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流星side
僕は中学生の時に耳が聞こえなくなった。
後天性難聴といって、僕の場合は補聴器をつけたら ギリ声として認識できるくらいで言葉はほとんど 聞き取れない。そして聞こえなくなった原因はいじめ。
いじめのストレスと頭殴られた時の衝撃で 聞こえなくなった。今でも鮮明に覚えてる。
その後どんどん聞こえなくなっていき、僕をいじめてた奴は 親と一緒に謝罪しに来た。そいつはだいぶこっ酷く 怒られたのか、まるで別人のように大人しかった。
許すつもりは微塵もない。そいつのせいで僕の人生は いじめられることなんかよりもっとどん底だ。
それからは引きこもりとなり中学も卒業式まで休み続け、 受かっていた高校も入学式こそ出たものの 耳が聞こえないせいで周りに馴染めずすぐ不登校になった。
高一の最後の方、出席日数が足りないから 進級出来なくなると言われて保健室登校をした。
そこで出会ったのが保健室の先生。
先生は僕と一緒に手話を覚えてくれたんだ。
高校三年生になった今、引きこもりの不登校だった僕は 先生のおかげで保健室とはいえ毎日登校できるように なった。
最近は一人でお店に入ることも挑戦していて、 この前はずっと憧れていたカフェに入った。
その日は先生とネットでメニューを見て何を頼むか決めて、 聞かれることも事前に調べて万全にの状態を作って いざ一人で向かってみた。
店員さんからしたら態度が悪いかもしれないけど メニューを全て指差して伝えた。
筆談やスマホで文字打ちすれば伝えられるけど それをしないのは心のどこかで耳が聞こえないことを 認めたくない自分がいるから。
手話を使ったりするのは「僕耳が聞こえません」と 周りの人にアピールしているみたいでそれが嫌で 先生の前以外では使えなかった。
緊張して店員さんの顔は見れなかったけど注文は割と スムーズに伝わったと思う。
予想通り注文を終えて受け取りの方へ向かう。
すると突然肩を叩かれた。聞こえなくなってからは これをよくされるようになったけど今でもこの瞬間は 慣れない、びっくりする。
振り返るとそこには見惚れてしまうほど綺麗な顔をした お兄さんがいた。エプロンからして多分さっきの店員さん。
彼の手には10円玉。 僕の手にはおつり25円と書かれたレシートに 15円が握られていた。
落としたことに気付かなくて わざわざ持ってきてくれたんだ。
その時の僕は彼にならなんでか 手話を使ってもいいと思った。僕に出来る最大限の ありがとうを伝えたかった。
伝えるかは分からないけど、手と口を精一杯に動かした。
彼は僕の耳が聞こえないことに気付いたのか、 「どういたしまして」と大きく口を動かした。
僕は口の動きは読めない。だけどこの時は はっきり分かったんだ。