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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

烏面の女

どうしたの? じっと見て?

佳澄

あ、いや、その──

烏面の女

意外と私が小柄で驚いた?

佳澄

烏面の女

図星だ♪

烏面の女

成人男性1人くらいなら、担ぎ上げることができるよ

佳澄

……マジか

烏面の女

マジよ

烏面の女

烏面の女

生前“兄弟“たちに鍛えられたからね

佳澄

え?

烏面の女

こっちのこと♪

烏面の女

着いた

重厚そうなドアがポツンとあった

佳澄

……道の真ん中に、ドア?

烏面の女

このドアをくぐれば帰れるよ

彼女はドアノブを掴み捻る

ギィ

開くと、そこは真っ白な空間が広がっていた

思わず戸惑う

佳澄

烏面の女

背中を押してあげようか?

佳澄

……いい

意を決して一歩を踏み出した

ズキっ

佳澄

……!

突然の頭痛に佳澄はよろめいた

烏面の女は倒れないよう支える

ズキっ

佳澄

(……あ、そうか……)

佳澄

佳澄

……俺……事故に遭ったんだ

佳澄はすべてを思い出した

ふたりを先へ行かせたあと、予定の時刻より遅くバスに乗った

バスは発車し順調に行けば15分ほどで水族館に着くはずだった…………

乗っていたバスがトラックと衝突し、事故を起こした

キキー

ガッシャン

大きな音が上がったかと思うと、何かが衝撃を受けた

目の前がまるでスローモーションのように流れていく

気づけばうつ伏せに倒れていた

頭を打ったのか意識が朦朧とする…………

佳澄

遠くでサイレンが鳴る

佳澄は気を失った

烏面の女

思い出したんだね?

佳澄

……ああ

佳澄

佳澄

……俺は、生きてるのか?

烏面の女

生きてるよ

烏面の女

まだ寿命も残ってるし

烏面の女

だから──

佳澄

……だから?

烏面の女

早く帰りなさい

ドアをくぐるよう促す

佳澄

佳澄

──あの、さ

烏面の女

ん?

佳澄

いろいろ、ありがと

烏面の女

気にしないで♪

烏面の女

今度はちゃんと長生きしてから、“川岸“に来るんだよ

彼女は佳澄の背中を押した

そして────

佳澄

佳澄

……ここは?

佳澄は病室のベッドに横たわり呼吸器と点滴が付けられている

佳澄! 気づいたのね!

ベッドの脇に両親がいた

佳澄

……母さん

母親は涙ぐむ

先生を呼んでくる!

佳澄

……俺…………

よかった!

程なくして医師とともに父親は戻ってきた

あとで聞いた話によると、佳澄は病院へ搬送されたが、すでに昏睡状態に陥っていた

医師たちの懸命な措置でなんとか一命を取り留めるものの予断は許さない

それから数時間後──

生死の境をさまよった佳澄は無事帰還した

ニュース速報

バスとトラックが正面衝突し、軽自動車も巻き込む事故が発生

ニュース速報

続報
事故による死傷者10人超える

2日後

竜一郎

佳澄ちゃん、退院おめでとう!

ぎゅー

佳澄

……抱きつくな

珠希

身体の方は大丈夫?

佳澄

佳澄

大丈夫だ

佳澄

身体を打ったといっても、軽傷で済んだし

佳澄

頭にも異常は見当たらなかったって

珠希

本当によかったよ

佳澄

……心配かけて悪かったな

佳澄

それに付き添いも

珠希

気にしないで

竜一郎

オレだって佳澄ちゃんのこと、心配したんだから…………

佳澄

……悪かったよ

竜一郎

竜一郎

万が一のことがあったら、オレ…………

佳澄

泣くな

竜一郎

うぅ……、だって…………

佳澄

とにかく涙を拭け

珠希

ハイ。ハンカチ

竜一郎

──佳澄ちゃんのがいい

佳澄

……お前、珠希の厚意を無下にすんな

珠希

竜一郎くんらしいね

その後、退院祝いにと買ってきたケーキを食べ、他愛のない会話をする3人

佳澄

(そういえば──)

ふと烏面の女のことを思い出す

佳澄

(名前、なんだったんだろうな──)

そんなことを思いながら、かけがえのない日常を噛みしめるのだった

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