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霧島くんは普通じゃない ~転校生はヴァンパイア!?~
□1 転校生は普通じゃない
誰も居ない夜の学園でピアノの音が聞こえる___。
そう聖セレナイト学園の生徒達の間で噂されるようになったのは、六月の梅雨に入ってすぐのころ。
私の名前は日向美羽。
肩までのまっ黒な髪とまっ黒な瞳の中等部一年生だよ。
予知能力ってわけじゃないけど、なにかトラブルが起きそうな気配を感じたり、誰かが困っていたりするとなんとなくわかるんだ。
それで困っている人を助けたいって行動して失敗しちゃったりもよくあるだけどね。 親切と余計なおせっかいって紙一重なんだって。
それでも私の性格はかんたんには変えられないし、知りたい気持ちも押さえられない。
だから噂のことも凄く気になってるの!
だって夜の学園でピアノの音がするなんて、なんだかロマンチックじゃない?
同じクラスの風花ちゃんは不気味だって怖がってるけど、弾いているのが亡霊だったとしても、恋人を思って___、とかね
なにか理由があるんじゃないかと思うとどうしても知りたくなっちゃう。
けれどクラスの皆が一番気になっているのはその事じゃなくて_____、
風花
今日から登校してくる転校生の事なんだ
クラスの話題は朝からその話で持ちきり
みんな転校生がっっこに座るんじゃないかって、噂してる
やっぱりっていうのは朝から私の席の隣に、ひとつ新しい机が増えていたから。
私の右隣で、廊下側の一番後ろ。
隣に知らない子が座るのかぁ。ちょっと緊張するかも。
風花
前の席の風花ちゃんが振り向いてこっそり、情報を流してくれる
風花ちゃんとは小学校が違って、同じクラスになってから、仲良くなった友達。
ふわっとしたロングヘアで、喋り方もゆっくりしていて、優しい女の子
美羽
思わずテンションが上がっちゃった
丘の上の洋館はずっと空き家で、凄く大きくて豪華な建物だけど、年代物って感じでなんなら幽霊とかでちゃいそう。
壁にはツタが絡まり付いていて、うっそうとした雰囲気かもしだしている
あの古い洋館にまさか引っ越してくる人がいるなんて!
美羽
がぜん興味が湧いちゃう
女の子だったらお友達になっていえいえにお邪魔できるかもしれない
洋館の中が、どんな風になっているのか気になる、凄く
風花
美羽
ちょっとがっかりした
風花ちゃんは
風花
と言っているけど、私にはピンとこない
アニメやマンガの中では、こんな男の子が彼氏だったらなぁ。って思う事はあるけど。 でも現実の男の子って、そうじゃなくない?
私にとって現実の男の子といえば、からかってきたり、掃除をサボったりする、ちょっと困った存在だ。
風花
風花ちゃんはそう言うと、前を向いて姿勢を正した
転校生が男の子でも皆で仲よくなれば、洋館遊びに行ったり出来るかもしれない。
私は期待を胸に膨らませて先生を待った
がらり。
教室の扉があいて、担任のホツタ先生が姿を現した
そのあと、先生に続いて入ってきた男子の姿に、クラス全員が息を飲んだ
すごく整った顔立ちの男の子だったから。
ふわっとした黒髪で、長めの前髪の下にある瞳は、まっ黒で、黒曜石のようだった。 それから、すっと通った鼻筋にきれいな形をした薄い唇、とがったあご
全てがととのっていて、私達とはまるで違う存在に見えた
顔も小さいし、まるで芸能人みたいだなぁ
転校生はむっつりと口を一文字に結んでいるけど、それすら絵になっている
ポカンとしている私達を見て、ホツタ先生も苦笑していた。
ホツタ先生
先生がホワイトボード黒いペンで名前を大きく書いていく
霧島 星
ホツタ先生
セイ
霧島くんはホツタ先生の言葉に、真っ向から逆らった
これにはホツタ先生もびっくりしていた。もちろん私達も
だって霧島くんは恥ずかしそうな態度でもなければ、緊張している様子でもない
普通っていう、むしろ不機嫌そう?
こんなふうに先生に逆らうような生徒ってうちのクラスにはいない
霧島くんってもしかして不良なのかな?
胸がドキドキしてきた
ホツタ先生は
ホツタ先生
とか、
ホツタ先生
とか話しかけていたけど、なにを聞いても霧島くんの答えは
セイ
だった
ホツタ先生
さいごにそういったホツタ先生の顔は完全にムッとしていた
あーあ。先生の機嫌そこねちゃった
霧島くんは先生のこと怖いと思わないのかな?
