恋は呪とも言う
僕は、愛し愛される君を決して愛してなどいなかったと思いたい
分厚い雨雲が僕に焼き付いた
僕
言葉が詰まらないのは、きっと1人だからだ
孤独だからだ
僕
後悔するには、もう遅い
僕は捨て子
それ以上でもそれ以下でも無い
僕
親だった存在が、優しかったのか、辛かったのか、苦しかったのか、生きているのか
僕は知らない
僕
ここは別に悪い場所ではない
やや古びた和風の家が好きだ。夏は風鈴が鳴り、冬はコタツが引っ張り出される
優しくて物足りない場所
僕
皆の前で喋れば怪訝な視線を向けられる
何故だろうか。僕は幼き頃から人前じゃ言葉が詰まって苦労し続けている
僕
僕
1人、僕に話し掛ける物好きがいた
真偽不明の愛を僕に囁く変な奴
僕
どうして、 は僕なんかにバレる嘘を何が楽しくて言っているんだろう
何も理解出来ない
僕
僕はため息を噛み殺した
僕と の出会いは数年前だった
僕
見ただけで僕が苦手とするタイプだというのが目に見えて分かる
目をそらせば変わらない景色を映す窓を、厚手のカーテンでゆっくり閉じる
僕
比較的悪いよりの出会いにも関わらずこうなってしまうとは微塵も思っていなかった
そんな特に近づかず遠からずの日々を送る僕らに変化が訪れた日があった
僕
僕は酷い風邪を引いてしまった
元来身体の弱い僕は、風邪をすぐ拗らせてインフルなのかと疑われる始末だ
検査結果が風邪であれど辛いものは辛い
僕
少し弱くなった心のせいか理由不明の水滴が僕の頬を一粒、また一粒と伝る
アイナシの心は悲鳴を上げていた
僕
そう口にした、まさにその時
が心配そうな顔で僕を訪ねた
僕
マスク越しでも分かるくらいの笑みを、いつもとは違う優しげな笑みを
僕に向けた
僕
熱のせいだろうか。僕の心臓が波打った気がした
僕と の交流はあの日から始まった
僕
秋めく日々に木が暖かな色へ染まる
「美しい」とは、今この瞬間の為にある表現なのだろうと思わせた
僕
ふと を見ると目が合う
これは が僕を見つめていた証拠だ
そう言うと は視線を逸らす。その顔は目の前の景色と同じくらいに紅かった
それを見て僕は何だか不思議に思う
僕
愛される君には僕を見る理由など無いだろうに
僕は視線を上に戻した
と話す度に高鳴る胸を認められない。波打つ鼓動は僕の気持ちそのものだ
僕
仮に心臓の病気ならそれで良い。 をどうでも良く思えるだろうから
愛したい心と現実は何一つ噛み合わなかった
また、 が声を掛ける
僕
君は僕が断れないのを知ってか知らずか、人を惹きつける笑みを浮かべた
裏庭の、誰も来ない場所
今だけは僕と だけの平和で平穏な世界
何となく予想出来た結末。でも、決められない選択肢
僕
言ってきた が僕の返事も聞かずに…いや、聞こうとせずに遮る
僕
その顔は皆を惹きつけるあの笑みではなく、ただの淋しげな人の顔だった
僕
予想もしてなかった事実に、想定外の声が漏れる
その瞬間、 をぶん殴りたいと初めて思った
僕
僕
いつもよりも感情が出てくる気がする。言葉も普段より滑らかである
何処かこの光景が他人事に思えた
が笑う。涙が伝う。泣き笑いだ
僕
何故に は忘れられたがりなのか。僕には到底分からないし、分かりたくない
でも、知りたい
それは の過去であった
笑みは崩れて、涙だけが残る
僕
僕はとうとう身体ごと崩れた の慰め方なんて何も分からない
アイナシの僕が憎らしく感じた
僕
僕は を抱きしめる
僕
「 」
それから程なくして は死んだ
人の最期とはこんなにもあっさりしているのだろうか。悲しいのだろうか
僕
僕は を忘れることにした
もう、あの時のような言葉遣いはしない。使わなかった敬語で話そう
もう、 の名前なんて出さないようにしよう。 の名前は空白で良い
もう、心臓の鼓動は病気って事にしよう
だって、 なんて存在していないのだから
僕
雨音がやけに響いた
あの日みたいに横になる
別に体調は悪くない。ごくごく普通だ
僕
かつての君が僕に話し掛ける時の口癖
ねぇ、 。君の病気、きっと僕にも伝染ちゃったみたいなんだ
を殺した心臓病になったんだ
僕
と居た時はドキドキしてた、今は痛い心臓はきっと病気なんだよ
僕
僕は孤独じゃないと話せないんだろう
やっと で人前でちゃんと喋れたのに、僕を置いていった馬鹿な君
僕
病気なら死ぬ
なら、会える
僕
「僕も好き」
コメント
4件
投稿待ってましたぁぁ! 相手の子が自分のことを本当に好きだってことを知れても、死んでしまうなんて辛すぎる、、、 きっと生きてたら幸せに2人で暮らせただろうに、その上渚央ちゃんも同じ心臓病になってしまうとか余りにも辛い展開すぎません!? みんなの過去しんどすぎる、もうお腹いっぱいですね☆ でも過去編ももうそろそろで終わるんですね!こう見るとかなりあっという間! 次回も楽しみです!!✨投稿お疲れ様!🍵
読んで下さりありがとうございます!作者のぬんです! 久しぶりの投稿になりました〜… 兎にも角にも、次回で過去編は終了して本編が大きく進むと思います! 元々葉過去編にここまでかける予定ではありませんでしたが… ついつい筆がのってしまって… ちなみに親に捨てられた以外は私が勝手に付け足しました! すみません! 次回もお楽しみに〜