大輝
はぁ...
午前4時40分。
俺は今、海辺に立っている。
何故ここに居るかって?
この世界に嫌気がさしてきたんだ。
かっこいいこと言ってるように聞こえるけどさ、
理由になってないよね。
俺は今日、
死ぬ。
この世界から抜け出せると思って。
自由になれると思って。
大輝
はぁ...
俺のため息を飲み込むかのように波が寄せてくる。
大輝
俺もこんな風になれてたらな...
???
何してるの?
大輝
えっ?
大輝
(こんな時間に俺の他に誰かいるのか...?)
???
ねぇ、聞いてる?
大輝
君は...
少女
名前は秘密
大輝
...え?
少女
ふふっ
少女
個人情報じゃん
大輝
こんな時間に何してるの?
大輝
同い年...
大輝
いや、一個下ぐらいだよね?
少女
そんなこと言ったら君だってそうじゃん
大輝
俺は...
大輝
(死に来た、とか言ったら止められるのかな...)
少女
死に来たの?
大輝
えっ
少女
こんな時間に来る人なんてさ
少女
日の出を見に来た人か
少女
少女
自殺しに来る人しかいないもん
大輝
少女
ふふっ
少女
図星かぁ
大輝
ま、まぁ
大輝
大輝
じゃあ君の方こそ...
少女
待ってるの
大輝
待ってる...?
少女
そう
大輝
誰を?
少女
誰って...
少女
んー
少女
少女
ま、それも内緒
少女
少女
あっ
少女
君じゃないよ?
大輝
そんなの分かってるよ笑
大輝
てか
大輝
何も分かんねぇじゃねぇか
少女
ふふっ
少女
ほんとだね
少女
少女
ねぇ
少女
1ついい?
大輝
何?
少女
なんで死のうと思ったの?
少女
この世界に飽きたから?
大輝
ま、簡単に言えばそうゆうこと
少女
詳しく言えば?
大輝
俺が死んでも悲しんでくれる人がいないってことに気づいたから
少女
そうゆうパターンか...
大輝
どうゆうパターンだよ笑
少女
なんでもないよっ
大輝
お、おう
5時00分。
少女
そういえば、もうすぐ日が昇るよ
大輝
そうだな
少女
君と話せて嬉しかったよ
少女
私の話し相手になってくれてありがとう
大輝
俺の方こそ最期に話してくれてありがとう
少女
また会えるかもしれないね
大輝
俺はもう死ぬんだよ
少女
あっ
少女
そうか
大輝
うん
光が一筋海の向こうからさしてくる。
少女
...君はさ
大輝
ん?
少女
死んだら悲しんでくれる人がいないってって言ってたよね
大輝
うん
太陽の光が海面をキラキラ照らしている。
少女
それって、自分を必要としてくれる人がいないってこと?
大輝
まぁそうなるかな
少女
君は勘違いしてるよ
大輝
え?
昇り切った太陽が俺たち2人を照らしている。
少女
君を必要としてるのは、ここに居るじゃない
大輝
大輝
え......
目を細めながら地平線を見つめる少女に
影はなかった。