武永
小洒落たホテルでの事件か――。
武永
なぁ、神崎。
武永
これって、緑川の自殺ってことはないか?
神崎
タケさん、どうしてそう思うんですか?
武永
緑川が首を吊っているのを目撃した桃田達が、黒井達を呼んで緑川の部屋の前まで到着するのにかかった時間は、そこまで長いもんじゃない。
武永
そもそも桃田と黄野は一緒にいたし、黒井と青山もすぐに部屋から出てきた。
武永
要するに、その間に緑川の死体を降ろして、どこかに隠すなんざ、時間的に無理がありすぎる。
神崎
でも事実、桃田達が駆けつけた緑川の部屋は無人だったんですよ。
武永
あぁ、確かに無人だったし、映像にも明かりひとつない真っ暗な部屋が映し出されていたな。
神崎
大体、自殺をするにせよ、どうしても一度死体が消えなきゃいけないんですか?
武永
それについては俺にも考えがあるんだよ。
武永
ずばり、緑川はこれが自殺だと都合が悪かったんだ。
神崎
自殺だと都合が悪い?
武永
あぁ、例えば……保険金だな。
武永
生命保険をかけていても、自殺の場合は保険金が支払われないことがある。
武永
緑川は何かしらの理由で金が必要かだった。いや、自分が死んだ後に金を残す必要があった。
武永
だが、自殺じゃ保険金は出ない。
武永
だから、何者かの手が……第三者が介入しないと発生しないような状況を作り上げて自殺をした。
神崎
しかし、実際に桃田達が緑川の首吊りを目撃してますよ。
武永
それは緑川の偽装だった……ってのはどうだ?
武永
緑川は桃田達を目撃者に仕立てあげて、そのまま一度、どこかに姿を消した。
武永
そして、騒動が終わった後、改めて自殺する。
武永
で、翌朝になってから死体が発見される。
武永
一度目撃されたはずの死体が消え、そして翌朝になってから現れた。
武永
この事実がある以上、他殺の線が強くなる。
神崎
つまり、緑川の死体は消えたのではなく、死体のふりをしていた緑川が自ら消えた――と。
武永
あぁ、そうだ。
神崎
でも、それだと緑川が犯人ってことになりませんか?
武永
そう言うことになるな。
神崎
だったら、すでに緑川は死亡しているはず。
神崎
パネラーとして参加していないはずですよ。
武永
い、言われてみればそうだがよ。
神崎
何かしらの方法があるんです。
神崎
きっと、第三者が緑川の死体を消し、そして翌日になってから出現させた。
神崎
そんな魔法みたいな手段があるはずです。
武永
そんな魔法はねぇよ。
神崎
ちょっと引っかかっている点はありますよ。
武永
どこだ?
神崎
桃田達が部屋を訪れた際、部屋は明かりひとつなく、真っ暗だった。
神崎
これ、何を意味しているか分かりますか?
武永
――何を意味してる?
神崎
外の明かりさえ入っていなかったってことです。
神崎
さすがに中庭の向こう側にある、桃田達の部屋の明かりくらい、入っていてもいいはずです。
武永
それってつまり――。
神崎
雨戸がね、閉まっていたってことです。
武永
桃田達は窓越しに緑川の首吊りを目撃した。
武永
つまり、この時点で緑川の部屋の雨戸は開いていたことになる。
武永
だが、駆けつけた時に雨戸は閉まっていた。
武永
誰かが雨戸を閉めたってことか?
神崎
いいえ、誰も閉めてはいないと思いますよ。
武永
お前、まさかもう分かってんのか?
神崎
朧げながらですけどね……。
神崎
まだ確定できませんが。
武永
そうか、それはそうと俺も気になっていることがひとつだけあるんだ。
神崎
なんです?
武永
また再現映像に出てきたな。
武永
演じる人物は別だが【Kザキ】ってやつが。
武永
あいつ、誰なんだろうな?
神崎
まさか……自分ではないとは思いますけど。
武永
まぁいい。あんまり関係のないことかもしれんし、もしかしたら俺達をここに監禁したやつが、わざとやってることなのかもしれない。
神崎
…………。
武永
どうした?
神崎
いえ、なんでもありません。
神崎がそう答える背後。
テレビの中では、RYUREIとパネラー達とやり取りが始まっていた。






