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同時刻――上野原高校教員室

ホソヤ

くそ、ふざけやがって!
きっと生徒の悪戯ですよ!

校内放送を聞いた体育教師のホソヤ先生が、教員室から飛び出そうとする。

体格と名前がこれほどに相反している人も珍しい。

イガラシ

ちょっとホソヤ先生、待ってください!
こういう時は下手に動かないほうがいいです。

イガラシセイヤはホソヤの腕を引っ張って引き止めようとするが、しかしホソヤはそれを振り払う。

ホソヤ

イガラシ先生――。校内に爆弾が仕掛けられているなんて本当に信じているんですか?

ホソヤ

早く手を打たないと、生徒達にも動揺が広がるじゃないですか。

キョウトウ

こんな時に限って校長がまだ来ていないなんて――。

イガラシ

とにかく、まだ生徒達も現状を把握していないし、パニックにはなっていないみたいです。

ふと、ブラインドから外を覗いた女性が、顔を真っ青にしながら口を開く。

フワ

あの、外――パトカーが沢山集まってるんですけど。

新人教師のフワだった。名は体を表すとはよく言ったもので、まだ学生気分が抜けていないのか、どこかフワフワとした印象のある教師だった。イガラシから見れば、属性的にはまだ生徒達のほうが近い。

オオタ

なんか、ネットでも騒ぎになってるみたいですよ……。

自身のスマートフォンを手にしながら呟く女性はオオタ。彼女は養護教諭――保健室の先生というやつだ。ホソヤと名前が逆だったらいいのにと、イガラシは普段から思っているが、そんなことは絶対に本人達には言えない。

キョウトウ

ちょっとテレビを――。何か情報があるかも。

テレビ

こちら、謎の人物達から占拠されてしまった上野原高校です。ご覧ください。集められているのは警察とマスコミのようです。

見慣れた景色がテレビに映る。生放送だろう。

テレビ

マスコミ各位に犯行声明文が出されたのは、つい先ほどのことでした。

テレビ

犯人達は自らを【革命軍】と名乗り、校内を占拠しているようです。

テレビ

校内に取り残された教員、及び生徒達の安否はいまだに明らかになっていません。また新たな情報が入り次第、お伝えさせていただきます。

ホソヤ

はぁ?

ホソヤ

占拠?

ホソヤ

さっきも校内放送でふざけたことを抜かしていたが、どこも占拠されていないじゃないか!

ホソヤ

ちょっと放送室に行って来ます!

ホソヤ

悪戯にしたって度が過ぎる。

ホソヤは憤慨した様子で教員室を出て行ってしまった。

止めようとは思ったが、その剣幕にイガラシは圧倒されてしまった。

オオタ

あの、爆弾が仕掛けられているって本当なんでしょうか?

イガラシ

――嘘とは言い切れませんね。

キョウトウ

いやいや、そんな非現実的なことがあるわけないじゃないですか。

イガラシ

いいえ、事実は小説より奇なり――なんて言葉があるくらいですから、慎重に動かないと。

イガラシ

幸い、外部との連絡は取れるようですし、今はなるべく犯人を刺激しないようにしたほうがいい――。

キョウトウ

イガラシ先生、まるで知ったかのような口ぶりだね。

現在、校長が不在なため、有事の判断は教頭の責任になる。だから、焦った勢いでイガラシに八つ当たりしているのだろう。

イガラシは小さく溜め息を漏らすと、教頭を含め、教員室にいる人間を安心させるために、あのことを話すことにした。

イガラシ

先生方、随分前に起きた【3D事件】ってご存知ですか?

イシカワ

確か、どこかの高校が担任に占拠されて、多くの生徒が殺された事件だよな。

状況を黙って見守っていた、同期のイシカワが口を開いた。

彼とは波長が合い、プライベートでも飲みに行ったりする仲だ。

そんなイシカワにさえ話していない過去が、イガラシにはあった。

イガラシ

あぁ、クラスメイトの半分が死んで、残った生徒達も心に大きな傷を残した事件だ。

キョウトウ

そ、それがどうかしたのかね?

イガラシ

教頭、実はその事件の生き残りなんです。

イガラシ

俺――。

イガラシ

だから、こういう状況には、ここにいる誰よりも慣れていると思うんですが。

教員室が息を飲んだかのように静まり返った瞬間。それを狙ったかのように放送が響いた。

校内放送

どうやら、まだ信じてもらえていないらしい。

校内放送

学校は【革命軍】によって占拠されている。

校内放送

我々は革命のためならば血が流れても構わないと考えている。

校内放送

我々の本気を知ってもらうためにも、ひとつ面白い趣向をお見せしよう。

イガラシ

一体、何を始めるつもりだ――。

フワ

あ、テレビ――観てください!

テレビ

進展がありました。みなさん、見えるでしょうか?
高校の屋上をご覧ください。カメラさん、寄れる?

テレビの中でキャスターが指示を出し、屋上にカメラが寄る。

そこには、軍服のよう格好でガスマスクを被り、手には銃器らしきものを構えた人影がふたつ映る。その人影が構える銃口の先には――。

イガラシ

……校長先生?

校長の姿があった。

校内放送

今から革命ゲームを始める。

校内放送

第一ゲーム……校長先生危機一髪。

テレビには不安げな表情を浮かべる校長の顔が、ドアップで映し出されていた。

上野原高等学校革命同好会

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