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天羽(そらは)🍭💚❣️🌸
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静寂が耳に痛い。しん、と静まり返った部屋の中、時計の秒針だけがカチカチと音を刻んでいた
いるま
とぼとぼとリビングに戻り、ソファの上で丸くなった。なつさんの残り香がまだ布団やクッションに染みついている
いるま
目の前には昨夜なつさんが脱いだ服が置いてあった
黒いパーカー。脱ぎっぱなしでソファの背もたれにかけてある
まだほんのり温もりが残っていそうな生地
いるま
視線がパーカーに吸い寄せられた
猫というのは飼い主の服を寝床にする習性がある
マーキングの一種だとか、単純に安心するからだとか理由は諸説あるが
いるま
ふらふらとパーカーに近づく
前足でちょいちょいと触ってみる。くんくんと匂いを嗅いだ
いるま
もう止められなかった
するりとパーカーの中に潜り込み、襟元から顔を出す
ちょうどフードがいるまの頭にすっぽり被さる形になった。完全になつさんのパーカーを着ている猫
いるま
ごろんと横になり、パーカーの中で丸まった。前足をちょこんと折りたたみ、フードの紐をじゃらじゃらと前足でいじる
いるま
ふと冷静になった。好きな奴の服に包まってゴロゴロしている猫。人間だったら完全にアウトな絵面
いるま
30分後。
いるまは寂しさで死にそうだった
最初は幸せだった
しかし人間、もとい猫の孤独というのは時間が経つほど膨れ上がるもので
いるま
ごろん、と寝返りを打つ。またごろん。さらにごろん
パーカーの中を転げ回っても虚しさは消えない。むしろ彗の不在が時間とともに輪郭を増していく
いるま
ふいに玄関の方からがさっと音がした
いるま
ばっとパーカーから飛び出し、玄関に全速力で駆けた
しかしドアは開いていない。代わりに郵便受けからチラシが落ちただけだった
いるま
しょんぼりとその場に座り込む。耳がぺたんと垂れた
いるま
ふと、テーブルの上が目に入った。さっきなつさんが置いていったちゅーるが無造作に転がっている
食うなと釘を刺されたあれ
いるま
悪魔の囁き。空腹と孤独がタッグを組んで誘惑していた
でも結局はなつさんの指で食べなければあの幸せは感じられなかった
ちゅーるの前に座って、じっと見つめた。封は開いているが中身は出ていない
いるま
前足でちゅーるを押してみた
にゅるっと中身が少しだけ出たが、あのとろとろの美味しい部分は奥に隠れたまま
いるま
がじがじとちゅーるに噛み付く
魚の味はするのだが、昨日のあの指から直接舐めた時の衝撃的な美味しさには遠く及ばない
いるま
あの時、彗の長い指にちゅるっと絡みついたとろりとした液体
それを一本ずつ丁寧に舐めとった時の感触。温かい指の腹、爪の硬さ、関節のくぼみ
いるま
いるま
顔が熱くなる感覚。猫なのに。体は猫なのに、心臓だけが人間の男子高校生のまま暴れ回っている
いるま
ばたばたと前足で顔を覆った
脳裏にはなつさんの低く甘い声と、指を舐めた時の記憶がこびりついて離れなかった
駄目と言われていたが彗の部屋に向かった
とことこと廊下を歩いて、なつさんの部屋のドアの前に立った
いるま
ドアは閉まっている。が、下の方にわずかな隙間があった
いるま
するりと体を滑り込ませた
いるま
ふらふらとベッドに向かってシーツに顔を突っ込んだ
いるま
ごろごろと転がりながら、枕、シーツ、布団と匂いの強い場所を渡り歩いた
もはや完全にマーキング行動
いるま
その時。ガチャリと玄関から音がした
いるま
玄関へ向かった