真新しい制服を着た霧島くんが机の間の通路を通って、こっちに向かってくる
クラス全員が、彼に注目している
もちろん私も
転校初日からこんな悪い態度をとる転校生って普通じゃないもん
どんな子なんだろう
ゆっくりと歩いて私の横を通りすぎたとき、ふわっといい匂いがした
かすかだけど、花のような、さわやかで甘い匂い
どこかで嗅いだことがあるような、でもどこにもないような、なんともいえない香り
美羽
思わず声に出しちゃった
自分の席に座ろうとした霧島くんは、ビクッと驚いたように私を見た
私も霧島くんの顔を見ていたから、当然のように目があう
その瞬間、体の中に電気が走ったみたいにビリっとした
...え!?
普通じゃない。霧島くんには何かを感じる
霧島くんのくっきりとした目が私をまっすぐととらえていた
目をそらせない。綺麗な瞳に吸い込まれちゃったみたいに
教室の中なのに、周りの存在も忘れて、私は、ただ霧島くんと見つめあっていた
霧島くんも同じように動かない
まるで時間が止まっちゃったみたいだった
先に動いたのは、霧島くんだった
はっとしたように霧島くんは、私から視線をそらして席に着いた
それで私も我に帰った
美羽
そう思いながらも、まだわたしは霧島くんのことを目でおっていた
近くで見ても、男の子なのに、肌もすべすべだし、くっきりとした二重の目は本当に綺麗だなって思った。だけど、霧島くんの事が気になるのは、それだけじゃない
うまくいえないんだけど、なんか気になるんだ。すごく
だけど霧島くんはさっちとはちがって、私の視線に居心地が悪そうに顔を歪めて、つぶやいた。
セイ
美羽
美羽
私はカチンと来てしまった
美羽
小声で反論すると、霧島くんは前を向いたまましらっと
セイ
と私しか聞こえないように呟いた
その言葉に目がまん丸になった
美羽
できれば仲よくなって、洋館に招待されたい、なんてあわい期待は、しゅーとしぼんでしまった
あんなふうに言われたら、ぐいぐいはなしかけられないよ。
あきらめるしかないかあ
美羽
そう思って先生の話に集中することにした
ホツタ先生
列の前からプリントが回される
風花
美羽
受け取ろうと手を差し出した時、ピッとプリントの端が、指の腹をかすめた
美羽
小さく鋭い痛みが指に走る
ああ、やっちゃった!
顔をしかめて人差し指を見ると、赤い線が走って、そこからぷっくりと、血が盛り上がっているのが見えた
うわ、切れてる
反対の手指を押さえようとしたとき、視界に別の手が伸びてくるのが見えた
美羽
私が小さく声をあげるのと、霧島くんが私の手首を掴むのとが、同時だった
そのまま霧島くんは、血がちょこっとだけでた私の指を、自分の方へとぐっと引き寄せ__、
パくっっと口に加えた
美羽
自分の指をきっちゃった時に、自分でくわえるときはまあ、ある
だけど人の指だよ!?
しかも初対面の!
(一応)女子の!!
なめたッッ!!!
私はパッと、自分の指を霧島くんの口から引き抜いた
なめられた指を、かくすように反対の手でおおう
心臓のおとが物凄い勢いでどっどっとなっている
ホツタ先生
突然大きな声をあげた私のホツタ先生が声を掛けた
前の席の風花ちゃんも斜め前の佐野くんも、不思議そうな顔で私を振り返っている
霧島くんが私の指を舐めたのは、誰も見ていなかったみたい
チラッと隣を見ると、霧島くんはそ知らぬ顔で、廊下の方に目を向けている
美羽
美羽
そう言うしかない
だって霧島くんに指をなめられましただなんて、恥ずかしくて言えない
きっといっても、だれにも信じてもらえない
私だってしんじられないもん
だけどあの感触は、たしかみ指をなめられた
男の子に指を...
わああああ!
想像したら恥ずかしくなって、ジタバタしたい気持ちを必死でこらえた
先生は普通にHRを進めて、さっきの事はもう誰もきにしていないみたいだった
そっと隣の席の霧島くんを見ると、頭を抱えるようにして、うつ伏せている
体調悪いの?
美羽
その時霧島くんが小さく呟いたのを、私はききのがさなかった
セイ
霧島くんは確かにそういったんだ
霧島くんが転校してきたその日は、外は暗くて、しとしと雨が降っていた
_____普通じゃない日々が始まる
そんな予感にふるえたんだ
Heart→10