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大学3年の冬、俺はある人に出会った。
大学に入ると同時に始めた某有名カフェでバイト。 3年も働けば慣れるもんで今日もいつも通り淡々と 仕事をこなしていた。
お客さんが続々と並び忙しさを感じ始めた頃、 俺のレジに来たお客さんは顔をマフラーに埋め俯いたまま メニューを指差した。
大 吾 .
彼はサイズ表記の部分のトールを指差した。
大 吾 .
俺の説明を聞き終える前に彼はアイスを指差し
てか俺さっき聞いたやんな?ほんでこの寒い冬に アイスなんか。
大 吾 .
彼は500円玉を出し、おつりの25円を渡す。
ちゃんと彼の手に置いたと思った25円は1枚だけ 取りこぼし、チャリーンと音を立てて落ちた。
彼は気付いてない様子でドリンク受け取りの方へ 向かっていた。
大 吾 .
そこそこ大きい声で呼んでも振り返ってはくれず、 他のお客さんが俺の声に驚いてザワついてきた。
仕方なくレジを離れ彼の元へ行く。
イヤホンでも付けてるのか呼んでも反応はないので 肩を叩く。
大 吾 .
振り返った彼はとても綺麗な顔をしていた。 一瞬女の子かと思ってしまうくらいで、俺は完全に 一目惚れした。
彼は驚いたような顔をしておつりを受け取ると 笑顔で手を動かし始めた。
流 星 .
口の動きをしながら手話をした。
それは俺でも分かるレベルの手話。っていうか 唯一分かる手話。
その瞬間さっきまでのやり取りの意味が全て分かった。
喋らないのも、聞こえないのも。
彼が口の動きを読めるかは分からないけど、 手話が出来ないから「どういたしまして」って どうにかして伝えようと精一杯口を大きくはっきり 動かした。
彼は笑顔で会釈をして去っていった。
その日はずっと彼のことが頭から離れなかった。