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これは、私が中学生の時に体験した話である。

中学1年生の夏、「宿泊研修」といって、1年生の生徒と教師が外部の施設に1泊2日で研修をしに行くというイベントがあった。

「研修」といっても、そこまで厳しいものではなく、カッター訓練などの野外活動やレクリエーションを通じて、親睦を深めたり、協力することの大切さを学ぼうというものだった。

恐怖の体験をしたのは、1日目の夜のこと。

霊感のない私があれほど怖い思いをしたのは、後にも先にもこの時だけである。

生徒たちが泊まる部屋は、広い畳の部屋だった。

男子と女子でそれぞれ1部屋ずつあり、そこに40〜50人分の布団を敷き詰めて寝ることになった。

消灯時間がやってきた。

部屋にカーテンがないせいか、電気を消しても月明かりで部屋は真っ暗にはならなかった。

こういうときにはあるあるかもしれないが、消灯時間になってもすぐに寝る人はあまりいなかった。

私も、普段家で寝る時間よりも早い消灯時間だったので、なかなか眠れなかった。

友人A

今日のカッター訓練疲れたな

自分

だな

自分

船のオール結構重いし、途中で雨降ってくるし、大変だったよな

眠くなったらすぐ寝られるように、布団の中で天井を見ながら、私は右隣にいた友人Aと話をしていた。

友人B

えっ、あっ、たしかに!

友人C

やっぱそうだよな!

何やら私の左の方から友人Bと友人Cの声が聞こえる。

声のする方を見てみると友人Bと友人Cは窓の外を見ていた。

友人A

おい、どうした?

私の右隣の友人Aが彼らにささやくように問いかけた。

友人B

山だよ山!

友人C

窓の外に見えるだろ

自分

山?

私は体を起こした。

確かに窓からは遠くの方に山が見える。

友人B

消灯前と比べてちょっと動いてんだよ

自分

んなばかな

友人A

あ、たしかに

友人A

言われてみれば動いてるかも

自分

お前まで何言ってんだよ

私も窓の外の山を見たが、全く動いているようには見えない。

そもそも山が動くってなんだよ。こいつらには一体どう見えてんだよ。私は心の中でそうツッコんだ。

友人C

お、おい!

友人C

あれ見ろよ!

友人B

うっわ!

2人を見ると、今度は窓とは反対方向の廊下側を指差していた。

広い部屋と廊下との境には、下半分が普通のガラスで上半分がすりガラスになっている引き戸があった。

友人A

おいおいまじかよ

自分

今度はなに?

友人A

廊下に誰か立ってる

自分

誰もいねーじゃん

友人A

いるんだって

友人B

あぁ、白い服着た人の影が見える

友人C

しかも上半身だけ

なんなんだ。

一体何を言っているのだろうか。

そういえば以前、彼らには霊感があると聞いたことを思い出した。

なぜ身の回りに霊感がある人がこんなにもいるのか、といったツッコミは控えていただきたいのだが、

その3人いわく、引き戸のすりガラス部分に白い服を着た、髪の長い女性の上半身の影が見えるという。

もう一度言うが、私には霊感は一切ないので、彼らが言っていることが本当なのかはわからない。

でも、3人とも同じものが見えているなら、本当に何かいるのかもしれない。

そう思うと、急に怖くなってきた。

何がいるのかもわからず、何の気配も感じないからこそ余計に怖かった。

友人C

ずっとそこにいるよな

友人B

あぁ、すりガラスでよくわかんねーけど多分こっち見てる

友人A

あ、動いた

自分

えっ

自分

どこ行った?

友人B

いや、廊下を行ったり来たり

友人B

うろうろしてる

友人C

あ、止まった

友人C

またこっち見てる

友人A

あ、消えた

自分

え、まじかよ

自分

どこ行ったんだよ

その後、しばらくの沈黙が続いた。

クーラーの運転音が部屋中にこだました。

自分

だいじょうぶ...

自分

だいじょうぶ...

私は小さな声で自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

私には霊感がない。

霊感がないということは、幽霊も見えない。

幽霊が見えなければ何を怖がることがあるのか。

私は再び仰向けになり、目を閉じた。

自分

自分

ん?

私は、自分の顔に何かがふわりと落ちてきたのを感じた。

大きくはない。

何か細いもの...?

自分

なんだ...ろう...?

自分

自分

えっ

それは、30cmはある1本の長い髪の毛だった。

おかしい。

この部屋には男子しかいないのだ。

もちろんそんな長い髪の男子は1人もいない。

自分の顔に落ちてきたそれを見た瞬間、あまりの恐怖に声が出なかった。

自分

うっ...うっ...

体を動かそうとしても動かない。

横目で隣の友人Aを見たが、彼はいつのまにか横になって寝ていた。

まさか、友人Bも友人Cも...

いきなり気を失ったとでも言うのだろうか。

もしかして私が見えてないだけで、白い服を着た女性はもう私の真上にいるのかもしれない。

自分

(頼むから早く朝になってくれ......!)

目が覚めると朝になっていた。

他の男子も徐々に起き始めていた。

自分

なあ、昨日の夜のことだけどさ

友人A

え、夜?

友人A

なんかあったっけ?

自分

えっ

友人A

俺けっこう早く寝たわ

友人A

カッター訓練で疲れてたのかなー

自分

えっ、いや、廊下に上半身だけの女性がいたとか言ってたじゃん!

友人A

上半身だけの?

友人A

お前頭大丈夫か?

なぜか友人Aは昨日のことは覚えていないらしい。

友人B、友人Cに聞いても同じような反応だった。

自分

じゃあ昨日のは一体...

自分のシーツと枕は、まるで水でもこぼしたかのように濡れていた。

私は、昨日の出来事を誰にも話せず、右手に握りしめていた長い髪の毛をゴミ箱に捨てた。

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