
片膝をついて僕の手を握っている百さん
これは
勘違いされそうである……
愛衣
愛衣
愛衣ちゃんは僕の話を全て聞き終えると
「誤解とかは別にしていませんからね!」 と明るく付け加える
愛衣
愛衣
百
百
愛衣
愛衣
来夢
彼女には僕の全てを見透かされているよう な気がしてぐうの音も出ない
愛衣
愛衣
来夢
正直
愛衣ちゃんが来てくれたというのにという 後ろ髪を引かれる思い
そして百さんと2人きりにしてしまうという ジェラシーで(小声)
僕はもう少し居座ろうと 愛衣ちゃんの背中を押す手に抵抗する
来夢
愛衣
愛衣
愛衣
来夢
それがちょっと嫌なんだって……と 心の中で呟く
その時
百
百
思わぬところから助け舟
愛衣
百
百
百さんは僕に向き直る
百
百
来夢
来夢
悪夢の話は留宇にしかしていない
留宇が百さんに話したことも考えられるが
百さんが「体調不良」と表現していることからその線は薄そうだ
百さんは僕と愛衣ちゃんに座るよう促すと 話し出す
百
愛衣
来夢
来夢
来夢
百
百
来夢
愛衣
愛衣ちゃんは異能力や魔法にほとんど 触れてこなかった人だ
それでも
僕や留宇達ひまわりーずが 能力者である事を不思議なほどすんなりと 受け入れる柔軟な感性を持っている
今だって「気になって仕方がない」という キラキラした目線を僕に向けている
こんな所も僕が愛衣ちゃんに惹かれた 理由のひとつなのだろう
来夢
来夢
愛衣
来夢
来夢
僕の話を聞いて百さんは驚いたように 目を見開いて僕を見つめる
百
百
来夢
血の気が引くのを感じた
人の夢を見ることが出来 更に人の夢を自在に操作することも可能
つまり人の潜在的なトラウマを覗き見て 利用することもできるということ
来夢
昨夜の夢を思い出し足がすくむ
愛衣
僕の様子を見た愛衣ちゃんが 心配そうに顔を覗き込む
体が震え冷や汗が止まらない
これは……まずいかも……
そう思った時
百
百
百さんのひとまわり大きな手が 僕の手を包む
そのじんわりと伝わる温かさに 少し意識が引き戻された気がした
百
百
百さんは、夢属性特有の渦を巻いた様な 瞳を真っ直ぐ僕に向ける
百
百
来夢
百
百
百
来夢
僕としたことが
悪夢に引きずられ 思考まで沈んでしまっていたようだ
恐らく留宇は僕の夢の話を聞いて 他の誰でもない百さんが最適だと判断したのだろう
信頼している友人の信頼する人を 疑ってしまった
そんな罪悪感で百さんから目を逸らす
百
百
来夢
来夢
百
百
百さんは上着の内ポケットから キセルを取り出す
百
百
お香のような優しく懐かしい
不思議な香りが強烈な眠気を誘う
来夢
来夢
愛衣
愛衣
愛衣ちゃんの優しい声を最後に
僕の意識は途切れた
百
百
愛衣
愛衣
とても心が温まる夢を見た
彼女と初めて出会った日のこと
好きな本について語り合ったこと
お互いの気持ちを確かめあった日のこと
そして
未来の僕が望む日々のこと
来夢
来夢
過去には嫌な記憶も沢山ある
けれど
それが愛衣ちゃんと出会うための試練だと言うのなら
そんな過去なんて余裕でチャラに出来るくらい
僕は幸せなんだ
憂鬱な気持ちが解けていくのを感じると同時に、どこからか百さんの囁く声がする
百
百
百
バリバリバリ……
来夢
遠ざかっていく聞きなれない バイクの排気音で目を覚ます
愛衣
愛衣
来夢
来夢
愛衣
愛衣
来夢
寝起きのせいか何ともカッコつかない マヌケな返事をしてしまう
窓の外を見ると既に日は沈んでおり
木々の間から三日月が覗いていた
来夢
愛衣
寝る前まであれほど重かった気持ちが
まるで元から無かったかのようにスッキリしていた
来夢
愛衣
愛衣
来夢
ベルガモットと柑橘の優しくフルーティな香りが鼻をくすぐる
来夢
愛衣
愛衣
来夢
来夢
そう言いながらベッドから足を下ろすと
愛衣
来夢
来夢
じゃじゃ〜ん!と大袈裟にクッキー缶を掲げる彼女に
思わず笑みが零れる
愛衣
愛衣
来夢
来夢
来夢
愛衣
カップを用意し終えた愛衣ちゃんは ベッド脇の椅子に座りかけて
何かを思い出したように立ち上がった
愛衣
4つ折りのルーズリーフを受け取り 中を見る
そこには達筆な字で百さんからの気遣いと
電話番号、メッセージのIDが書かれていた
来夢
来夢様
ろくにご挨拶せず帰ってしまい 申し訳ございません
来館人数……〇〇人 貸出……〇〇〇冊 返却……〇〇冊 内訳は管理台帳をご確認ください
体調はいかがでしょうか
来夢様の悪夢をいただき、幸せな夢に 書き換えさせていただきました
本当に愛衣様の事を大切に思っていらっしゃるのですね。 とても微笑ましく思います。
紅茶がお好きとの事でしたので 丁度先日購入したクリスマスアールグレイを置いていきます。
ひまわり依頼所の紅茶好きの仲間からオススメされたものですので、お口に合うと幸いです。
いつか来夢様のいれた紅茶もいただきたいですね^_^
僕がお役に立てることがあれば いつでも遠慮なく呼び出してください。
来夢様の夢に 幸多からんことを
百済 百
コメント
8件
全員かわいくてよきですね〜🥰🥰 来夢様の淹れた紅茶はいくらですか
三人がお互いを大切に思っていてとても素敵です!